山旅の4つの愉しみ
宝登山山頂から眺めた武甲山と秩父盆地(2024年1月)
森林限界を超えた3000m級の岩稜登山や1000m未満の低山ハイキングを含めた山旅には4つの愉しみがある。
第1は登山計画を作っている時の愉しみである。登ろうとする山を決め、その山についての情報をガイドブックやネットから収集し、登山コースを検討するなかから登山口と下山口を決め、登山口と下山口までのアクセス手段を検討し、列車・バス・タクシーなどの時刻表や金額を調べて登山計画表を作る。山中で宿泊する場合は、山小屋・避難小屋・テントなど手段に合わせて装備や食料を検討するなかから登山やハイキングのイメージが頭のなかで映像として膨らみだす。これが最初の愉しみである。
奥多摩にも山笑う季節が訪れた(2024年4月)
第2の愉しみは実際の登山やハイキングで自然のなかに入っていき、自分の身体で感じる渓流のせせらぎ音や通り過ぎる風、耳に届く野鳥の声、木々や草花の芽吹き・紅葉の移り変わり、山頂に着いたときの絶景を眺めながら食べるおにぎりや味わうコーヒーは特別の味である。山中で泊った時に体験する一日の穏やかな終わりを告げる夕陽の沈みゆく茜色、徐々に夜の世界の黒へと変わりゆくグラデーションの世界、神々しく荘厳な日の出を迎える生命の息吹という自然そのものと交流することができることの喜びである。
奥秩父主脈テント縦走(2024年7月)
第3の愉しみは下山後の温泉と食事である。登山計画を作るときに下山後に入浴できる温泉と地酒や地元の食材を使った料理店を調べておくのである。温泉で汗を流したあとの喉を落ちていくビールの味は特別であり、その後に続く地酒と地産地消の料理は素朴であっても舌と同時に心に残る味となるのである。
岩手山でご来光を待つ登山者(2024年9月)
第4の愉しみは登山やハイキングを終えて帰宅したあとに、計画書や撮った写真を見ながら登山の過程を振り返って感じたことを紀行文に書くことである。紀行文を書くことにより、計画、実践、結果を確認し、失敗を含めて今回の経験が次の計画時にいかされ、その蓄積が登山やハイキングの経歴となっていくのである。
梅ヶ瀬渓谷モミジ谷の紅葉(2024年12月)
私は『山と渓谷』誌の「読者紀行」というコーナーに、紀行文を投稿し始めてから4年連続で掲載されている。同一作者による掲載は1年に1回という決まりがあるために投稿数は少ないが、自分で感じた登山についての想いや愉しみが雑誌に掲載され、全国の山好きの読者の目に触れることは望外の喜びである。
2025年2月号に掲載された「ロウバイの花」
今回の2025年2月号に掲載された「ロウバイの花」は、昨年1月に妻と一緒に秩父にある長瀞アルプスと宝登山ハイキングに出かけた時のものを原稿用紙8枚の紀行文にして投稿したもので、幸いにも編集会議で掲載となったようである。なお、現在発売されている山岳月刊誌の『山と渓谷』と『岳人』両誌の2月号に、ハイキングコースガイドとして「長瀞アルプスとロウバイの花咲く宝登山」が紹介されている。