岩場の連続だった八峰キレット縦走登山

 

山の景色

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秋の五竜岳と鹿島槍ヶ岳

 

9月18日 小雨

扇沢に着いたのは4時25分だった。雨は降っていなかったが、路面が濡れていた。今回の後立山連峰縦走登山は長野県扇沢登山口から登り始め、稜線に出たあとは爺が岳・鹿島槍ヶ岳・八峰キレット・五竜岳を縦走し、遠見尾根から五竜エスカルプラザに下山するという山小屋3泊の日程だった。今回のメンバーは3人。リーダーは長老エイトマンの私で、酒と名がつけば何でも飲み、休肝日無しの酒好き。サブリーダーのポパイ吉原は、最近8人目の孫が生まれ、おじいちゃんはボケ防止のために竹細工に熱中し、今回は3人分のオニヤンマを作ってきて各自のザックに着けてくれた。3人目ので太っちょ碓井は、最近仕事が忙しいようで、かつてのスポーツマンの面影も無くなってしまった、というメンバーだった。

 

道路, 建物, 屋外, グリーン が含まれている画像

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立山アルペンルートの扇沢駅

 

毎年1回行われているMCC(ミーハー・クライミング・クラブ)の夏山縦走登山は、例年通りに8月中に計画されたのだが、オリンピック・パラリンピック東京大会と日程が重なり、仕事の関係で参加できないメンバーが出てきたため、日程を1ヶ月後にずらしたのであった。その時点での参加者は7名だった。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大による緊急事態宣言が9月30日まで延長された状況で、最終的な参加者は3名となったのであった。

 

森の中を歩いている人たち

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扇沢登山口

 

 9月9日にフィリピン東海上で発生した台風14号は強烈に発達し、東シナ海まで進んだところで停滞してしまった。その後、偏西風の影響を受けて動き始め、私たちが夜行登山バスで登山口の扇沢に向かう17日に九州地方に上陸した。上陸後は四国を横断し、18日に紀伊半島に再上陸し、19日の早朝に海上に抜けるとの進路予報が報じられていた。

 

花が咲いている木

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色づくナナカマド

 

長野県の日の出時刻は5時33分だった。扇沢駅でラーメンを作り、おにぎりを食べ、登山準備をしながら夜明けを待った。天気に関する心配は、登り始める18日にあった。登山口から柏原新道を2500mの稜線までは、何回も歩いている登山道だった。この登山道は沢伝いではなく、尾根伝いのため、増水の危険はないものの、台風の影響による雨や風が心配だった。雨や風が強烈の場合は宿泊予定の冷池山荘まで行かずに、ひとつ手前の種池山荘までにすることにしていた。6時に出発し、登山口に待機していた山岳パトロール隊の方に登山届を提出し、日程およびルートの確認を行った。石畳が整備された歩きやすい登山道を登り出し、30分ごとに休憩を取りながら淡々と登っていった。

 

テーブルの上にある数種類の植物

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ゴゼンタチバナの赤い実が輝いていた

 

小雨が降ったり止んだりしていた。登山道の脇に赤い実をつけたゴゼンタチバナが、雨にぬれた緑の葉っぱを輝かせていた。実に瑞々しいので写真を撮った。「午後に見てもゴゼンタチバナ」という親父ギャグを言ったのは太っちょ碓井である。モヤが晴れて針ノ木岳からの稜線が見渡せ、とんがり屋根の種池山荘が見えた。

 

岩の上にある数種類の植物

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登山道の水切り

 

標高をあげるのにつれてアカマツやツガなどの針葉樹の林からナナカマドやダケカンバの広葉樹の林へと移っていった。広葉樹の林は黄色く色づき始めている。あと10日もすれば素晴らしい黄葉や紅葉が見られるだろう。登山道は山小屋の方たちの手によって維持・整備されている。登山道では時々水切りに出会う。水切りとは大雨の時に登山道の土が流されるのを防ぐために、樋を登山道に埋め込んで土が流れないようにするものである。私はストックで水切りに溜まった石を落としながら登っていった。

 

草の上にいろいろな家

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種池山荘の周りにクマが出没している

 

雪の重さで曲がった幹が見える。ナナカマドが橙色に色づき始めた。ブルーベリーも赤く色づき始め、藍色の実を口に含むと甘酸っぱい味がした。今回のコースで初めて「クマ出没注意」の看板を鉄砲坂で見た。種池山荘に着き、食堂の女性スタッフに話を聞くと、今年は種池山荘の周りと鹿島槍ヶ岳の南峰の手前で熊が出没しているとのことだった。

 

草の上にいる鳥

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たくさんのライチョウに出会った

 

小雨模様で爺岳山頂もモヤに包まれて展望は望めないので、今回はパスして冷池山荘に進んだ。小雨模様の天気だと、天敵が現れないのでライチョウに出会える確率が高い。その期待を持ちながら進んでいくと、ライチョウに4度も出会ったのである。1度目は7、8羽だった。オスもメスもいた。母鳥が子どもたちに小さなクゥークゥーと注意を呼びかけていた。2度目は3羽の群れだった。3度目は4羽で、4度目は2羽だった。いずれのライチョウも保護色である褐色の秋羽から白い冬羽に変わっていく時期なので、脚や下腹や翼にも白い羽が見えた。親鳥のライチョウは赤・青・緑などの足環をしていたが、今年生まれた子どもに足環は着いていなかった。

 

ポーズをとる男性グループ

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テラスでの宴会は続いた

 

 冷池山荘で宿泊手続きを終えたあと、2階のテラスで夕ご飯を挟んで、ビール・ワイン・ウイスキーによる宴会が開かれた。途中から44歳の元気印の看護師と28歳のテキーラ娘の2人の女性が加わり、宴会は大いに盛り上がった。山荘のスタッフからそろそろ消灯の時間ですからと言われるまで宴会は続いたのである。おかげさまで翌日は二日酔い気味であった。

 

マップ

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9月18日の登山データ

 

9月19日 快晴

昨日の小雨の中を歩いて来たのが嘘のように晴れあがった日の出だった。台風一過の晴天で、まさに登山日和だった。冷池山荘前の高台から日の出を眺めた。雲海から昇る日の出は何回見ても感動する。これから登る鹿島槍ヶ岳の双耳峰が朝日に照らされて赤く輝いていた。

 

夕日に映る人

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素晴らしい日の出に感動するテキーラ娘

 

快晴のもと、7時に冷池山荘を出発した。5分ほど登るとテント場に着いた。立山から剱岳までが一望のもとに見渡せ、谷を越してすぐそこに屏風のように立っていた。素晴らしい。前日に小中学校の同級生夫婦が立山から剱岳へ4泊5日で縦走していると連絡が入っていたので、お互いに素晴らしい登山が出来るだろう、とその時は思っていた。

 

山の景色

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立山と剱岳が屏風のように聳えていた

 

テント場の正面に剱岳の雪渓が2ヶ所見えた。2ヶ所は三ノ窓氷河(左)と小窓氷河(右)に認定されているものである。左へ目を移せば、とんがり頭の槍ヶ岳のてっぺんが見えた。奥穂高岳、前穂高岳も登場した。今日はここら一帯の山やまが全て見渡せる絶好の登山日和となっていた。昨日お昼に休憩した種池山荘も手の届くような近くに見えた。雲ひとつない快晴だった。

 

岩山の前に立っている男性

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布引山2683mの向こうに双耳峰の鹿島槍ヶ岳が見えた

 

8時15分に布引山2683mに着いた。風が強いのは台風14号の余波だろう。山頂から降る途中で、登山靴が岩角に引っかかり、もんどり一回転して50cmほど背中から落下した。私にとって登山中の転落は初めてのことだったのでビックリした。足腰を少し打っただけで、大事にならずほっとしたのだった。

 

山の上にいる人たち

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鹿島槍ヶ岳の南峰2889mに着いた

 

登ってきた登山道を振り返ると、正面には剱岳の雪渓が見え、槍ヶ岳がひときわ目立った。槍ヶ岳から涸沢岳・奥穂高岳・前穂高岳の特徴ある山なみも一望のもとだった。ずっと左に目を転じると御嶽山が見え、富士山が雲の間から頭を出していた。その横に八ヶ岳が見え、これから登っていく鹿島槍ヶ岳の南峰頂上に登山者が見えた。

 

山の景色

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白馬三山がド〜ンと現れた

 

鹿島槍ヶ岳の南峰に着いたのは9時10分だった。山頂に着くと、今まで隠れていた反対側の白馬三山がド〜ンと現れた。宿泊する予定のキレット小屋の赤い屋根が谷底に小さく見えた。素晴らしい景色なのだが、風が強烈に吹きまくり、体温を奪っていった。風がなかったならば、いつまでも眺めていたい360度の絶景だった。

 

岩の上に座っている男性

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八峰キレットを越えてきた

 

鹿島槍ヶ岳は双耳峰であり、南峰と北峰がある。南峰から北峰の吊り尾根への縦走に入ると、いよいよ岩場の下降が始まり、転落や滑落が身近に感じられる。北峰に着くころに風が弱まってきた。北峰山頂で360度の眺めを味わっていると、トレイルランナーの男女が登ってきた。着替えを入れた小さなリュックを背負っただけの軽装であった。ふたりと会話を交わしたが、ふたりとも30代前半に思えた。北峰から降り、八峰キレット方向に岩尾根を降りだした。やがて鎖や梯子が現れだし、本格的な岩稜登山へと移っていった。

帰宅後、長野県内の山岳遭難発生状況(週報)を確認すると、9月23日に鹿島槍ヶ岳の南峰〜北峰の吊り尾根を縦走中の女性登山者が滑落し死亡している。いつ事故が起きても不思議でない縦走路なのだ。

 

山の上でポーズをとる男性たち

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剱岳を眺めながら乾杯

 

鎖場や梯子を慎重に乗り越えてキレット小屋に着き、宿泊手続きを済ませたあとは、快晴のもとで外テーブルでの宴会の始まりだった。眼前の剱岳を見ながら、雲ひとつない贅沢で最高の景色をツマミに、ビール・ワイン・ウイスキーを飲みながら、宴会は夕ご飯を挟んで5時間続いたのである。途中で昨日一緒に飲んだ28歳のテキーラ娘が合流し、実に楽しい宴会となったのだった。

 

夕日が沈む様子

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美しい雲海が拡がっていた

 

夕焼けも素晴らしかった。剱岳が黒いシルエットとして浮かび上がり、その向こう側に太陽が隠れていき、最後の光の矢が静かに消えた。そこから徐々に橙色がグラデーションの色合いを増し、夕焼けのショーが始まっていった。私はタイムラプス撮影で茜色に移り変わっていく天体ショーを、ウイスキーを口に含みながら仲間と楽しんだ。新たな思い出のときが過ぎていったのである。

 

マップ

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9月19日の登山データ

 

9月20日 曇り

6時10分にモヤのなかのキレット小屋を出発した。最初から鎖と梯子の連続である。昨日よりも厳しい縦走が待ち受けていたのである。30分ほど進むと太陽が顔を出した。剱岳や立山も雲のまにまに見えた。尾羽の先が白いホシガラスが、ハイマツの実を咥えながら飛んでいた。

 

岩の崖

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落ちれば死ぬ場所を次々に通過していった

 

肝を冷やす垂直の長い鎖が2ヶ所あった。特に2ヶ所目の3段の鎖が長かった。いやはやなんともの岩場の連続だった。この岩場をポニーテールにショートパンツのトレランスタイルで颯爽と越えていく若い女性にはビックリする。今回はたびたび女性の単独登山者に出会った。確実に女性登山者が増えていると実感する。しかも厳しい岩場も気にする様子もみせないのには言葉を失う。たいしたものだ。

 

山の景色

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2度もブロッケンに出会った

 

ブロッケンに2度出会った。カメラを出すまでに短い時間で消えてしまった。雲が谷から吹き上げてきており、それをスクリーンとして自分の影が光の輪のなかに現れる。幻想的なブロッケン現象は、天気が不安定なときに出現するものである。

 

岩山と青空

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厳しい岩尾根を縦走した

 

ハイマツの尾根歩きは実に気持ちがいいが、岩場登りは緊張する。岩場を通過し、穏やかな稜線歩きとなり、心しずかにひと休みすると、風が吹き抜けるいがいに音がない。イワヒバリが2羽遊んでいるのを見ると、岩場の鎖を頼りの緊張感から解放されホッとするひとときである。モヤが飛び去り、先ほどすれ違った登山者の姿が目に止まると、凄い急峻な岩尾根を乗り越えてきたことが改めて分かった。今回は鎖場が度々出てくるのには閉口するが、鹿島槍ヶ岳から五竜岳までは岩場の連続する上級者コースなのだ。

 

岩の上に立っている人たち

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五竜岳山頂2814mに着いた

 

11時に五竜岳分岐に着いた。ここにザックを置いて五竜岳に向かう。あいにくモヤが湧いており、五竜岳山頂も白い闇に覆われている。分岐から5分ほどで五竜岳2814m山頂に着いた。山頂には人影もなく、見晴らしもなかった。20分間で日が出るのを待ったが、青空が一瞬見えただけだった。

 

トレイの上にある食事

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チャーハンのお昼ごはんは美味かった

 

12時40分に五竜山荘に着いた。受け付けを済ませ、部屋で衣服を着替えると、いつものように外のベンチで乾杯である。500mlの缶ビールがなかったので、350mlを2本。お昼ご飯にチャーハンを頼んだら、これが正解だった。それにラーメンを作り、それを肴にビールからウイスキーへと進んだ。今回の2日間に渡る厳しくヒヤヒヤした山旅を振り返った。

 

岩の崖

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厳しい縦走路を歩いた

 

今回の山行は、今までの登山と比べてみても、落ちたら確実に死ぬ場所を度々通過して来たので、肝を冷やしながらも、いちばん厳しかったというのが、それぞれの感想だった。岩の殿堂と呼ばれている剱岳よりも厳しかった山旅を終え、感無量という気持ちが顔に出ていたのである。

 

岩山でジャンプしている人

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厳しい岩場を越えていった

 

宴会中に山岳パトロール隊員に救助された人が担ぎ込まれた。結局その男性は翌日になっても歩くことができず、ヘリコプターで麓まで搬送されたのである。夕ご飯はカレー、コロッケ、卵焼き、野菜サラダ、デザートはモモとクリの甘煮は抜群だった。キノコのみそ汁も実に美味かった。今回のお世話になった3軒の山小屋のなかで一番の美味さだった。

 

マップ

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9月20日の登山データ

 

9月21日 快晴

6時に五竜山荘を出発する。玄関先の山荘の看板前で山岳パトロール隊員にスマホのシャッターを押してもらった。昨日、負傷者を山荘に担ぎ込んだ隊員から、最初の尾根に鎖場があるので注意してください、とアドバイスを受けた。5分ほどで白岳2541mに登った。周りの草木は紅葉で彩られていた。台形をした五竜岳も青空のもとで聳え立ち、鹿島槍ヶ岳の双耳峰も姿を現し始めていた。白岳から降って行くと、すぐにパトロール隊員が注意するようにと言っていた岩場が現れた。

 

山の斜面に立っている男性

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五竜山荘前から望む秋の五竜岳

 

7時40分に青空に映えた白い長野県警ヘリコプターが飛んできて、五竜山荘の上でホバリングしながら、昨日の負傷男性登山者を収容し、麓へと飛び去ったのが見えた。私たちは西遠見山、大遠見山、中遠見山、小遠見山と続くアップダウンが連続する長い尾根を降っていった。

*帰宅後、長野県内の山岳遭難発生状況(週報)を確認すると、負傷した登山者は五竜岳を目指していた単独登山者で、途中の大黒岳を通過中に転倒して行動不能となり、長野県警の山岳警備隊に救助されたのである。

 

山の景色

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遠見尾根から眺める鹿島槍ヶ岳から五竜岳までの稜線

 

大遠見山から振り返ると、鹿島槍ヶ岳の双耳峰の山頂が重なりだした。8時50分に中遠見山に着いた。鹿島槍ヶ岳から五竜岳までの稜線が見えた。あの厳しい稜線を歩いたのだった。鹿島槍ヶ岳に雪渓が残っているのが見えた。その雪渓は「カクネ里」と呼ばれている日本で4番目に認定された氷河である。私たちが休んでいると、女性単独登山者が降りてきたので、稜線を背景にしてスマホのシャッターを押してやった。

 

ジャンプをしている人たち

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小遠見山2007mの山頂に着いた

 

9時15分に小遠見山2007mの山頂に着いた。振り返ってみると遠望できる山頂には雲がかかりだしていた。ナナカマドが赤い実をつけ、葉は朱色に色づいている。小遠見山は麓からゴンドラに乗って来られるトレッキングコースが整備されており、天気もいいのでハイカーとすれ違うことが多くなってきた。

 

岩の上にいる人たち

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地蔵の頭で鐘を鳴らした

 

地蔵の頭に着くと、南側の展望は右から南アルプス連峰の間ノ岳・北岳・千丈岳・甲斐駒ヶ岳の山やまが薄く確認でき、それから八ヶ岳連峰が続き、真ん中に朝熊山・四阿山・白根山・横手山と続き、苗場山から高妻山・妙高山・火打山・雨飾山などが一望のもとに見渡せるのであった。反対の北側の展望は、あいにく山頂部に雲がかかり、山やまの姿は確認できなかった。10時55分に白馬五竜スキー場のアルプス平テレキャビンのゴンドラ駅に到着し、今回の後立山連峰の縦走登山は終わったのだった。

 

マップ

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9月21日の登山データ

 

これからが登山の次の楽しみとしての温泉であった。麓のゴンドラ駅内のエスカルプラザの「竜神の湯」が8月31日で営業を終えていたため、近くの歩いていける「十郎の湯」を確認すると、残念ながら休業日だった。そこでタクシーで八方温泉の「みみずくの湯」に向かったのである。

 

建物の前に立っている人たち

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みみずくの湯に入り、登山の汗を流した

 

みみずくの湯には誰も入っておらず、私たち3人だけだった。すべすべする気持ちのいい湯だった。4泊5日分の冷や汗と喜びの汗を流し、さっぱりしたところで缶ビールで乾杯であった。私たちが湯から出たあとに、登山者が次々に入ってきたので、いつまでも休憩所で飲んでいるのは悪いと思い、外の木陰に宴会場を移し、生ビールのジョッキで改めて乾杯だった。生ビールのあとは当然のようにウイスキーに移ったのである。全くよく飲むメンバーである。山に登り、下山後は温泉に入り、湯上りには乾杯の酒であった。今回もトリプルプレーができて満足満足の山旅であった。

 

山の景色

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秋まで残る鹿島槍ヶ岳の雪渓は日本で4番目の氷河と認定された

 

木陰で飲んでいる最中に立山と剱岳に登っているはずの友達から連絡がきた。登山途中で何度か携帯の着信履歴があったが、山のなかでは電波状態が悪く、連絡を取らなかったのだが、友達は一の越から立山に登り、剱岳に向かう縦走中に内蔵助側に150mほど滑落し、自分では身動きが取れず、富山県警の山岳救助隊に連絡し、救助されたとのことだった。一緒にいた奥さんの話では、死なないほうが不思議で、ヘルメットとザックが身を護り、運よく小指の骨折だけの奇跡的な事故だったとのことだった。その話を聞いて、夫婦ともども小学校以来の友達なだけに、大きな怪我もせずに本当に良かったと思った。

 

山の景色

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遠見尾根から唐松岳を眺める

 

 後立山連峰と呼ばれている山やまは富山県側から見て、立山の後ろ側に聳えている山の連なりという意味である。その山やまは南側から針ノ木岳、赤沢岳、鳴沢岳、岩小屋沢岳、爺ヶ岳、鹿島槍ヶ岳、五竜岳、唐松岳、白馬鑓ヶ岳、杓子岳、白馬岳と連なり、富山県と長野県の県境に位置する山やまである。今回歩いた鹿島槍ヶ岳から五竜岳の区間をもって、南側の針ノ木岳から北側の白馬岳までの後立山連峰の全てを歩いたことになったのである。

 

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