雷鳥とオコジョ
ひょっこり出てきた雷鳥の雌
2018年はミーハー・クライミング・クラブが発足して30年になる記念の年だった。毎年恒例の夏山縦走登山の今年の参加者は、お盆の期間ということもあって例年より少ない4名だった。今年の夏山縦走コースは北アルプス裏銀座コースの縦走だった。裏銀座コースといっても一般的な高瀬ダムから入山し槍ヶ岳までのコースとは異なり、富山県の折立から入山し黒部五郎岳を登った後に三俣蓮華岳で裏銀座コースに合流し、鷲羽岳・水晶岳・野口五郎岳と縦走し、最後に烏帽子岳に登って高瀬ダムに下山するという夜行バスと山小屋4泊の変則的なオリジナルコースだった。
今回の登山は、台風13号が関東地方を直撃するという予報の中で、台風の進路を慎重に見極めながらの登山となったが、結果的に見ると快晴の日が連続し、レインウェアを必要とするような雨は降らなかった。今回の登山日程を8月7日〜12日という正に夏山真っ盛りの時季に設定したのは、私の「日本縦断てくてく一人旅」の第2ステージの開始が8月20日から再スタートという関係から例年の8月下旬に設定できないという制約があってのものであった。そのため山小屋の混雑度が心配されたが、台風の関係で入山を控えた登山者が多かったようで山小屋は空いており、ひとり1枚の布団でゆったりと泊まれる日が続いたのは幸いだった。まさに台風様様であった。
表銀座コースや穂高に比べて裏銀座コースを歩く登山者の数は疎らで静かな山旅を体験できた。真っ青な夏空のもとで、残った雪渓の白とハイマツの緑が描く光景は美しいの一言である。南アルプスの緑多い山容と異なり、北アルプスの光景は本当に美しいと感じる。
愛嬌もののオコジョ
今回の山旅で氷河期からの生きた化石と呼ばれている雷鳥に3度出会った。1度目、2度目は単独の雌だったが、3度目は2羽の子どもを連れた雌だった。私たちに気づいた親鳥はクゥー・クゥーという警戒音を出しながら子どもの雷鳥に注意を呼びかけていたが、子どもたちは餌を啄むのに一生懸命だった。いずれの出会いにも雄の姿は見えなかった。雷鳥は飛ぶことが得意でないのと体形が丸くずんぐりしているので敏捷性に欠け、鷲・鷹などの猛禽類や猿・オコジョなどからの襲撃を受けやすい。そのオコジョにも出会った。実にすばしっこい動物であるが、好奇心が旺盛なので岩陰や倒木の陰から顔や身体を出しながら我々を確認している姿は実に微笑ましい。
2泊目の山小屋「黒部五郎小舎」の夕ご飯
山小屋の夕食も随分美味しい食事が出るようになった。1泊目はトンカツ、2泊目は天婦羅、3日目はカレー、4泊目はビーフシチューであった。ご飯と味噌汁はお代わり自由であり、ご飯の炊き方も上手だった。宿泊代金は1泊2日で約9500円が平均だった。
雲海の彼方に沈む日の入り
登山者の少ない山域を歩き山小屋に着く。ホッと一息休んだ後はザックからおもむろにウィスキー瓶を取り出す。渓流から汲んできた水で作った水割りを口に含む至福の時。1日歩いてきた縦走路を眺め、明日歩くであろう縦走路に目を移しながら静かに胃に染みわたるアルコールをじっくり味わう。