紅葉の梅ヶ瀬渓谷ハイキング
梅ヶ瀬渓谷を遡る
12月7日 土曜日 晴れ
「房総の紅葉を見に連れてって」と妻に頼まれて、伊予ヶ岳に続く第2弾は、養老渓谷の上流にある梅ヶ瀬渓谷のハイキングだった。空は雲ひとつなく晴れ上がっていた。小湊鉄道線の養老渓谷駅に着くと、駅前にはクリスマスを意識してか様々なイルミネーションが吊りさげられていた。駅舎に掲げられている駅名表示板は『養老溪谷驛』という旧態文字であり、1928年(昭和3年)に小湊鉄道線が月崎駅から上総中野駅まで延伸された時に掲げられたもので、100年近く前のものである。赤いカエデの落ち葉が一面に敷き詰められた線路脇に伸びる小道を梅ヶ瀬渓谷に向かって進んで行った。
宝衛橋からの眺め
朱色に塗られた鉄橋の宝衛橋から下を覗き込むと、はるか下に静かな流れの養老川が見えた。その水面に周りの色づいた木々のなかに、枝打ちされてスックと伸びた杉の木が映り込んで綺麗だった。正面には緑色に塗られた自動車道の鉄橋が見えた。
艶やかに色づいたカエデ
宝衛橋からしばらく進んで分岐を右に取り梅ヶ瀬渓谷方面に向かった。道の脇に植えられたカエデの葉が朱色や真っ赤に色づいて見事だった。黒川沼から流れ出した小川の水温が気温よりも高いために、湯気のような気嵐が沸き上がっているのが見えた。今朝は5℃まで冷え込んだと朝のニュースが伝えていた。
房総の仙客、梅ヶ瀬詩人:日高誠實の説明文があった
朝生原トンネルを抜けて女ヶ倉分岐を左にとって、いよいよ梅ヶ瀬川沿いの道に入っていった。しばらく進むと最後の駐車場があった。土曜日のためか10台の乗用車が停まっていた。4月〜10月まで開設されている1日500円の駐車場だった。駐車場の入口に私たちが向かう旧日高邸の住人で、梅ヶ瀬の名付け親となった日高誠實(ひだかのぶざね)の説明文があった。その文を読んでいると、軽トラのおじさんが駐車場から出てきて話しかけてきた。
渓流沿いに今も残る梅林
梅ヶ瀬渓谷を遡ると一番奥に明治時代の初めに九州からやってきた儒学者の日高誠實が住んでいた場所があるので寄っていくといい。日高誠實はこの辺り一帯の人たちに対して学問を教え、梅・柘榴・柑橙の木を植えるよう指導した結果、土地に合った梅栽培が盛んになり梅ヶ瀬と呼ぶようになった。2階建ての屋敷には1964年の東京オリンピックの時まで4代目が住んでおり、おじさんと4代目は同じ小学校で勉強していたとのことだった。おじさんは市原市が作成した梅ヶ瀬・大福山のパンフレットを渡してくれた。また、大福山の山頂にある白鳥神社に登っていくと、東京湾の海ほたるが見えるので、白鳥神社にお参りした方がいいと教えてくれた。
梅ヶ瀬渓流を遡る
おじさんの説明を聞いたあと、梅ヶ瀬川に沿って遡っていった。最近は雨が降っていないため、水の流れは少なかった。それでも十数回の渡渉があった。垂直な崖の高さは数十
mはあるだろう。青空のもとで白い岩盤が露出し、そこに黄色・朱色・赤色のカエデが点在しており、グラデーションが素晴らしかった。紅葉には1週間ほど遅れた気がしたが、木々が色づくにも時期に幅があるので十分に楽しむことができた。川床は大きな石もなく平らで滑らかだったので歩きやすかった。事前にパンフレットを読んでいたのか、長靴姿の紅葉狩りの人が多く見受けられた。
旧日高邸跡でコーヒーブレイク
梅ヶ瀬川の最奥の旧日高邸跡に着いた。カエデの大木が枝を広げていたが、葉はほとんど落ちていた。落ち葉が絨毯のように敷き詰められていた。ベンチが置かれていたので、ジェットボイルで湯を沸かし大福餅を味わいながらコーヒーブレイクとなった。時期的には先週あたりが紅葉狩りの頂点のようだったが、今日は土曜日なので続々と人々とすれ違うのだった。
もみじ谷の紅葉
ひと休憩したあと、もみじ谷の尾根ルートを日高誠實顕彰碑が立っている林道まで急な山道をゆっくりと登っていった。尾根を登っていくなかで、もみじ谷と呼ばれている場所は、御見事!と声がかかるほど艶やかな紅葉で目を見張るようだった。妻は「年賀状の写真に使えるかも」とモデル気分で写真に収まったのである。もみじ谷を登りきると、あとは比較的に傾斜の緩い尾根歩きとなった。
白鳥神社の御神木は見事なスギの巨木だった
日高誠實顕彰碑が立っている林道まで登り着くと房総の山なみが見渡せた。先週登った御十八夜山の山頂に立つ2本のアンテナも確認できた。林道を左に折れて白鳥神社に向かった。長い石の階段を登り詰めて白鳥神社の境内に上がると、杉の御神木は見事な巨木だった。御神木の左に東京湾が眺められたが、霞んでいるようで海ほたるを確認することはできなかった。境内は周りが木々で覆われているために展望はなかった。神社の裏手が小高くなっており、そこに登っていくと大福山の山頂で、杉の根元に小さな板に書かれた「大福山292m」の山名表示板が置かれていた。
紅葉真っ盛りの見晴らしの道を歩いた
白鳥神社にお参りを済ませたので、林道を下って入浴と食事をするために養老渓谷温泉に向かうことにした。林道の周りは両側にカエデが植えられており、「見晴らしの道」と名付けられていた。赤・黄・朱・緑の色が混じり合う美しい道を歩いた。実にいいタイミングで梅ヶ瀬渓谷に来られて満足だった。宝衛橋の手前まで戻り養老渓谷温泉に向かったが、途中の白鳥橋が通行止めになっていたために、養老渓谷温泉には行くことができなかった。残念だったが仕方ないので養老渓谷駅に戻ることにした。
養老渓谷駅に戻ると里山トロッコ列車が停まっていた
養老渓谷駅に戻ると里山トロッコ列車のSL機関車が、3両の客車とともにホームに停まっていた。客車は全て指定席で完売されていたので乗ることができなかった。次の列車まで1時間ほどあったので、駅前に1軒だけある食堂の『元祖山菜そば旭屋』に入った。店内は注文したものが出来上がるのを待つ人たちでほぼ満席だった。
テラスで駅前の景色を眺めながらビールで乾杯だった
女将さんに注文状況を尋ねると、「混んでいるので、注文しても出来上がるまで1時間くらいかかる」という。次の列車時刻に間に合わないと困るので、缶ビールだけを買ってテラス席に座り、駅前の風景を見ながらザックのなかからつまみを出し、無事にハイキングが終わったことで妻と乾杯した。
今回の梅ヶ瀬渓谷ハイキングデータ
今回のハイキングデータは13.0kmを休憩をはさみ、写真を撮りながらゆっくりしたペースで歩いたので、疲れはほとんど残っていなかった。5時間40分で歩いたことになったが、妻は「今回くらいのペースで歩いてもらうと助かる」と言った。次は奥多摩の温泉と下山メシのハイキングプランを考えているところだ。