山頂で味わうウィスキーは格別だ

 

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奥秩父の山々が展望できる岩茸石山頂上

 

足元には水仙や沈丁花、頭上には椿や梅が咲くなかを進んでいくと周りからは鶯や鵯の鳴き声が届いてくる。平溝橋の手前を左に折れ、平溝川に沿って遡っていくと一人の釣り人に出会った。何を釣っているのか声をかけた。彼が話したところによれば、山女魚が釣れるはずだが、3月中旬に解禁されたがみんな釣られてしまったようで全く釣れない、という。さらに、体長12cm以下の魚は再放流することになっているが、みんな持って帰ってしまうので放流されたものは全て釣られてしまったようだ、と嘆く。私が、釣り人が多すぎるのも一つの原因かもしれない、と話す言葉に彼は頷いた。しばらく竿先と流れていく餌を眺めていたが魚信が全くないので釣り人に別れを告げて歩を進めた。

 

山道が杉木立の中に入ると日光は遮られ湿っぽい独特の匂いが身体を包む。平日のため登山者の姿は少ない。軍畑駅から4人の登山者と出会ったが、後ろから来る登山者との距離は自分では調整できないが、前を行く登山者との距離は調整できるので、距離間隔として200mほど離れていると足音も聞こえず静かな山旅が可能となる。聞こえてくるのは渓流の流れと野鳥の声だけである。杉が切り払われている斜面に出ると足元には薄紫のタチツボスミレが笑顔で微笑みかけてくる。

 

高水山山頂でセルフタイマー写真を撮り、岩茸石山へと進むころに今回歩いているコースは以前歩いたコースではないか?という疑問が頭をよぎってくる。私は過去の山行記録を確認することなく今回の山行計画を立てたのだが、コースを歩いていると次々にコースの光景が浮かんでくるのである。北側か切り開かれた岩茸石山山頂も頭の中に浮かんが光景と同じものであった。ここに至って、いつ歩いたかは家に帰って山行記録を確認することにして、奥秩父の山々が遠望できる山頂でザックに入れてきたジョニーウォーカーと羊羹、ソーセージを出し、一杯やることにした。山頂は単独登山者が私を含めて3人。それに2人グループを合わせて5人という静かさであった。

 

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山頂で味わうウィスキーは格別の味だ

 

物岳山山頂に建てられている青渭神社は金網に囲まれているが建物の4面は見事な彫刻で飾られている。この神社を過ぎれば杉木立の中を御嶽駅まで下っていくことになる。山の木々はまだ芽吹いておらず丸裸のままである。

 

青梅線の踏切を渡った正面に藁葺き屋根に青色の暖簾がかかっている家屋が見えた。藁葺き屋根には草が生え、なかなかの趣が感じられる外見である。何の店だろうと近づいて暖簾を確認すると、下山後に立ち寄ろうと思っていた老舗蕎麦屋の玉川屋であった。靴箱に登山靴を入れ、案内札に沿って反対側に回り込んで座敷に入ると4人席のテーブルが16席あった。丁度、昼食時間だったので空いているテーブルは2つだけだった。その一つに席を取り、岩魚の塩焼き、盛り蕎麦、日本酒を2本頼んだ。岩魚は注文を受けてから生け簀から取り上げて絞めるとのことで、20分ほど経ってから焼きあがった岩魚が運ばれてきた。盛り蕎麦も日本酒もそろったので、ゆっくり味わうことにした。岩魚は冷凍品を解凍したものではないので美味かった。日本酒は地元御嶽の澤の井が飲みたかったのだが、お品書きには書かれてなかったので剱岳という富山県の酒をお願いした。2本目を飲み終わるころには身体はぽかぽか温まり、ほろ酔い気分であった。

 

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老舗蕎麦屋の玉川屋

 

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岩魚の塩焼き、盛り蕎麦、清酒・剱岳、

 

 自宅に戻って山行記録を確認したところ、4年前の2012年3月に高水三山に登ったことが分かった。登山道は整備され手頃に登れるハイキングコースとして青梅線駅から登れるので足慣らしには丁度いいと思う。

 

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