ヤマツツジ咲く若葉の高川山縦走路を歩く
高川山975m山頂からの富士山の眺め
JR初狩駅に降り立ったのは7時27分だった。千葉の自宅から約3時間。初狩駅は初めて降りた駅だった。5月の声をきこうとするのに、気温は6℃と冷え込んでいた。今日の登山は初狩駅の南に位置する高川山975mへ登り、そこから天神峠、峰山、オキ山、むすび山を縦走してJR大月駅に下山する5時間の行動予定であった。
初狩駅からピラミダルな滝子山が見えた
初狩駅に下車し、駅前を右折して高川山に歩を進める。駅前正面にピラミダルな滝子山が見えた。まだ山の木々は芽吹いておらず紫色に見えるが、山容からして素晴らしい山に感じられた。今度あの山に登ってみよう。空は雲ひとつない快晴で、周りの山々は新緑に彩られていた。あちらこちらからウグイスの囀りが耳に届いた。自徳寺の横を歩いていると、左側から大きな扇風機のような音が常に聞こえた。ダストで煙を吸い込む音のようにも聞こえる。何の音だろうか?ヤマツツジ、スイセン、アヤメの花が咲いている。
スイセンが咲いていた
山道に入ると”クマ出没注意”の黄色い看板が掲げられているのでザックに熊鈴をつけた。右手に持つトレッキングポールにも鈴が付いているので準備万端だ。クマやイノシシ、シカたちも鈴の音を聞けば近寄ってこないだろう。さあ高川山に向かって登って行こう。登山道は杉木立の中に続いていた。林の中に陽は届かず気温が低く空気が冷たかった。
登山口のクマ出没注意の看板
砂防ダムを超えたところに、高川山への新旧ルート分岐があった。男坂コース・女坂コースが新ルートに指定されているようだった。以前の玉子石ルートは右に伸びていた。ここにも「クマ出没注意」の看板があった。黄色い看板は登山口にも掲示されていたので、今回2度目のクマ出没注意の看板だった。
男坂コースを選んだ
新ルートを登り始めて15分で、男坂コースと女坂コースの分岐点に着いた。登山道が濡れていた場合は、スリップのリスクを避けるために、比較的に傾斜の緩い女坂コースを選択するが、今回は登山道が乾いていたので、私は急坂である男坂コースを選んだ。ここから本格的な山道となった。男坂コースを登り始めて10分経った頃、登山道に沿って黄色のネットが張られ、立ち入り禁止の札が潰されていた。
登山道に沿って左側に張られていたネットの意味は?
登山道を登っていくと、左側に張られていたネットの意味がわかった。「発破作業中につき立ち入り禁止 甲州砕石株式会社」の看板が表示されていたのである。時折ドスンという腹に響く音が聞こえてきていた。登山道脇に咲いているヤマツツジの朱色が目に飛び込んでくる。山の中で見られる唯一の赤い花だ。周りは新緑に包まれ、アオダモの白い花に目を奪われる。射し込む陽により新緑の木々がより一層明るく感じられた。明るい森の中につけられた九十九折りの道を山頂に向かって登っていった。
ヤマツツジが花を広げていた
登山道は登ってきた男坂と迂回してきた女坂を合わせ、少し登ったところに大石が散らばる展望所があった。木の間から富士山の眺めがすばらしかった。
ヤマツツジが花を広げていた。まだ蕾のものもあるが、改めて見ると綺麗な花だと思う。急登で随分汗をかいたので、休憩することにした。残り20分で高川山山頂である。私の前に青い服を着た男性登山者のグループが登っていくのが見えた。
高川山975m山頂からの富士山は素晴らしい
登山道は展望場を過ぎると笹原の中の道となり、山頂までの標高差100mをゆっくりと上げていった。キツツキのドラミングの音が耳に届いた。朱色のヤマツツジの花の向こうに真っ白い富士山が見えた。柔らかい清楚なアオダモの花も静かに咲いていた。若葉の季節の山は綺麗だ。9時に高川山975m山頂に着いた。先に着いた4人の方に挨拶し、1人にスマホのシャッターを押してもらった。富士山が素晴らしい。長い裾野を広げて眼の前に堂々たる姿を現していた。高川山は大月市秀麗富嶽十二景第11番、山梨100名山にも選定されている富士山の好展望地である。本当に素晴らしい眺めだ。
大月市秀麗富嶽十二景第11番・高川山山頂からの眺め
自宅を4時20分に出てきたため朝食を食べていなかった。富士山を眺めながらコンビニで買ってきたおにぎりを食べた。富士山をおかずに食べるおにぎりは特別の味がした。素晴らしかった。山頂には20分間ほど滞在し、JR大月駅に向かっての縦走を開始した。山頂の表示板では大月駅まで160分という表示があった。
明るい縦走路を歩く
明るい尾根の縦走路を歩き出した。縦走路はアップダウンを繰り返していた。しかし高川山の上りのような暗い杉林の中を歩くようなところは少なかった。登山道は急激な岩場の下りなどもあって気を抜けないところもあるのだが、ヤマツツジの花を見ながら明るい林の中を歩くのは実に清々しい気分となれた。今回も山登りに来て良かったと思った。
小さなハルリンドウが微笑みかけてきた
足元に1cmにも満たない小さな薄青色のハルリンドウが花を広げていた。こんな小さな花にも春は確実にやってきているのだ。田野倉駅への分岐を右に分けて、むすび山方面への縦走路に入って行った。この縦走路がなかなかのもので、陽の日差しが入って明るいのだが、急激な下りが連続していた。ロープが常に張られているような状態で、スリップに気をつけながらロープを脇の下に挟み下降していった。
遷宮天満天神鎮座の小さな銅葺きの祠があった
天神峠に遷宮天満天神鎮座の小さな銅葺きの祠があった。1円玉、5円玉、10円玉、100円玉のお賽銭が供えられてあった。天神峠は4差路になっていた。左に行けば国道20号線に出るのだが、難路という表示がされ、右は廃道のようだった。私は直進し大月駅方面へと進んだ。峠を越えて登り出すと、小さな赤い屋根の祠が建っていた。縦走路の左右にヒノキの植林が見られるようになった。
峰山の登りで振り返ると富士山の山頂部が見えた
大きな岩が転がっている峰山に着いた。眼下に高速道路が伸びている。峰山に登ってくる途中で後ろを振り返ると、8合目ぐらいから上が真っ白い雪をかぶった富士山がヒノキ林の上に見えた。吹き上げてくるそよ風が頬に心地よい。額や頬を伝う汗を冷やしてくれた。周りにはヤマツツジの朱色の花がたくさん咲いていた。花のすぐ上を大きな図体のクマバチが飛んでいた。クマバチは優しいハチなのだが、身体が大きくブンブン飛ぶので怖い、と誤解されているのが少し可哀そうだ。黒いアゲハチョウも舞っていた。残り1時間でJR大月駅に着くだろう。
むすび山山頂に着いた
ずいぶん標高を下げてきたので、富士急電鉄の電車が走っていくのが見えた。肌色と赤のツートンカラーの電車だった。ここら辺りの里山はクヌギの巨木がたくさん生えており、それらが芽吹き、若葉色となってとても美しい。私の身体が芽吹いた黄緑色に染まるようだ。むすび山の山頂に着いた。山頂名表示はなく、大月市が建てたハイキングコースの標柱が立っているだけだった。周りは若葉の林の中でとても清々しい。
JR大月駅前の郷土料理店に入った
縦走路も終わりに近くなり、むすび山展望台を過ぎて大月市内に下山していく途中に、淡い桃色のイカリソウがたくさん咲いていた。実に静かな感じを受ける山野草だ。12時30分にJR大月駅に下山した。駅前にある信玄餅の桔梗屋の2階の郷土料理店に入った。暑かったので、甲州名物の“ほうとう”は避けて頼んだ料理は、ばくだん丼と唐揚げのセット、甲州サーモンのルイベだった。まずはビールで乾杯である。喉ごしのビールがハイキングでひと汗かいたあとだけに、冷たくて美味かった。ルイベは肉厚で少し硬かったが、味がしっかりしていて美味かった。唐揚げは少し黒っぽいが美味かった。ばくだん丼は5種類の具に温泉卵が載っており、それぞれの味を噛みしめながら食べた。これも美味かった。私が食事を食べ終わる頃、高川山の山頂で出会った4人グループが店に入ってきた。みんな元気だった。私は食事を終えたので4人グループに挨拶し、妻へのお土産を買って、予定より1時間早い13時15分の電車に飛び乗った。
今回のハイキングコースの履歴
今回の高川山ハイキングは、朱色のヤマツツジや純白のアオダモの花が咲き、若葉の明るい縦走路を歩き、そよ風に吹かれながら清々しい気持ちになれた満足満足のハイキングだった。高川山の頂上では雲ひとつない空に聳え立つ雪化粧した富士山に出会えて最高だった。頂上で食べたおにぎりもまた格別な味であった。こういうハイキングをこれからも続けていきたい。今回の登山で出会った登山者は高川山の山頂で5人、縦走路で1人、合わせて6人だけだった。出会った人たちは、登山で汗をかき、生命力の溢れる自然からエネルギーをもらい、ニコニコと爽やかだった。これでいいのだ。!(^^)!