雪が少なくなった富士山頂

 

山の景色

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石老山山頂から眺めた雪が少なくなった富士山頂

 

6月6日 火曜日 晴れ

今回は神奈川県相模原市にある石老山へのハイキングである。前回(2021年11月)、石老山ハイキングを計画したが、台風による土砂崩れで登山道が通行禁止となっていたため登山口から引き返した。全くの事前調べミスであったが、昨年9月に登山道が復旧したために、再度今回のハイキングを計画したものである。

 

建物の間の道路

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JR相模湖駅前

 

幕張駅4時40分の始発電車に乗るために自宅を出た。南の空に満月が浮かび、東の空は朱色に輝き出していた。気温は18℃になっていたが、半袖では寒く感じた。早起きのハシブトガラスの鳴き声が聞こえてきていた。昨日は関東各地で30℃超えの真夏日気温を記録していたので、今日も暑くなることだろう。

 

カレンダー, マップ

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石老山入口にはハイキングマップが立っていた

 

JR相模湖駅に下車すると空は曇っており、30羽ほどのツバメが入り乱れて舞っていた。神奈川中央交通バスに乗リ、石老山入口バス停で下車したのは私ひとりだった。石老山入口にはハイキングマップが立っていた。スマホソフトのYAMAPのGPSを起動して歩き出した。緑を増した森の中からウグイス、ヒヨドリ、セキレイの鳴き声が耳に届いた。

 

草の上にある山

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イノシシ対策用の電気柵と石老山

 

住宅近くの畑で昨日掘り返したばかりのイノシシの掘り跡が無数にあった。これではたまったものではない。野菜を護るために畑の周りに電流柵が張り巡らされていた。むせるような独特な香りがするクリの花が満開である。トウモロコシが40cmほどに伸び、キウイフルーツの棚には3cmほどの丸い実が育っている。それらは全てイノシシよけの柵の中に作られている。里山ではイノシシやシカが増えすぎて、村人たちの生活を脅かしているのがよくわかる。

 

「石老山周辺に咲く草花」という看板があった

 

『東海自然歩道』に指定されている石老山表参道入口という大きな看板に沿って右に折れて石段を登った。相模湖病院の駐車場の脇から細い登山道が山へと伸びていた。杉林のなかの沢に沿って登山道がついており、簡易的なパイプの橋を渡ると「石老山周辺に咲く草花」という看板があった。看板には27種類の草花が写真付きで表示されていた。そのなかで初めて目にするのは、サイハイラン、ヤブレガサ、ミツバツチグリなどの草花だった。登山道には全国各地に大雨をもたらした台風2号の影響と思われる水が流れ込んでいた。

 

森の中を歩いている

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滝不動と説明板

 

クマ鈴が付いたトレッキングポールを出す準備をしていると、上からひとりのお年寄りが降りてきた。「もう頂上に行ってきたんですか?」と尋ねると、「この上のお寺まで行こうとしたけれど、道が危険すぎるので降りてきた」との答えだった。登山地図を示して、「お寺までは下の駐車場からちょうど真ん中あたりですよ」と伝えると、「安全第一なので降ります」とのことだった。そのお年寄りから別れて数分登ると滝不動という表示が目についた。説明板には「岩窟の前の大石の上に絞龍の石像があり、悪魔を降伏させるかのような顔相である。この石像に岩上から滝が降りかかるので、これを滝不動といい、昔は水量も多く参詣人がこの滝の水を浴び、身を清めて祈願した」とのことだった。登山道脇には屏風岩、仁王岩など次々に大岩や奇岩が登場した。登山道には絶えず水が流れ込んでおり滑りやすかった。足先に注意を集中させながら登って行った。

 

ユキノシタの白くて細い小さな花が咲いていた

 

登山道脇にあまり目立たない花だが、ユキノシタの白くて細い小さな花が儚げに咲いていた。私は子どもの頃から植物や昆虫や鳥などの生き物が好きだった。夏は日が暮れるまで川で遊び、魚を釣り潜って魚を捕った。かすみ網や罠で野鳥を捕まえてはそれを自分で作った鳥小屋や鳥かごに入れて飼った。トンボやチョウの昆虫標本を作った。生物図鑑や植物図鑑をよく見ていたのだが、この登山道にもたくさんの草花が顔を覗かせている。

 

2020年4月に訪れた牧野富太郎記念館は開館前だった

 

草花といえば現在、NHKの朝ドラマで日本の植物学の父と言われている牧野富太郎博士をモデルとした『らんまん』が放送されている。私が四国遍路で高知県の遍路道を歩いていた時に、第30番善楽寺から第31番竹林寺の間の山道に牧野富太郎記念館があり、建物とともに山全体が植物園になっていた。その山のなかを遍路道が通っているので、そこを歩いている時に植物園の散策路が迷路のように入り組んでいるので道で迷ってしまい、開館前の準備をしていた女性に遍路道に迷ったことを伝えて出口まで道案内をしてもらったことを思い出した。女性の話では迷う方がよくいらっしゃるとのことだった。朝ドラマ『らんまん』で妻となる寿恵子役の浜辺美波は実に美人ですね。

 

森の中の岩

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高さ1mほどの男力試岩

 

大岩や奇岩は次々に出てきたが、力試岩(文殊岩)というのが出てきた。男岩と女岩のふたつがあり、大きい岩が男試岩で小さい岩が女試岩だというが、小さい岩は持ち去られてしまったか谷に落ちたのか無かった。大きい岩は高さ1mもあり、とても男の力で持ち上げられるような岩ではなかった。

 

草の上にある岩

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静かに佇む六地蔵

 

ほどなく石老山顕鏡寺に着いた。山門の左側に赤い前掛けをかけた六地蔵が立っていたが、満足なお地蔵さんは2体だけで、首がないのが3体、台座の上からお地蔵さんがそっくり無くなっていたものもあった。このお地蔵さんも1868年に明治新政府によって出された「神仏分離令」に伴い、全国的に拡がった廃仏毀釈運動によって首を切り落とされたものであろう。せっかくなのでお参りしていくことにした。『顕鏡密寺』の扁額が掛けられ、本堂内には平安時代後期に作られた黒塗りの木造阿弥陀如来坐像が安置されているが非公開になっている旨の看板があった。

 

森の中のベンチ

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打ってはいけない顕鏡寺の鐘楼

 

顕鏡寺のお参りを済ませて山門前まで出てくると、先ほど登山道の途中で出会ったお年寄りが赤い車でやってきた。このお寺までは車道が通じているのだった。お年寄りと言葉を交わしたあと寺の裏手から登山道を登り始めた。途中に鐘楼があったが「危険ですから鐘はつかないでください」という張り紙がしてあり、トラロープが張り巡らされてあった。登山者がむやみやたらに鐘をつくのだろうか。いよいよ本格的な急登が待ち構えていた。

 

山の景色

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桜山展望台からの景色

 

杉の根っこを手でつかむような急斜面を登っていくと桜山分岐に出た。少し遠まわりになるが、桜山展望台を経由してから山頂に向かうことにして分岐を右に折れた。しばらく歩くと大きな桜並木の右側が開けたところがあり、向かいの山並みの手前に藤野町の町並みが一望のもとに見渡せた。山並みを越えていく赤と白に塗り分けられた送電鉄塔が目につく光景でもあった。桜並木が満開の時期に、ここを通ればどんなにか素晴らしい景色であろうかと思われた。コジュケイのチョットコイチョットコイというせわしい鳴き声や、キジのケーンケーンという甲高い鳴き声が耳に届いた。

 

森の中の道

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明るい広葉樹の水源の森

 

植林された杉林を抜けると水源の森だった。緑の広葉樹の樹冠から野鳥のさえずりが落ちてくるのだが、樹冠までが高く、葉が生い茂っているために鳥の姿を確認することはできない。杉林のなかの湿った空気とは違い、広葉樹の森は明るくて空気が新鮮なように感じられる。広葉樹の森の中を歩いて行くのは実に清々しくて気持ちがいい。

 

森の中のベンチ

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融合平見晴台からの見晴らしは良くなかった

 

融合平見晴台に着いたのは、バス停から歩きだして1時間20分が経っていた。見晴台とはいうものの、周りの木々が育ち過ぎて、見晴らしは良くなかった。休憩台が6個とベンチが2個あり、周りは高い5本のサクラの木で囲まれていた。歩き出して一度も休憩をとっていなかったので、初めての水分補給の休憩となった。

 

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「緑は友だち」の看板

 

山道の脇には『緑は友だち・山火事注意・自然を守りましょう』森林国営保険・神奈川県という看板が木にくくりつけられているのを度々見かける。確かに木々の葉は空気中の二酸化炭素を吸収し、酸素を放出する機能を持っており、私たち生物にとって大切なものなのだが、今回の山道を歩いていても登山道を広げるために、無駄な伐採を行っていると思われるところがあった。山道というのは本来細くて歩きにくいものであり、歩きやすくするために、太い樹を伐ってしまうのは本末転倒なことだと思う。

 

森の中に立っている男性

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石老山(702.8m)山頂に着いた

 

石老山(702.8m)の山頂に着いたのはバス停から歩き始めて2時間後だった。石老山いう名前は途中でお参りした顕鏡寺の山号から名づけられたものである。西側が切り開かれているので富士山の姿を探すと、三角形の大室山の向こうに山頂部に積もった雪が少なくなった富士山が見えた。大室山の左には丹沢の山々が連なっており、最高峰の蛭ヶ岳が見えた。素晴らしい。曇り空ながらも富士山が見えたことは嬉しいことだった。Bluetooth のセルフタイマーを使って山頂での写真を撮った。

 

屋外, 人, 男, 立つ が含まれている画像

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石老山山頂から望む富士山

 

山頂で休憩しているとメガネをかけた40代と思われる男性単独登山者が登ってきた。 自宅ではカレーパンと牛乳だけの朝食だったので豆大福を2個食べた。甘さが口の周りにまとわりついた感じがした。普段は甘いものを食べないので、余計に甘さを強く感じるのかもしれない。30分ほど休憩し元気がついたところで、大明神山に向かった。

 

屋外, 泥, 茶色, ごつごつした が含まれている画像

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アナグマの糞だめ

 

登山道の真ん中に真新しく掘った穴のなかに糞溜めがあった。タヌキは穴を掘って糞をしないのでアナグマだろうか。とにかく自分のテリトリーの目安として糞溜めに何回も糞をしるのである。上部の方にも新しく穴を掘った跡があったが、そこは糞溜めにはなっていなかった。糞溜めもハイキングをしていると度々出会う光景である。

 

屋外, 男, 人, 座る が含まれている画像

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大明神山頂に置かれていた大明神社

 

石老山山頂から急激に下ったあと、いくつかの上り下りを繰り返してやっと大明神山(511m)に着いた。山頂にはコンクリート製の赤い社が置かれていた。社の中に大明神と書かれた木の札が入っており、1円玉、5円玉、10円玉のお賽銭と白米が奉納されていた。セルフタイマーの準備をしていると、ポッポッポッポッと鼓を叩くようなツツドリの鳴き声が遠くから聞こえてきた。カッコウの仲間であるツツドリも南の地域からやってきていたのだ。カッコウの仲間は自分で子育てをすることなく、ウグイスやホオジロなどの巣の中に卵を産み落とし、托卵というが借り親に子どもを育ててもらうのである。自然界における実に不思議な現象である。

 

山と湖の風景

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大明神展望台から眺めた相模湖

 

大明神山を下った先に北側が切り開かれ、鉄製の展望所が作られていた。そこからは富士山は反対側なので見えないが、眼下にスワンボートが浮かぶ相模湖が見渡せた。相模湖の色は台風の影響だろうとおもわれる茶色く濁った色をしていた。石老山山頂で出会った男性登山者がバーナーで湯を沸かしながら休憩していた。挨拶をして下山口の鼠坂に向かった。展望所からほどなくして分岐が出てきたので、案内板表示がされている通りに左コースを取った。左コースの方が事前調べによって、距離は少し長くなるが登山道が荒れていないのだった。

 

花が咲いている植物

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朱色に熟したキイチゴの実

 

降りてくる途中で登山道の脇に丸く黄色い点々が見えた。その黄色い点々がキイチゴであることを直感した。キイチゴの実は今の時期にしか食べることができない。キイチゴの茎や枝には鋭い棘が生えているので、注意しながら手を伸ばして実を口に含むと、甘酸っぱい味が口いっぱいに広がった。今年は家庭菜園で甘いイチゴをたくさん食べたが、キイチゴは菜園のイチゴとは全く違う甘酸っぱい野生の味がした。

 

木製テーブルの上にあるいろんな果物

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お土産になったルビー色に輝くキイチゴの実

 

キイチゴが生えている場所は何か所もあるのでスリップに注意しながら、山頂で食べた豆大福のケースをザックから取り出し朱色のキイチゴの実を入れた。妻と息子への野生の味のお土産ができた。

 

大明神展望台登山道入口の表示板

 

急降下していくと、やがてアスファルトの車道に飛び出した。そこには「大明神展望台・登山道入口」という表示板が立っていた。ここから30分の車道歩きで鼠坂バス停に着き、『相模湖温泉うるり』に入ることができる。曇っていたために陽はさしていなかったが、気温が上がっており随分汗をかいた。ハイキングのあとに温泉に入れることの幸せを思う。

 

フェンス, 屋外, 座る, 金属 が含まれている画像

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通行禁止になっている登山道

 

大明神展望台のすぐ下の分岐で右コースを取ると相模湖休養村キャンプ場の脇に降りてくるのだが、下では登山道が荒れているため封鎖されていた。このまま廃道になるのであろうか。車道を歩いていると真っ白いヒメウツギの清楚な花が目に飛び込んできた。野生の花は栽培される観賞用の花に比べて小さいものが多いが清楚で美しいと感じる。鼠坂まで降りてくると津久井消防署の新築工事が行われており外観はほぼ完成していた。後は内装工事となるので足場が解体されつつあった。

 

家の庭

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『相模湖温泉うるり』に着いた

 

『相模湖温泉うるり』に着いた。平日なので入浴者はほとんどが年配者だった。露天の高濃度炭酸泉に「15分以上入らないでください」という注意書きがあったが、30分ほど入りながら両膝のマッサージをやると、脚が随分軽くなったような気分になった。湯上がりは当然ビールなのだが、缶ビール類が売っていなかった。食事は相模湖駅前で予定していたので、1時間に1本のバスの通過時刻まで休憩室で休みながら、持ち込みの柿ピーをつまみにウイスキーの水割りを飲んだ。

 

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相模湖駅前の洋食屋『碇屋』に入った

 

相模湖駅前では以前入ったことのある『かどや』は休みのため、道路の反対側にある洋食屋『碇屋』に入った。お店の正式名は「いかりやレストラン・デミタス」というらしいが、昭和の香りがする2階に上っていくと、お客がいなかったので駅前広場が見おろせる窓際の席に座った。注文したのはカツ丼、鳥のからあげ、瓶ビール、日本酒は300mlの生酒だった。

 

草, 屋外, バス, 駐車 が含まれている画像

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駅前広場が見渡せる窓際の席

 

ほどなく瓶ビールと鳥のからあげが運ばれてきた。喉元を落ちていくビールの味は最高だった。レモン汁をかけた鳥のからあげも柔らかくジューシーで抜群だった。やがてカツ丼が運ばれてきた。生酒を呑みながら久しぶりに食べたカツ丼の味は、若干薄めだったが美味かった。今回の会計は2901円だった。

 

トレイの上にある料理

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久しぶりに食べたカツ丼は美味かった

 

 私のあとで2組の客が相次いで入ってきたのだが、ひとりの男性は私と同じカツ丼を注文し、他の学生と思われるふたりは相模ダムカレーを食べたかったようだが、売り切れのため、男性はスパゲティを女性はカツ丼を頼んでいた。Tシャツ姿の学生たちは私の目の前に座っていたので、ふたりの動作が目に飛び込んできたのだが、仲のいい友だちという雰囲気だった。食べるものから判断して女性のほうがパワフルの感じを受けた。まだ陽に焼けていない女性の二の腕の白さが眩しかった。ふたりの会計は割り勘で済ませていた。

 

グラフィカル ユーザー インターフェイス, アプリケーション

自動的に生成された説明 グラフ, 折れ線グラフ

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今回の活動データ

 

今回の山旅は、標高は700mと低かったがアップダウンも結構あり、足慣らしのハイキングとしては満足できるものだった。これから徐々に標高を上げていこうと想う。ハイキングのあとは温泉とビールと地酒で乾杯である。

 

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