ま・こういうこともあるさ
色づく石老山
週間天気予報を見ていると快晴の日が続き、初鹿野の最低気温が0度を切る日が多くなってきていた。空気は澄み渡り、遠くの山まで見渡せることを期待し、日帰り登山で大蔵高丸と破魔射場に出かけることにした。いずれも大菩薩連嶺を構成する山で、大月市の「秀麗富嶽十二景」の3番に指定されている。山頂からは素晴らしい富士の絶景を期待していたのだったが・・・
早朝の甲斐大和駅
7時38分に甲斐大和駅のホームに降りた登山者は私一人だった。改札口を出てみると、上日川峠行きのバスが停まっていなかった。3週間前に大菩薩峠から小金沢連嶺を歩いた際に、登山口まで乗ったバスだった。不審に思い、バス停の時刻表を確認すると、なんと平日のバスは4日前の月曜日で終了し、土休日のみの運行となっていたのである。ガビーン。ガックリ。私の確認不足で痛恨のミスだった。空は雲ひとつなく晴れあがっていた。幕張からはるばる3時間もかけて甲斐大和までやってきたので、このまま幕張の自宅に戻るのは勿体ない。途中の相模湖駅で下車し、登山コースの下調べが済んでいた石老山に登ることに計画を変更し、家族にLINEで連絡した。
ユズの大きな実が真っ黄色に色づいていた
8時51分に相模湖駅に下車し、9時発の三ヶ木行きの神奈川中央交通バスに乗り、10分後に石老山登山口に着いた。周りの木々は紅葉の真っ盛りであり、山頂までの登山道の彩りに期待が持てた。石老山に向かって進んでいくと、ユズの大きな実が真っ黄色に色づき、葉を落とした柿の木は、朱色の実だけが収穫されることなく残り、鳥が啄むのを待っているのだった。
登山道が崩壊したため通行禁止の張り紙があった
紅葉を眺めながら鳥の囀りを聞き、石老山への入り口の顕鏡寺に向かう分岐まで来ると、なんと、台風19号の被害により、登山道が崩壊したため通行禁止、の張り紙があるではないか。ガビーン。ガックリ。今回2度目の強烈パンチだった。近くの別の山へ登ろうと思ったが、『2度あることは3度ある』という諺があるので、今回は潔く登山は中止し、相模湖周辺の紅葉をゆっくり眺めて、早めに帰宅する方向に転じたのである。ま・こういうこともあるさ。時に9時20分だった。
日帰り温泉の「うるり」
登山口から相模湖駅に向かう途中で、さがみ湖プレジャーフォレストの日帰り温泉“うるり“を見つけた。さがみ湖プレジャーフォレストは、以前は相模湖ピクニックランドという名前だったが、名前を変えたようだった。私は訪れるのは初めてだったが、日帰り温泉に着くと営業開始は11時となっており、1時間ちょっと待てば入浴できるので、それに入ってから相模湖駅に向かうことにした。
「光の架け橋」展望台からの石老山の眺め
日帰り温泉の営業開始まで間があるので、プレジャーフォレストに向かって階段を上っていくと、「光の架け橋」という展望台があった。展望台は夜にはライトアップされるようで、セーラームーンのパネルとともに、紅葉に彩られた石老山が見渡せた。本当ならば、あの山に登るはずだったのだが仕方がない。セーラームーンといえば、私のふたりの子どもが学童保育のお世話になっていたころ、頼まれて千葉市学童保育連絡協議会の会長をしたことがあるが、千葉ポートタワー前の芝生広場を借りて、子どもルームまつりを開いたことがあった。その時にべニア板をくりぬいて、セーラームーンの顔出しパネルを作ったことを思い出した。
オリエンテーリングの説明を受ける中学生
階段を上りプレジャーフォレストの正面入口に着くと、入園料は1900円だという。遊園地自体の入園料なので、アトラクションに乗らなくても支払いが必要だと言われ、私はすぐに踵を返した。中学生と思われる団体が駐車場脇のテントのある広場で、オリエンテーリングのコースとコンパスの使い方の説明を受けて、野外授業を楽しむようだった。快晴のもとに遊園地内とはいえ、地図とコンパスを持ち、数人のグループで協力し合いながらチェックポイントを次々にクリアし、ゴールを目指すのは楽しいことだろう。良い思い出になるに違いない。
お土産は温泉まんじゅう
11時になったので、私は日帰り温泉“うるり”に向かった。露天風呂に入り、周りの景色を眺めながら高濃度炭酸泉にゆったり浸かった。太陽の光を浴びながら最高の気分だった。それを出ると高速ジェットバスだった。全身をジェット水流で揉みほぐされて、ふにゃふにゃぐったり、実に心地よかった。入浴後にここの食事処でいっぱいやってしまうと、駅に帰るのがおっくうになるので我慢し、駅の近くでいっぱいやることにした。家族へのお土産に温泉まんじゅうを買った。
相模湖駅前食堂の「かどや」
駅前広場から徒歩数mの「かどや食堂」に入った。店内にはお客は誰もおらず、私が初めてのようだった。この食堂は1年前に陣馬山から景信山に縦走し、相模湖に降りてきた時に寄ろうとした食堂だったが、あいにく休みのため残念な思いをしたところだった。まずはキリンビールの大瓶633mlで、ぐびぐびプファーの乾杯だった。
ツマミは蒸し鶏の塩ネギまみれ
ひとり乾杯を終えたあとは、つまみに相模湖名物のワカサギの唐揚げと蒸し鶏の塩ネギまみれを頼んだ。ワカサギは小ぶりだったが、揚げたてのためサクサクしており、とても美味かった。蒸し鶏も細かく刻んだ塩ネギがのっていて、梅肉をちょこっと付けると、つまみには最高だった。ビールのあとの酒は当然のことながら、地酒の丹沢ほまれを頼んだら、コップ酒だった。クイックイッと2杯飲んだ。コップ酒を2杯飲むと、温泉でのぼせたこともあって、ほんわかと極楽気分だった。これだから温泉と地酒はやめられない。
吉田舜さんの作品
食堂の2階がギャラリーとなっていた。料理を運んでくるアルバイトのお姉さんに尋ねて、陶器展のことを知ったのだが、題名は『再逢の秋
名峰をのぞむ陶器展』というもので、11名の陶芸家が作品を展示していた。私は食事をいったん中断し、2階に上がって陶器展をみた。私も数年ろくろを回していたことがあり、展示されていた作品をぐるっと見て回って、いいなと思ったのは、吉田舜さんの作品だった。吉田さんは2点の作品を展示していたが、貫入の入った平皿の青色が良かった。素晴らしい。石垣島を訪れた際に見た透き通ったブルーの色だった。個性の強い皿は料理が負けてしまうので、料理皿には向かないが、私は好きだ。
今回の石老山のデータ
今回の登山は直前の状況把握の重要性を改めて感じさせるものだった。第1の甲斐大和駅からの平日の登山バスは、11月上旬に同一区間に乗っていたので、11月末まで運行しているだろうという思い込みが失敗だった。第2の石老山の登山道崩壊については、今回は時計回りの馬蹄形に登山ルートを計画したが、反時計回りの登山ルートを計画し、登頂後に同じ道を戻って下山すれば、一応山頂までは登れたのだが、またの機会としよう。第1も第2もともに情報収集不足だった。今回の反省点は次に活かすとして、ま・こういうこともあるさと思いながら、日帰り温泉の「うるり」に入れて、駅前の「かどや食堂」で地元料理と地酒を楽しんで、更に陶器展の作品が見られて、それなりに満足な山旅だった。
追記 2021年12月31日
相模湖駅前食堂の「かどや」で食事をした際に、2階で開催中の陶器展を見て、素晴らしい作品だと感じた吉田舜さんの作品を譲ってもらった。
譲ってもらった吉田舜さんの作品
食事をした際、店のおばさんに作品展の感想を述べると、「代表者から連絡します」とのことだったので、私の連絡先をメモして渡しておいたところ、後日、代表者から連絡が入り、作品を譲ってもいいとのことで、作者の吉田舜さんが22歳の若者ということもあり、これからの作品制作の激励を込めて、平皿1枚5000円を提案し、快く譲ってもらえた。郵送されてきた作品には代表者の山本満久さんの4作品が同封されていた。この4作品も色合いが素晴らしいと思った。吉田さんの作品には貫入が入っているので、米のとぎ汁で煮詰める処理をした後、ラミネートフィルムでコーティングして使っている。山本さんの作品は晩酌の際の酒器として使っており、来年も11月に作品展を開催するとのことなので、山登りの際に立ち寄ってみようと思う。