プーンヒルからの大展望
夜明けのプーンヒルからの眺望
4時15分に目覚め、4時50分にロッジを出発する。まだ夜明け前だ。足元を照らすヘッドランプの明かりを頼りに暗闇の石段をひたすらプーンヒル(3193m)に向かって歩を進める。欧米人の元気な人たちが私たちの隊列の横をすり抜けていく。前後のヘッドランプの列をなす明かりが御来光を見るために続々と登っていく富士登山を連想させる。ゴラパニ(2750m)のロッジから登りだして40分経った。あたりは暗いが電波塔が建っている場所が休憩所のような広場になっているようだったので一休みした。更に登っていくと櫓の展望台が見えて来た。やがて標高差443mを登り切り、「プーン族の丘」と名付けられたプーンヒルに6時に到着した。朝食まえの起き抜けの一番の登りは結構きつかった。
丘の上は既に夜明けの光が射す光景を待つ人たちで一杯だった。私と友人の武者は左手にダウラギリ山塊が遠望でき、正面にアンナプルナ山塊が見渡せる場所に座った。やがて右奥に位置し鋭く天に突き上がっているマチャプチャレの右側の空が茜色に輝きだし光の矢が放たれた。光の矢は徐々に強さを増し、やがて太陽が雲間に顔を出し始めた。正面のアンナプルナ山群に光は射さず、左手のダウラギリ山群の山頂を赤く染めだした。拍手が湧きおこりハッピーバースディの合唱も聞こえ出した。丘の上の人たちはダウラギリ山群が良く見える丘の左手に移動しだした。
ポカラからのトレッキングコースとして最も人気なのは短期間で行けて、氷雪で白く輝くアンナプルナ山塊とダウラギリ山塊が180度展望できるプーンヒルへのトレッキングである。昨年11月に初めてネパールのポカラを訪れ衝撃を受けたのは、アンナプルナ山塊の中央に聳え立つマチャプチャレの鋭く天を突く三角錐の鋭鋒だった。その雄姿は私にとって8000m峰のアンナプルナT峰よりもずっと魅力的だった。ダウラギリT峰はタサン村から見た形と異なり、どっしりとした台形に見える。
プーンヒルからのアンナプルナ山塊の眺望
私は丘に着いてから暫く写真を撮っていたが1段落するとザックの中からスケッチブックを取りだした。私は海外トレッキングに出かける時にダッフルバックの隅にB4サイズのスケッチブックと12色のアクアッシュを入れる。今回もスケッチブックを持参した。スケッチしたいなという場所と時間が許されたならスケッチブックを両開きのB3サイズにして描き出す。まず、正面に見えるアンナプルナ山群のアウトラインを描き色を付けた。次にダウラギリ山塊を描き色を付けた。描き始めて10分位で終った。ロッジに戻って暇な時間に水筆でなぞれば水彩画が出来上がる。出来あがったスケッチに今回のトレッキングサーダーのパトナさんにサインを入れてもらった。