失敗のあとは大蔵高丸へ
大蔵高丸1781m山頂に着いた
10月2日 月曜日 晴れのち曇り
3年前から大月市選定の『秀麗富士12景』を登っていたのだが、残すところは第1番の雁ヶ腹摺山だけとなっていた。雁ヶ腹摺山はマイカーで行けば往復2時間で登れるのだが、バスで行くと10時間近くになり日帰り登山は難しい。今回、この山を日帰りで登ろうと考えた。幕張駅を4時40分の始発電車に乗り、甲斐大和駅からバスに乗り換えた。2年前に大菩薩嶺に登った時のバスは駅前の南側に乗場があったが、今回はバス停が北側に移動していた。駅前花壇を掃除している地元の方に訊いてもわからず、バス会社の事務所に連絡して場所を確認すると、昨年4月から地元住民の苦情を考慮して北側に変更したことが分かった。
甲斐大和駅前バス停の場所が変更されていた
甲斐大和駅から出た38人乗りの中型バスは満席だった。8時20分に天目山温泉に着き、バスを降りたのは私たち2人だけで、外は全て大菩薩峠の登り口である上日川峠に行く人たちだった。一緒に降りた方は米背負峠から大谷ヶ丸コースを歩くとのことだった。私は以前、湯の沢峠までは歩いたことがあるので、舗装された焼山沢真木林道を登っていった。雲ひとつない青空が広がっていた。天気予報では15時までお日様マークが出ていたので、雁ヶ腹摺山には13時ころに着く予定であるから、この青空が続くことを願った。
登山道は荒れていた
平日の月曜日なので登山者も少ないであろう。各地でクマの出没が相つぎ、最近では上高地の遊歩道で男性がクマに噛まれて大怪我を負ったとのことだ。これから山に入って行くのでザックにクマ鈴を着けた。9時35分に湯の沢峠登山口に着いた。林道から離れて登山道に入って歩き出すと、道は荒れに荒れていた。2年前に歩いたことがあるが、その時とは比べ物にならない酷い荒れ方である。びっくりしながらも道を探しながら歩いた。焼山沢を何度となく渡り返した。
小さな赤ちゃんアカガエルに出会った
湯の沢峠に着く手前で2cmにも満たないアカガエルの小さな赤ちゃんに出会った。身体が赤茶色をしており、ちょっと目を離した時に枯葉のなかに紛れてしまうと、身体の色が保護色となってしまい見つけることは困難だった。
湯の沢峠避難小屋の内部
10時30分に湯の沢峠避難小屋に着いた。天目山温泉を歩き出してから2時間が経過していた。避難小屋に入って入口の右側に置かれた「風林火山の町・甲府市」の表紙がついている雑記帳の記録最終ページを確認すると、8月28日に秦野市の3人、9月7日に厚木市の2人、9月10日に藤沢市の1人、そして5日前の9月27日に金さん(75歳10か月)が1人というが記録が残されていた。利用した全員が雑記帳に書くとは限らないが、この周辺の山々は日帰りコースの山がほとんどなので、宿泊には利用されることが少ないのだろう。この避難小屋は蛍光灯が灯るのである。
トリカブトの蜜を吸うマルハナバチ
湯の沢峠避難小屋まで歩いてくる途中で重大なミスに気がついた。登山計画書のタイムスケジュールで、ルート上の天目山温泉から湯の沢峠登山口までの1区間が欠落していた。その飛ばした区間に1時間15分かかったので往復だと2時間となる。タイムスケジュールに2時間を加えると、天目山温泉への下山が18時50分となってしまった。「秋の釣瓶落とし」の諺があるように、お彼岸を過ぎると日没が早まるため、今回の雁ヶ腹摺山往復日帰り登山は中止し、湯の沢峠から大蔵高丸までの往復に変更した。
植生保護のためのロープと鍵付きのゲート
天目山温泉を歩き出した時は雲ひとつない青空であったが、2時間かかって湯の沢峠まで登るうちに、富士山の方向である西側に雲が広がってしまった。これではせっかくの富士山の眺めも期待できないだろう。大蔵高丸に向かって歩きだすと、自然植生保護のために登山道の両側にロープが張られており、シカやイノシシが登山道を歩かないように、鍵付きのゲートが数か所あった。ゲートは人間の手で鍵を開け閉めする方法なのでシカあるいはイノシシは通ることができないのだ。野生動物も藪のなかの獣道を歩くよりも登山道を歩く方が楽なので、夜間は結構登山道を歩いているのだ。
黒岳から雁ヶ腹摺山の稜線
11時10分に大蔵高丸1781mに着いた。残念だけれど正面に見えるはずの富士山は予想通り雲のなかだった。右の方に目を転じると南アルプスの北岳から間ノ岳、農鳥岳と連なる白峰三山が雲の上に見えた。後ろには黒岳から今回登る予定だった雁ヶ腹摺山の稜線が見えた。
富士山はこちらに見えるはずだった
大蔵高丸山頂でセルフ写真を撮ったあとで、おにぎりを食べて休憩していると、ひとりの男性登山者が登ってきた。「富士山はどこですか?」
と訊かれたので、前方を指さして「富士山の右側の裾野が少し見えていますが、あとは全て雲のなかです」と教えた。男性は山頂の表示板を写真に撮り、ハマイバの方へと進んで行った。富士山の絶好の展望地である大蔵高丸山頂だけれど、富士山が雲に覆われるのは仕方がないことである。
枯れ葉の積もる登山道
大蔵高丸山頂で20分ほど休憩して帰路についた。落ち葉を踏むカサカサする乾いた音以外は、クマ鈴のチリンチリンという音だけが聞こえてくる静かな山のなかである。今日は富士山が見えなかったけれど、十分に秋の雰囲気は感じられた。
カラマツの葉が色づきだした
途中でヤマドリのメスが逞しいバサバサする羽音をたてて飛び出し、20mほど飛んで藪のなかに姿を消した。色づきだしたカラマツの葉は緑から茶に変わりだし、やがて真っ黄色に変わるだろう。湯の沢登山口に降りてくると、外来種のガビチョウが、相変わらず大声で怒鳴るように歌っていた。ガビチョウの歌声は美しいのだから、もう少し小さな声で歌えないものだろうか。ガビチョウの鳴き声は幕張では聞かないが、山中湖でも奥多摩でも群馬でも聞いたので、生息地が広範囲に広がっていると思われる。
ヤマガカシの子どもが鎌首を持ち上げた
30cmほどのヤマカガシの子どもが道路を横断中だった。ストックでかまってやると、鎌首を上げて睨みつけられた。小さくても一丁前だった。私が子どもの頃はヤマカガシが毒蛇だとは思わなかったから、捕まえて遊んでいた。しかし最近の研究により、奥歯に毒があることがわかった。その毒が目に入ると失明するそうだ。それからヤマカガシは毒蛇になったようだ。それにしてもヤマカガシは綺麗な色合いをしていると思う。
下山後は温泉で山旅の汗を流したあとはビールだ!!
15時に天目山温泉に降りてきた。山旅の汗を流したあとはビールが待っているのだ。入浴料金は520円だった。浴室の湯舟は温めの源泉と沸かし湯の2つがあり、露天もあった。湯に浸ると肌がすべすべする感覚だった。湯上りには500mlの缶ビールが500円だった。休憩室で残しておいたおにぎりと柿ピーをツマミに飲んだ。
今回の登山データ
今回はタイムスケジュールの作成ミスで登山コースを変更したが、雁ヶ腹摺山は「秀麗富岳12景」の第1番に選定されているように展望の素晴らしい山である。500円も今では硬貨が中心となり紙幣は使われなくなったが、その500円紙幣の裏側に印刷されている富士山は、雁ヶ腹摺山で撮影されたものである。次回のチャレンジで、その素晴らしい景色を快晴のもとで見たいと思う。