奥秩父の金峰山・国師ヶ岳・甲武信ヶ岳を縦走
金峰山頂上にある五丈岩
台風16号が関東地方をかすめて太平洋上を東に抜けると秋らしい好天が予想された。天気予報を参考にして、10月4日から6日の2泊3日の予定で奥秩父山塊の金峰山・国師ヶ岳・甲武信ヶ岳の縦走に出かけた。甲武信ヶ岳という名前は、甲州(山梨)・武州(埼玉)・信州(長野)の3つの国境に聳えているために付けられた名前であり、千曲川・荒川・笛吹川の水源になっており、山頂からは深田100名山のうち43座を見ることができるという。今回歩いた縦走路は、山梨県・長野県・埼玉県の県境に沿って登山道が整備されているのである。
金峰山稜線上からの富士山の眺め
10月4日 快晴
山に出かける時は始発電車に乗るため、いつものように自宅を4時20分に出た。夏ならば夜明け前の東の空が美しいグラデーションを見せるのだが、今の時季はまだ暗い。お茶の水駅、八王子駅で電車を乗り継ぎ、金峰山への山梨県側の登山口がある韮崎駅に向かった。途中の甲府は盆地である。甲府を過ぎるころ、周りを取り囲む山々に雲が湧きだし、山を覆いだしていた。
瑞牆山の登山口
JR韮崎駅で降りた。中天は雲ひとつない快晴なのだが、八ヶ岳の山々の頂上に雲がかかっていた。反対側の甲斐駒ヶ岳は見事な三角形を天に突き上げていた。駅前から瑞牆山荘行きの17人乗り小型バスに6人が乗った。すべて単独登山者の男5人、女1人だった。車窓から見えるリンゴが赤く色づき美味そうだ。途中の増富温泉峡で登山姿の夫婦が乗ってきた。終点に着いたのは10時だった。瑞牆山荘前の登山届ポストに計画書を入れて登りだした。明るい広葉樹とカラマツが混じった登山道を歩いていく。8人降りた登山者の中で、私が最後の出発となった。清々しい秋の登山がこれから始まる。瑞牆山荘から富士見平小屋までの登山道は傾斜が増すと、大岩がゴロゴロ出てきた。
富士見平までの明るい登山道
登山計画を立てた時に、瑞牆山荘の登山口を出発する時刻はすでに10時を過ぎているので、1泊目を徒歩4時間半の金峯山小屋に宿泊予約をとった。夏ならばテント泊で構わないのだが、10月の声を聞くと2000mを越える標高では朝方の気温は5℃くらいまで下がるため、山小屋を利用したほうが賢明だと思い、金峯山小屋に予約を入れたのだった。実際、登山開始の前日には小屋で初氷が張ったとフェースブックに書かれていた。
登山道の途中から瑞牆山が見えた
現在の山小屋の利用は、コロナウイルス感染の影響から全て予約となっている。山小屋も宿泊者の密を避けるため、コロナ禍の前と比べて宿泊者数を2分の1から3分の1に絞っており、山小屋の経営面からは大変だが、宿泊者にとってはのびのびできて快適である。先月出かけた北アルプスの五竜岳山荘は、定員16人の部屋に私たち3人だったので、実にゆったりしていたのである。
富士見平小屋の軽食メニュー
以前、瑞牆山に登ったことがあり、今回の登山ルートも途中の富士見平小屋までは歩いた道だった。50分ほど登ると富士見平小屋の手前で、登山道から外れた場所に平成の名水100選に選ばれた水場があった。そこでペットボトルに水を満たした。これが明日の飲み水となるのだ。今日泊まる山小屋に水は無いのだ。富士見平小屋に着くと林の中に5、6張りのテントが張ってあった。月曜日なのでテントの数も少ないのだろう。瑞牆山との分岐点になっている富士見平小屋は軽食が人気らしい。小屋の入り口にメニューが出ていた。小屋の前を通って金峰山への登りに入って行った。
大日岩を眺めながらおにぎりを食べた
富士見平小屋からの登山道は、大岩がなくなり登りやすい。その登山道も周りに緑の苔が覆われ、ちょうど北八ヶ岳のような登山道へと姿を変えていった。さらに進むとシャクナゲのなかの登山道となり、5月から6月には素晴らしい景色が見られるだろう。富士見平小屋から1時間ほど歩くと、現在は閉鎖された大日小屋に着いた。この小屋は営業をやめてから随分経つので、屋内は荒れ放題で廃屋だった。ここから大日岩に向かうと、ほどなく大日岩に着いた。南側が雲に覆われ出し景色を隠しだした。大日岩には登らずに、お昼ごはんのおにぎりをひとつ食べた。
金峰山山頂までの稜線
歩きやすい登山道が続いた。木漏れ日を浴びながらゆっくりと歩いた。私の前に人はなく、私の後ろにも人がいなかった。実に静かだ。ザックに着けたクマ鈴だけがリーンリーンと鳴っていた。砂払いの頭という金峰山の山頂まで60分の稜線に出た。長い樹林帯のなかの登りが終わったのだ。今までとは打って変わって、夥しい岩が累々と重なる稜線である。山頂まで白い石のルートが続いていた。ここからは右側の絶壁の崖に注意しながら山頂まで登っていった。岩の稜線を登りだすと、突然、富士山が目に飛び込んできた。群青色だった。
金峰山山頂の山名表示盤
金峰山のシンボルである五丈岩に着いたのは14時20分だった。山名表示盤を眺めていた女性にスマホのシャッターを押してもらった。五丈岩には北側から登れるようだが遠慮しよう。大岩が重なる上を落ちないように注意しながら山頂に向かった。山頂までは5分だった。金峰山2595mの山頂の見晴らしは抜群だった。富士山が見え、瑞牆山や八ヶ岳も見え、妙高山や谷川岳も見えていた。北アルプスの峰々も薄い形で広がっていた。
金峯山小屋
明日は再びこの山頂に登って、それから山頂を越えて大弛峠に向かうのである。山頂から富士山が素晴らしい形で眺められるのは最高である。山頂から20分下れば宿泊する山小屋である。金峯山小屋は定員50人のところを半分の25人に絞り、隣人との境はカーテンで仕切られていた。実際の宿泊者は10人で、羽毛布団は暖かく、ぐっすり眠ることができた。
金峯山小屋の夕ごはん
金峯山小屋の夕ごはんはワンプレートの照り焼きチキンと野菜サラダにポテトサラダ、デザートはメロンだった。しかもナイフとフォークだった。日本の山小屋でナイフとフォークを使った過去を思い出しても浮かばなかった。丸い卓袱台での食事は3人で、同席したのは偶然にも山頂でスマホのシャッターを押していただいた地元山梨の北斗市から登ってきた30代前半の女生と、山小屋は初めてという写真撮影が趣味という30代後半の男性だった。それぞれの山への思いを語りながらの食事は楽しいものだった。
1日目の瑞牆山登山口〜金峯山小屋までの登山データ
10月5日 快晴
2日目は金峯山小屋から金峰山山頂に登り返し、縦走コースに出てから北奥千丈岳・国師ヶ岳・甲武信ヶ岳を約9時間縦走し、甲武信ヶ岳直下の山小屋に泊まるロングコースである。山小屋に宿泊予約の電話を入れた際に管理人から、金峰山方面からやってくる場合は結構厳しいコースなので、標準タイムよりも遅れる方が多く、ペース配分を考えた歩き方をして下さいとアドバイスを受けた。また、小屋の夕食は17時ですから、なるべく早い到着をお願いします、とのことだった。
夜明け前の八ヶ岳連峰と瑞牆山
登山計画段階から感じていたことだが、今回の縦走コースで厳しいのは2日目である。そのコースを計画通りに歩くためには背負うザック内の軽量化が求められた。2週間前の後立山連峰縦走で使った60Lザックを35Lザックに変えた。ヘルメットを外し、ジェットボイルと燃料のガス、副食のラーメンも外した。更に防寒着のフリースを外し、水筒は1Lから0,5Lに変えた。必需品の酒はウイスキーボトルからスキットルに変え、ワインは日本酒原酒の500mlに変え、全重量を7kgに軽量化したのだった。
八ヶ岳連峰と瑞牆山
登山の計画段階で金峰山への登山口を北側の長野県側からも考えてみた。登山口まで夜行登山バスが運行されているのだが、運行状況を確認すると金曜発しかなかった。その場合、1日目の宿泊は大弛小屋となり、2日目はずいぶん楽なスケジュールとなるのだが、人出が多い土日の登山は避けたかったために、今回の2日目は9時間というスケジュールになったのであった。
金峰山山頂からの雲海上の富士山の眺め
週間天気予報はおおむね当たっているようで、夜明け前の4時にトイレに起きると満天の星だった。夜が明けてくるにしたがって部屋の中から遠くの八ヶ岳と近くの瑞牆山が見えだした。やがて朝日が八ヶ岳を照らしだした。確実に快晴が保証された朝だった。6時10分に小屋をスタートし、6時半には金峰山頂上に着いた。富士山が雲海の向こうにスッキリ立ち上がり素晴らしい眺めだ。これから9時間の縦走だが、私の体調は十分だった。
大岩の重なる金峰山の山頂
山頂には誰もいなかった。夜明けの写真を撮った人たちは全て山頂から降りていた。誰もいない山頂で360度の大展望台をひとりじめだった。富士山の麓には雲海が広がっていた。南側はまさに雲の海である。反対側の北側には少し雲海が広がるのみだ。山頂からは山という山が全て見渡せた。素晴らしい景色だ。西に北岳や甲斐駒ヶ岳や御嶽山が見えた。北に浅間山が見えた。東に谷川岳と妙高山が見えた。素晴らしいとしか表現できない。ブ〜ンという音がしたので上を見上げると、私の頭の上をドローンが飛び去っていった。今日は素晴らしい景色が撮れるだろう。
縦走路からの富士山の眺め
大岩を縫うようにして縦走路に出た。しばらく歩くと賽の河原という広い場所に出た。そこで3人の若者がドローンを飛ばしていたのだった。3人の若者は日の出前に小屋を出た人たちだった。ドローンは一回で何分ぐらいの撮影ができるのか?と話しかけてみた。30分ぐらいです、と明るい声が返ってきた。中に1人の女性がいた。快晴なので素晴らしい景色が取れるだろう。明るく開けた場所から針葉樹の茂る樹林帯へと入っていった。道はなだらかで歩きやすかった。これが15時15分に甲武信小屋に到着するまでの長い縦走の始まりだった。
朝日岳からの富士山の眺め
7時35分に朝日岳2579m山頂に着いた。シャクナゲのトンネルをくぐるような場所もあった。ここにも、『こうふ開府500年記念事業
2019年3月選定』という甲府名山の標柱が立っていた。新たに甲府名山を選定したようだった。富士山の姿が雲海から浮かび上がり、何度見ても素晴らしい眺めだ。今日は一日富士山が見られるかもしれない。
大弛小屋で小休止し、水を補給した
8時40分に大弛峠に降りた。スタートから約2時間半が経っていた。この大弛峠には長野県川上村と山梨県牧丘町とを結ぶ川上牧丘林道が通っており、自家用車の駐車場やトイレが整備され、山小屋の大弛小屋が建っていた。金峰山への東側登山口があり、登山バスも入っている。大弛峠は標高が2365mと高く、ここまで乗用車でやってきて、家族連れで金峰山や国師ヶ岳に登る人が多いのである。大弛小屋の前で5分間休憩し、水を補給したあと国師ヶ岳に登り出した。最初は板の階段が随分長く続いていてビックリした。30分ほどで前国師岳に着いた。北奥千丈岳の右に富士山がゆったりとした姿を現していた。山は紅葉が始まり、赤や黄や緑に彩られ、パッチワークのようですごく綺麗だった。
北奥千丈岳2601mは奥秩父の最高峰だ
9時20分に北奥千丈岳の分岐に着いた。ザックをベンチに置いて北奥千丈岳2601mへ向かった。北奥千丈岳は縦走路から外れているが、奥秩父の山やまの最高峰なのだ。ここに寄らずして奥秩父の縦走はありえないと感じていたのだ。分岐から10分で山頂に着いた。夫婦の登山者が山頂で寛いでいたので、スマホのシャッターを押してもらった。
国師ヶ岳2592mの山頂
先が長いので北奥千丈岳での滞在は短くし、分岐に戻って縦走を再開した。国師ヶ岳2592mまでは、ひと登りだった。北奥千丈岳で写真を撮っていただいた夫婦がやってきたので、スマホのシャッターを押してもらった。さあこれから長い樹林帯の縦走が待っているのだ。気を引き締めていこう。私は奥秩父の縦走は初めてだったが、山頂からの眺めも確かに素晴らしいが、奥秩父の魅力は深い原始の森のなかに細く伸びている縦走路を静かに歩くことにあるのではないだろうか。そのようなことを考えながら目印の赤いテープを探しながら歩いた。
原生林内の縦走路は不明瞭だった
山梨県と長野県の県境に縦走路は伸びていた。倒木で荒れていた場所を乗り越えて東梓2272mに着いた。東梓はアップダウンを続けていく縦走上の目印で、見晴らしがいいわけではなく、ナナカマドが赤朱色に色づき、シャクナゲが周りにあった。両門の頭2263mに出たときは驚いた。突然見晴らし抜群の場所に出たのだが、前は絶壁で深さは分からなかった。正面の富士山の眺めは素晴らしい。右奥を眺めると今朝出発した金峰山山頂の五丈岩が見えた。思えば遠くまで歩いてきたものだが、縦走路ですれ違った登山者は3人だった。
両門の頭から長かった縦走路を振り返った
13時30分に富士見2373mに着いた。富士見という名前がついているが、樹林帯のなかなので、ここから富士山は見えなかった。縦走路は細く続き、水師2396mという場所に着いたが、ここも見晴らしはなく、周りはシャクナゲがたくさんあった。ここまでやって来ると、いよいよ先が見えだし、千曲川源流分岐に着いたときは内心ほっとしたのだった。地図を再確認すると、ゆっくり歩いても甲武信ヶ岳を越せば山小屋までラスト1時間だった。
甲武信ヶ岳からの富士山の眺め
ついに甲武信ヶ岳山頂に着いた。山なみの彼方に朝一番で登った金峰山山頂が確認できた。あの場所から歩き始めて、やっと甲武信ヶ岳山頂に着いたのだった。実に長かったというのが実感だった。途中で足が上がらないような感覚に出会ったのも初めての経験だった。朝から晴れていたので、森の中は別として縦走路からはずっと富士山が見えたので楽しかった。
甲武信ヶ岳に着いた
長かった縦走が終わる。時刻が15時ということもあって甲武信ヶ岳の山頂には誰もいなかった。「日本百名山甲武信岳」という大きな標柱が石垣の舞台の中央に立っていた。石垣には1mほどの階段が造られていた。こういう形の標柱は珍しかった。山頂は風が強く、長居はできなかった。これから山小屋に向かうが20分で到着だ。
甲武信小屋に着いた
15時15分に甲武信小屋に到着した。受付を済ませると、金峯山小屋から歩いてきて、この時刻に着くのは速いですよ、と女将さんは言ってくれた。売店は自分でお金を籠に入れて、品物をとるセルフサービスだった。初めて体験したスタイルで、古きよき山小屋のイメージだろうか。500円でビールを買ったら缶は持ち帰ってくださいとのことだった。ナルホド。
甲武信小屋の内部
山小屋の夕ごはんは味のいいカレーだった。酒とウイスキーを飲みながら、兵庫県の西宮からきた元気なお母さんと話しながらのんびり食べた。山小屋の女将さんによると、甲武信小屋の住所は埼玉県秩父市甲武信ヶ岳東側とのことで、小屋の電気はソーラーと発電機を併用しており、お客が少ないとソーラーのみとのことだった。お年寄りの2人がNHKテレビを見たいと女将さんに言ったが、発電機を動かしていないのでテレビは見られないとのことだった。また、天然記念物になっているヤマネが6匹棲んでいるので、食べものを出しっぱなしにしないでください、とのことだった。私はツマミ類を出しておいたが、ヤマネが来た形跡はなかった。
2日目の金峯山小屋〜甲武信小屋までの登山データ
10月6日 快晴
素晴らしい日の出だった。小屋の女将さんから、日がだいぶ傾いたのでトイレの東側に行ってください、とアドバイスを受けた。アドバイスされたところは絶好の日の出ポジションだった。その場所には荒川源流の碑が立っており、その碑に日の出の太陽が反射して映った。太陽の左下に三角形の武甲山が見えた。
素晴らしい日の出だった
3日目は甲武信ヶ岳小屋から木賊山2469mを越え、埼玉県と山梨県の県境縦走路から離れ、尾渡尾根から徳ちゃん新道を歩き、山梨県の西沢渓谷まで下るのである。山小屋を6時に出た。木賊山の登りで後ろを振り返ると、三角形の甲武信ヶ岳が朝日に照らされていた。15分の登りで木賊山に着いた。山頂は樹林帯の中の平らな場所だった。ベンチが置かれていたので、セルフタイマーで写真を撮った。
木賊山への登りで甲武信ヶ岳が見えた
木賊山から戸渡尾根を1時間半ほど下ると、徳ちゃん新道と近松新道の分岐に出た。私は谷底を通る近松新道を避けて、尾根伝いに徳ちゃん新道を下りて西沢渓谷入口のバス停に向かった。バス停まで約2時間半の行程である。朝から出会った登山者はいなかった。静かな山道だった。シャクナゲの林をたびたび通った。5月6月の花の時季は素晴らしいアズマシャクナゲのピンクの花が歓迎してくれるだろう。
木賊山から続く戸渡尾根
戸渡尾根分岐を過ぎて両側の切れ落ちた岩尾根を下っていくのだが、いつまで続くこの岩尾根と思いながら注意深く下ると、やがて普通の登山道に出てほっとした。右下の方から渓流のせせらぎが耳に届いた。空は真っ青に晴れ上がっており、このような日に下山するのは惜しいが、3日間ともに快晴に恵まれ最高の山旅だった。
戸渡尾根からの富士山の眺め
やがて針葉樹の林から広葉樹の林へと移り、明るい林の中を下っていくことができた。登山道には落ち葉が積み重なり、その落ち葉をかき分けながら進んでいく。登山靴がたてるサクサクさわさわと落ち葉を踏みしめる音は心地よい。
色づく登山道
2人の若者とすれ違った。2人とも単独登山者で、最初に出会ったのは30代前半と思われる男性だった。2人目に出会ったのは女性で、20代と思われる小柄な人だった。2人とも元気な挨拶を残して登っていった。最近単独登山者が非常に多く感じられる。昨日泊まった甲武信小屋には5人の登山者がいたが、そのうち3人は単独登山者で、2人組はお年寄りだった。
甲武信ヶ岳の登山口
9時20分に徳ちゃん新道の甲武信ヶ岳登山口に下りた。登山口には西沢山荘が建っていたが、現在は使われていないようで、トイレの前に西沢渓谷の案内板があった。これからは林道歩きで西沢渓谷入口のバス停に向かう。林道をバス停の方に向かって5分ほど歩くと、近丸新道コースの登山口があった。明るい木漏れ日のなかをバスの出発時刻を気にしながら歩いた。
西沢渓谷通行禁止の表示
西沢渓谷入口のバス停の少し手前で、西沢渓谷の通行規制の看板が立てられていた。それによると滝見橋付近の仮設歩道の崩落により、三重の滝〜カワズ池は当面の間通行止となります。入山者は三重の滝で折り返してください、という表示と案内図があった。本来ならば一周約4時間で回れるハイキングコースだが、現在は通行規制がかかっていた。
お土産は元祖よもぎ餅
バスの出発時刻の20分前に西沢渓谷入口バス停に着いた。これで2泊3日の金峰山から甲武信ヶ岳への縦走登山は無事に終わったのである。バス停の隣はお土産屋だった。西沢渓谷が通行禁止になっているため観光客の姿はなく、売り子の親父さんは手持ちぶたさのようだった。近寄っていって、元祖よもぎ餅を5個買った。今朝作ったばかりなので美味しいよ、と言葉をサービスしてくれた。帰宅してから妻に渡すと、とても美味しいとの感想だった。
笛吹の湯は入場制限中だった
西沢渓谷からJR山梨市駅までバスで向かう途中に温泉『笛吹の湯』がある。下車して山旅の汗を流してから、1時間あとの次のバスに乗ることにした。笛吹の湯には飲食する場所がないので、昼食は山梨市駅に着いてから探すことにした。笛吹の湯は新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、入場者の数を8人に制限していた。JAFカードを示すと100円引きで入湯料は410円だった。
少しぬるめの湯で山旅の汗を流した
2つの内風呂と露天風呂があり、結構ぬるめの温泉なので、いつまでも入っていられそうになるが、次のバスに乗るために30分で出た。ビールの自動販売機がないので、自前のウイスキーのスキットルを開けてアクアヨーグルトを飲みながらバスが来るまで待った。気分はゆったりまったりだった。
食事処の歩成本店
山梨市駅前に着いたが食堂が見当たらない。観光案内所に行き、近くの食べ物屋を尋ねると、最初に案内されたレストランにはアルコールがなかった。私はビールが飲みたかったのでパスした。2番目に紹介されたところに行ってみた。ここが良かった。
馬のハツ(心臓)の刺し身と桜肉の煮込み
まずは生ビールで喉をウオーミングアップしたあと、山梨といえば馬肉である。馬のハツ(心臓)の刺し身に桜肉の煮込みを頼んだ。地酒には、庭のうぐいすと竹鶴を頼んだ。だされたツマミと地酒で笑みがこぼれるのが分かった。馬のハツの刺し身を食べたのは初めてだった。美味かった。地酒は私の舌には庭のうぐいすの方が合っていた。湯上がりの酒は酔いをグワ〜ンと増し、ほんわかな気分は最高だった。
3日目の甲武信小屋〜西沢渓谷までの登山データ
10月1日から山梨県でも新型コロナウイルスの感染防止対策としての蔓延防止等重点措置が解除されたため、飲食店での酒類の提供が再開された。良き山に登り、良き温泉に浸り、良き地酒を楽しむ、というトリプルプレーが可能となったのである。これに気心の知れた良き友が加われば更に嬉しいことである。