穂高岳縦走へ
上高地〜岳沢〜前穂高岳〜奥穂高岳〜涸沢〜上高地縦走
前穂高岳山頂(後景は奥穂高岳)
ミーハー・クライミング・クラブの98年夏山登山は、上高地から入って岳沢を遡り岳沢ヒュッテに1泊。翌日は前穂高岳に登り、吊り尾根を通って奥穂高岳山頂を踏んだ後、穂高岳山荘に1泊。更に涸沢岳から北穂高岳へ足を伸ばし北穂高山荘に1泊。翌朝は涸沢に降りたあと上高地に下山のコースを設定した。
今回の参加者は、ポパイ・吉原、ヌーボー・沼沢、今回初参加のランナー・坂本、ドラえもん1号・光永、二枚目・米山、若輩者・碓井、そして私の7人であった。いつもは新宿発の夜行バスを利用して登山口までいくのだが、今回はコース日程の関係で新宿朝発8時30分の上高地直通バスを利用した。
半月前から中部地震が頻発しており、登山道の状態は不明であったが予定通り山行を実行に移した。河童橋から梓川右岸を遡り遊歩道から左に分かれて岳沢沿いを一路岳沢ヒュッテに向けて歩き出す。空は抜けるような青空が広がっている。苔むすシラビソの樹林帯の中を暫く登ると明るいダケカンバの尾根へと出る。そこを登ること2時間30分で赤い屋根の岳沢ヒュッテに到着した。途中、地震の影響なのか登山道が崩れているところもあった。
ま、なにはともあれ夕陽が沈む景色の中でテラスに出ての乾杯である。パーティで山行に行く時の楽しみはなんといっても飲み会である。私たちの年1回の夏山山行は参加メンバーの職場も違っているので1年間のお互いの近況報告を交えて語り合う。辺りが夕闇に包まれるまでテラスでの飲み会は続いた。
岳沢ヒュッテで乾杯
さあ、前穂高岳へ向けて重太郎新道を登りだす。空は青空が広がっているのだが重太郎新道は前穂高岳の西面を登っていくために陽は射さない。西側には遠くに乗鞍岳が望め、眼下近くに焼岳が望める。登山道には地震で落ちてきた石が度々転がっている。昨晩も下から突き上げるドーン、ドーンという不気味な音が鳴っていたのを思い出す。今回の登山中に地震が再発しないことを祈っての登山である。
登るほどに登山道にも陽が射してくるようになり西穂高岳から間ノ岳、天狗ノ頭、畳岩ノ頭への稜線が綺麗に浮かび上がっている。紀美子平にザックを置き、昼食のみを持って山頂へ向かう。前穂高岳山頂からの眺めは絶景である。山頂は広い。足元からスッパリ切れ落ちた底に涸沢カールが望め、雪渓の白さと涸沢ヒュッテや涸沢小屋の赤い屋根にハイマツの緑が映える。前穂高岳から伸びる吊り尾根の先に奥穂高岳が連なり、涸沢槍から一旦落ちて北穂高岳が見える。その先に本物の槍ヶ岳が空に尖峰を突き上げている。
山頂でインスタントラーメンを作り、岳沢ヒュッテで作ってもらった弁当に舌鼓を打っていると空には次第に雲が湧き始め曇りだしてきた。天候は崩れるのだろうか。1時間ほど山頂で休んだあと紀美子平に戻り奥穂高岳へ向けて出発する。
登山道は整備されているので心配はないが、岩場のトラバースなので不注意にスリップすれば左側の谷底に一気に落ちていく。足元に注意しながら歩を進める。足元にはチシマギキョウの薄紫の花やトウヤクリンドウの薄黄色の花、あるいは純白のイワツメクサの可憐な花が風になびいている。
穂高岳山荘前
「あと30分」「あと30分」「あと30分」と何回か言ったあとで霧の中の奥穂高岳山頂に到着した。私は奥穂高岳に登るのは3度目だが前2回は快晴で360度の大パノラマであったが今回は全くの視界ゼロの状態であった。奥穂高岳は北岳に次いで日本の標高第3位の高峰であるから晴れている時の見晴らしは抜群である。ま、しかたない。さっさと降りることにしよう。
視界が定かでないので慎重に穂高岳山荘までの岩だらけの道を進む。特に山荘間近にある梯子の下りが急で危ない。足を踏み外したら一気に落ちてしまう。一緒に行ったメンバーに聞くと、やはり山荘に降りるところの梯子の部分でキモを冷したという。
朝の青空が一面に広がっていた大空は全く空の見えないガスの中へと変わってしまった。このままの状態だと明日は雨になるかもしれない。全く山の天気は変わりやすい。
チシマギキョウ
翌朝起きだすと外は小雨だった。涸沢岳から北穂高岳へ足を伸ばし北穂高山荘に1泊の予定は、昨日穂高岳山荘に到着した時に地震の影響によって涸沢岳から北穂高岳間の登山道が崩壊しており通過できないことが表示されていた。
朝食を済ませたあと、メンバーにコースをザイティングラートで直接涸沢カールに降り、宿を風呂のある横尾山荘に変更することを話した。みんな了承してくれ小雨の中で下山を開始した。
横尾山荘に到着すればいつものように宴会である。ここでなぜかアンパンマン・丸橋が大きな空ザックを背負って合流した。丸橋は膝を痛めているためにみんなと一緒の縦走は出来ないが、下に降りてからの宴会には参加できるというので上高地直通バスで上高地に入り、のんびりハイキングコースを横尾まで歩いてきたわけである。これで今回のメンバー8人全員が勢揃いしたわけである。
翌日は明神池からウェストン碑を回り、上高地温泉ホテルの露天風呂で汗を流し、梓川や霞沢岳、六百山を眺めながらビールで喉を潤わせながら、なんとか地震にもあわずに無事に上高地に帰ってきたことを喜ぶ。