紅葉の妙義山へ
中之嶽神社前駐車場からの妙義山の眺め
群馬で生活する95歳のお袋が、私が住む幕張で2週間ほど過ごしたいと言うので車で迎えにいった。その折に妙義山の紅葉が見たくなって中之嶽神社まで出かけた。12時に中之嶽神社前の駐車場に着いた。山頂ちかくの高い所はすでに紅葉は終わっており、神社のあたりが紅葉の盛りという感じを受けた。平日なのだが雲ひとつない好天に恵まれ、紅葉狩りの人たちが大勢いた。私は子どものころ妙義山を毎日仰ぎ見て育ったのだが、当時の妙義山の紅葉の盛りは11月3日の文化の日前後だった。祝日で山は多くの人で賑わっていたのをよく覚えているのだが、最近は温暖化の影響を受けて10月11月になっても気温が下がらず、紅葉の時期は半月ほど後ろに伸びている感じを受ける。
山菜の多いたぬきそばです
まずは腹ごしらえと思い、朱塗りの大鳥居をくぐって、参道にある土産屋の食事処に入った。メニューとして地元下仁田の名物の煮込みおでん、味噌おでん、刺身こんにゃくが大きく書かれていたが、私は“たぬきそば”を注文したのだった。「おまちどうさまでした」と店の親父さんが持ってきたのは、なんと山菜そばだった。私は「山菜そばではなく、たぬきそばを注文したのです」と対応すると「ちょっと待ってください」と言って厨房に戻って天かすを乗せ、「山菜の多いたぬきそばです」と言って私の前に持ってきた。食べてみると、お土産屋の食堂だけあって、蕎麦は伸びてぐったりしており蕎麦の味がしなかった。まぁ仕方がない。ここを選んだ私が間違ったのだ。
石門群登山道は大規模な落石により全面通行止
中之嶽神社には何度もお参りしているので、拝殿には向かわずに紅葉狩りに出かけた。神社の赤い大鳥居から400mほど下ったところに名勝石門群登山道の入り口があるが、2020年4月に起きた大規模な落石により、最も人気のある石門めぐりが全面的に通行止めにされていた。2年半前の落石だったが、次がいつ崩れ出すか分からないために、当面の間は通行禁止措置がとられているようだった。登山道の脇には野猿に食物を与えないでくださいという看板が立っていた。地元では猿が増えすぎて困っているのである。
さくらの里の入り口
紅葉を眺めながら「さくらの里」に向かった。春には約30種類・数千本という桜がピンクに染まり、素晴らしい景色が見られるのだが、今は晩秋なので葉も全て落ち、枝だけのひっそりとした感じを受けた。幹に苔の生えた桜の木がいたるところに育っており、相当の年月を感じさせた。今、花が見えるのは白く小さな寒桜で、もの寂しく咲いているだけであった。前方は空気が透き通っているために遥か彼方まで見渡せ、秩父方面の山なみがグラデーションとなって美しかった。
さくらの里の休憩所
さくらの里の園内を散策していると、今年の7月に書かれた「クマ出没注意」の看板があった。クマを園内で見かけたので、園内に入る時は熊鈴を持ち歩いてください、とのことだったが、今、九州以外はクマがいないところはないと言ったほうが正解で、常にクマは私たちの身近な山に棲んでいるということを自覚していかなければならないと思う。クマは私たちにとって隣の住人なのである。
色づく散策路
駐車場に戻ってくると群馬県警のボックスカーが3台停まっており、周りに13人の登山姿をした警官が見られた。ヘルメットを被っているのが半数で、残りは青色の帽子を被っており、山岳訓練をしているように感じた。翌日の新聞報道によると、冬山シーズン前に群馬県警山岳捜索救助隊と航空隊、群馬県防災航空隊の合同訓練を実施したとのことで、滑落した登山者をヘリコプターで発見し、地上の捜索救助隊が助け出し、防災ヘリで吊り上げて搬送する実地訓練だったとのことだった。備えあれば患いなしであり、普段からの準備が重要だと思った。なによりも登山者自身が遭難しないことが重要なのだということを、私自身も肝に銘じたのだった。
グラデーションが美しい秩父の山なみ
紅葉をひととおり眺めたので、次は温泉である。近くの妙義温泉の「もみじの湯」は休みだったので、車で30分の磯部温泉の「恵みの湯」に向かった。そこで高校の同級生の宮石と風呂の中で偶然出会ったのである。同じクラスで3年間を共にし、ラグビー部のチームメイトで花園の全国大会に出場した気の合う仲間だった。会うのは60歳の還暦で開いたクラス会以来だったので実に13年ぶりだった。びっくらぽん。めぐみの湯をナビで検索したのだが、勘違いで一度Uターンして到着が遅れた。その時間差で偶然にも出会ったのである。湯舟のなかから声をかけられてビックリ。まさかまさか、偶然というものは恐ろしいものである。忙しい彼だが風呂上がりに近況報告を30分ほど話し合った。実に懐かしかった。再会できて嬉しかった。