三頭山から秘湯:蛇の湯へ
緑いっぱいの明るい三頭山西峰山頂
40年ぶりに武蔵五日市駅に降り立つと、駅舎は奥多摩の田舎には不似合いの巨大な建物となり、その変貌ぶりに驚きました。駅では都立五日市高校の生徒たちの賑やかな登校風景が見られました。私は駅前からバスに乗り1時間20分の終点にある登山口へ向かいました。
登山口の都民の森から鞘口峠へ登り、若葉色の木漏れ日を受けながら、桃色のアカヤシオツツジが咲く尾根を歩きます。アカヤシオは綺麗なツツジだと改めて思います。急登の三頭山東峰には展望台があり、大岳山がはるかかなたに聳えたっています。さらに中央峰を超えて西峰に登ると真正面に富士山が残雪をかぶって綺麗な姿を現していました。空は徐々に春霞がかかったようにぼんやりしてきていましたが、富士山はいつみても素晴らしい姿だと感じます。
私が三頭山西峰に登った時は4人の登山者がおり、すぐに2人が下山していき、それと入れ替わるように2人、3人、1人、というように次々に登山者が山頂にやってきました。私は東側の岩に腰かけて持参した握り飯をほおばりながら富士山を見つめていました。
その日の登山コースは三頭山西峰から山梨県と東京都の境を残雪の富士山を右手に眺めつつ、笹尾根伝いに大沢山、槙寄山と歩いて桧原村の数馬に下山するというものでした。都民の森を離れると登山道に人影はありません。途中で出会ったのはトレイルランナーが1人とハイカーが2人だけでした。代わりにキツツキのドラミングの音やポポッ、ポポッというツツドリの鳴き声、オーシン、シャガシャガシャガというハルゼミの合唱が私を包み込みました。足元は落葉樹の落ち葉が重なり絨毯のようにふかふかした登山道を歩いていきました。
日本秘湯を守る会「数馬鉱泉、蛇の湯」たから荘の兜造り母屋
下山した檜原村数馬は知る人ぞ知る兜造りの古民家が現存する東京都の秘境です。そこに日本秘湯を守る会「数馬鉱泉 蛇の湯」があります。下山後は公設日帰り温泉の数馬温泉センターもあるのですが、やはり兜造りの蛇の湯に入りました。母屋は650年続く兜造りで、道路より1段下がった玄関が受付で入浴料の1000円を支払い、更に階段を2段下がったところが浴室で無色透明で少し温めの蛇の湯がありました。
窓からは清流南秋川のせせらぎが見下ろせ、対岸にある大きな栃の樹に咲く純白の花が眼に飛び込んできます。ツツドリが鼓を打ち、キツツキのドラミングの音も聞こえてきて、ゆったりした時間が流れていきました。一つ残念だったことは露天風呂がなかったことでした。露天風呂があったらもっと開放的になれたでしょう。