滝を見て、双子の山に登り、温泉に遊んだ馬頭刈尾根

 

馬頭刈尾根から眺めた富士山

 

 12月15日 木曜日 快晴

奥多摩三山の三頭山と大岳山から東に向かって北秋川、南秋川を挟んで3本の尾根が走っている。北側から馬頭刈尾根、浅間尾根、笹尾根である。先月、浅間尾根を歩いたときに大岳山から延びる馬頭刈尾根の末端に双子のような山が見えた。その山名を調べてみると鶴脚山926mと馬頭刈山884mであることが分かった。今回は天狗ノ滝や綾滝を眺め、馬頭刈尾根を歩いて鶴脚山と馬頭刈山に登り、下山後に瀬音の湯に入る計画を立てた。

 

駅のホームにいる列車と時計のある建物

中程度の精度で自動的に生成された説明

武蔵五日市駅前のバス乗り場

 

満員電車から秋川駅で高校生たちが吐き出されると、車内はがらんどうになり明るい陽の光が射し込んできた。南側に青空の下に東京サマーランドの観覧車が見えた。電車は7分後に終点の武蔵五日市駅に着いた。気温はー1℃だった。駅前のバス停に行くと、1番線の乗客は私ひとりだった。8時50分発の藤倉行バスに乗り込み、登山口の千足バス停で降りた。GPSをセットし千足川に沿って歩き出した。

 

岩の上にある滝

自動的に生成された説明

落差38mの天狗ノ滝

 

この冬最強の寒波が日本列島を覆い、日本海側に大雪を降らせていた。手袋をはめていないと、寒さで指先はジンジンと痺れた。林道を歩き出して10分で一般車両通行止めの標識があった。「千足川は飲料水として使用しているので、滝行などはご遠慮ください」という看板もあった。歩き出して25分で「回転場所につき駐車禁止」と書かれた林道の終点に着き、いよいよ山道に入っていった。天狗ノ滝コースと迂回コースの分岐点で天狗ノ滝コースを選ぶと、天狗ノ滝の手前で小天狗ノ滝が現れた。小さい滝だが立派な滝である。滝壺まで降りて写真を撮った。歩き始めて40分で落差38mの天狗ノ滝に着いた。岩場を滝壺まで降りた。さすがにこちらの滝は大きく、下から見上げると迫力があった。今は渇水期なので水量も少ないが、梅雨時期には見事な滝となるだろうと想像した。陽はまだ差し込んでいなかった。

 

岩の上にある滝

中程度の精度で自動的に生成された説明

綾滝と三郷不動明王

 

天狗ノ滝から急登すると杉林のなかで先ほどの迂回路と合流した。山道は「関東ふれあいの道」に指定されていて、道標も整備されて歩きやすい道となっていた。まもなく3番目の滝が現れた。綾滝である。水量は少なく細く静かな滝だった。手で水をすくってみると切れるように冷たかった。口をすすいでから飲み干した。冷たくてさっぱりした水だった。滝壺の右側に三郷不動明王が祀られていたが、祠のなかは純米酒が供えられていたものの空っぽだった。不動明王は里帰りしたのだろうか。

 

森の中の木

自動的に生成された説明

三角形の大山(左)と丹沢の山々

 

やがて杉林のなかの山道は広葉樹のなかへと入っていった。山道は急斜面の岩尾根に付けられたようになり、ひと汗もふた汗もかかせる急登に次ぐ急登だった。途中で幹が太く森のヌシのような素晴らしい木が現れた。今まで切られずに残された大木だった。こういう木に出会うと元気をもらえる。登っている岩尾根から振り返ると、木の間から尖がっている三角形の大山が見えた。その右側には丹沢山塊が連なって見えた。脚下には檜原村や五日市の町並みが見え、随分と上まで登ってきたと実感できた。

 

森の中の木

自動的に生成された説明

雑木林のなかの小屋ノ沢山969m山頂

 

馬頭刈尾根千足分岐まで登り着き、右折して馬頭刈山方面に向かった。上空からヘリコプターのバリバリ響くプロペラ音が落ちてきた。まもなくクマザサに覆われた小屋ノ沢山969mの山頂に着いた。北側に武蔵御岳山と山腹にある宿坊の白い壁が明るく見えた。南側は植林のため全く展望がなかった。

 

森の中に入っている

低い精度で自動的に生成された説明

「この先、道悪し」の看板

 

尾根道を進んでいくと「この先、道悪し」の看板が目に留まった。岩尾根を四つん這いで登った。危険個所には補助ロープがつけられていた。吐く息が白く見えるようになった。陽は射しているのだが標高を上げているので、気温は4℃を下回っているのだろう。

 

森の中に立っている男性

中程度の精度で自動的に生成された説明

鶴脚山916m山頂に着いた

 

尾根道の南側には三角形の大山、それに続く丹沢の峰々、大室山から富士山が一望のもとに見渡せた。茅倉分岐を過ぎるとツツジの木が目立つようになった。今は葉を落とし花芽も確認できなかったが、花が咲く若葉の頃に歩けば、花にかこまれて幸せな気持ちになれるだろう。後ろを振り返ると御前山と大岳山が見えた。まもなく鶴脚山916m山頂に着いた。周りには木が育っていたが、木の間から360度に渡って山々が見渡せた。プロテイン飲料を飲んで出発した。

 

木の枝に立っている男性

低い精度で自動的に生成された説明

馬頭刈山の平らな山頂に着いた

 

浅間尾根から眺めた鶴脚山と馬頭刈山は双子のように並んでいた。鶴脚山山頂からいったん降ってから馬頭刈山へ登りなおすので結構大変だった。山道には落ち葉が積もって凸凹状態が分からないので、捻挫に注意しながら歩いていくと、ひょっこり馬頭刈山884mの平らな山頂に着いた。木のベンチが3個置かれていた。展望は良くなかったが、木の間から富士山、御前山、大岳山が見えた。ゼリー飲料を飲んで出発した。

 

雪が降った山の景色

自動的に生成された説明

大山と丹沢の連なり

 

馬頭刈山山頂から少し降るとベンチがあり、南側に大山、丹沢の峰々が8つ連なって見えた。結婚前に神奈川県相模原市に住んでいたころのことだが、三角形の大山には3回登った。丹沢の山々も全て歩いた。20代から30代にかけてテントを担ぎながら尾瀬を殆ど歩きつくし、次に向かったのが大山や丹沢の山々だった。懐かしい感じがした。

 

森の中の木

自動的に生成された説明

久しぶりに出会った天然杉の巨木

 

突然、天然杉の巨木が現れた。現在、天然杉の巨木は屋久島と佐渡島に残るのみで、他は全て伐採されてしまった。私は屋久島や佐渡島で天然杉の巨木を目にしているが、今回の天然杉も久しぶりに出会った巨木だった。周りの植林された杉と比べてみると、天然杉の大きさが分かる。まもなく話し声が聞こえてきた。切り倒された杉林の陽だまりで、私より年上だと思われるご夫婦が湯を沸かして休憩していたのだった。挨拶をすると「今日、初めて人に出会いました」とにこやかに話しかけてきた。私も同じだった。尾根は歩く人もなく、実に静かなハイキングコースである。100m下ると杉林のなかに高明山の表示があった。

 

草, 菌, 屋外, 岩 が含まれている画像

自動的に生成された説明

大杉神社の石碑があった

 

更に降ると焼失した高明神社跡があり、礎石から考えると立派な奥宮が建っていたようだ。旧参道を下っていくと、「大杉神社」の石碑があり、朝鮮國人・金相濂書と書かれていた。石碑の前に「大きな老杉があったが、明治21年11月8日に消失した」と漢文で書かれた苔むした石柱が立っていた。山火事が起こり、天然杉の大杉が燃えたのだろう。

 

石の建物の様子

低い精度で自動的に生成された説明

高明神社里宮

 

軍道集落まで降りてくると、高明神社の里宮が建っていた。鳥居の前で帽子を脱ぎ、一礼して神社にお参りし、無事にハイキングが終わった報告をした。14時40分に軍道バス停に下山し、今回のハイキングが終了したのだった。2時間に1本のバス時刻表を確認すると、15分後がバス通過時刻だった。ラッキー。やってきたバスに乗って秋川渓谷・瀬音の湯に向かった。

 

建物, 屋外, 座る, 家 が含まれている画像

自動的に生成された説明

秋川渓谷・瀬音の湯

 

山旅の汗を流し、ビールで乾杯するために瀬音の湯に到着した。受付でJAF割引の900円で入浴券を購入し、入った温泉は肌がつるつる滑らかになる感じがした。内風呂は緩くていつまでも入っていられる感じだったので、外の露天風呂に移った。こちらは沸かした循環湯のため熱かったので、身体のなかからじわじわ暖かくなってきた。

 

テーブルの上に置かれたホットドッグと飲み物

自動的に生成された説明

生ビールとホットドッグで乾杯

 

30分ほど湯に浸かりレストランに行くと、和食レストランは既に営業を終了しており、手前のカフェだけが営業していた。生ビール500円とホットドッグ400円を頼むと、サービスでピーナッツがついてきた。尾根を歩いている時は殆ど水分を摂らなかったので、喉を通るビールが実に美味かった。

 

歩行者専用の秋川に架かる石舟橋

 

今回、分かったことだが、十里木バス停から車道を歩かずに、秋川渓谷に架かる歩行者専用の石舟橋を渡ると、徒歩7分で瀬音の湯まで行くことができるのだった。これからは武蔵五日市方面の山行の下山後には、山旅の疲れを癒し、汗を流すために数馬の湯か瀬音の湯に浸かってから帰宅したいと思った。

 

山の景色

自動的に生成された説明

先月、浅間尾根から眺めた双子の鶴脚山と馬頭刈山

 

 初冬の山は日没が早く、標高1000mといえどもアクシデント時には冷え込みが厳しいので、日帰りハイキングでもレインウェア、上下ダウン、レスキューシート、ヘッドランプ、エマージェンシーセット、非常食もザックに入れたが使うことはなかった。北側斜面では凍っていることも想定し、軽アイゼンも持参したが、こちらも使うことはなかった。山は素晴らしいが、同時に危険なものであることを自覚し、常にリスク軽減を考えて行動するものだと想う。

 

マップ

中程度の精度で自動的に生成された説明 グラフ, 折れ線グラフ

自動的に生成された説明

今回の登山活動データ

 

今回の山行は、先月歩いた浅間尾根に比べると、尾根まで登るのがきつい面はあるが、あまり人の歩かない静かな山旅ができる尾根だと思った。千足川に掛かる3つの滝を滝壺まで降りて見上げることができた。遠い昔に登った大山や丹沢の山々を眺めて、若かったころの山行を思い出した。青空のもとで雄大に裾野を広げる白雪の富士を眺めは最高だった。下山後は山旅の疲れと汗を流す温泉にゆったり入り、湯上りには生ビールでいっぱい、という満足満足の山旅だった。快晴に恵まれた絶好の登山日和だった。これだから山旅はやめられない。

 

戻る