素晴らしい富士の眺めの甲州高尾山

最高だった登山と温泉とワイン

 

富士見台からの富士山眺望

 

今回の山旅は、山梨県甲府盆地の東北部に位置する甲州高尾山に登り、下山後はぶどうの丘にある温泉で登山の汗を流し、登山口の勝沼はブドウの産地なので、試飲という形でワイン飲み放題を楽しむという嬉しい内容だった。

 

家を出発する1時間前の3時に起床した。配達された朝刊に目を通しながらスマホで天気予報を確認すると、勝沼の気温は2℃、朝から夕方まで晴れとなっていた。予定通り日帰り登山に出発することにした。今年の冬至は12月21日なので、今どきは日中時間が1年で1番短い時期となり、16時30分頃には日没となる。従って日帰り登山の下山時刻は15時頃が一応の目安となるのだった。

 

乗り換え駅の御茶ノ水では頬に当たる風が冷たくフードを被った。辺りはまだ真っ暗だ。2度目の乗り換えの八王子で、ようやく建物の形がおぼろげに見えるようになった。大月あたりでは車窓の景色も徐々に明るさを増し、山々の紅葉はそろそろ終わりをむかえるが、最後の姿とばかりに橙色に燃えていた。天気予報通りに空は晴れあがった。

 

人けのない早朝の勝沼ぶどう郷駅

 

今回の甲州高尾山登山の最寄り駅は勝沼ぶどう郷駅である。早朝の勝沼駅は無人駅となり、降りた乗客は私ひとりだった。駅前にタクシーが1台止まっていた。田舎町の早朝に果たしてタクシーを利用する客がいるのだろうか。運転手は暇を持て余しているようだった。ここから登山口までは2時間の歩きとなるが、タクシーを使えば15分の距離である。しかし、トレーニングのためには歩くのが一番である。空気は凛と冷え、霜があたり一面に降りていた。

 

大滝不動尊前宮にお参りし山旅の安全を願った

 

今回の登山コースは勝沼ぶどう郷駅から歩き出し、大滝不動尊奥宮登山口から甲州高尾山に登り、柏尾登山口に下山して勝沼ぶどう郷駅に戻るという周回コースである。駅前から甲州市の市街が見えた。すぐ近くにぶどうの丘”も見えた。大滝不動尊奥宮登山口に向かって歩き出すと、周りはブドウ畑だらけだった。途中にあった大滝不動尊前宮にお参りし、山旅の安全を願ったあと、本堂の左脇から山に入っていった。

 

有害鳥獣対策用柵が設置されていた

 

歩き始めてすぐのところに有害鳥獣対策用柵が設けられ、車両は通行止めになっていた。この柵をくぐったところで 私も念のためザックにクマ鈴をつけ、トレッキングポールを出した。この鈴によってイノシシやシカやクマに人間が歩いていることを知らせてくれるだろう。ま、気休めの意味もあるけれど。

 

青少年旅行村大滝山キャンプ場の中央管理棟

 

山道を登っていくと青少年旅行村大滝山キャンプ場があった。現在は利用されていないのだろう。勝沼町中央公民館と大滝山不動尊の連絡先電話番号が表示されてあった。中央管理棟の建物はずいぶん古いようで、あちこちに傷みが見え、カーテンは変色して垂れ下がり、建物自体が使用されていないような雰囲気である。ここから山道は傾斜を増していった。歩き始めて1時間がたち林道に出ると、ようやく陽のあたる高さまで登ってきた。それまで谷間の登山道は日陰だったため、手袋をはめていても指先が冷たく痛かった。このあたりでも山火事注意の掲示板が度々見受けられた。なくすな緑 なくそう山火事」こういう東山梨消防本部の立て看板もあった。

 

法面補修工事が行われていた

 

林道をしばらく歩くと土砂崩れのために法面を補修し景観色にする工事をしていた。法面工事を始めてみたが、モルタルを圧縮空気で噴出することによって崖に張ったネット上に吹きつけるものだった。吹きつける作業員はネットの上部の立木にロープをくくりつけ、それにぶら下がりながらの作業である。作業中に誤って転落すれば、ただではすまない危険作業だと思った。補助作業員が同じようにロープにぶら下がりながら作業を見守っていた。その作業員から約30mほど離れたところで、吹き付けるモルタルを作り、パイプで送り出す作業をしていた。現場作業員は全部で5人だった。今日初めて出会った人達だった。「ご苦労さんです」の挨拶をして脇を通り抜けた。

 

赤く塗られた大滝不動尊の奥宮

 

2時間弱の歩きで大滝不動尊奥宮の山門に着いた。仁王門に大きな赤い提灯が吊り下げられていた。仁王門の中は暗くてよく見えなかったが立派な仁王様だった。急な石段を登っていくと赤に塗られた不動尊本堂が現れ、本堂の後に大滝山の岩壁が迫っていた。本堂脇で休憩していると、「幕張は雨になったけど、そちらは大丈夫?」という妻からのメールが届いた。空を見上げると晴れてはいるのだが、 雲がずいぶん広がってきた。こちらも午後からは雨が降ってくるのだろうか。本堂の脇から本格的な登山道となった。

 

甲斐御嶽神社展望台から甲府盆地と取り囲む山々の展望が素晴らしかった

 

甲斐御嶽神社に到着したのは10時だった。この展望台から甲府盆地と取り囲む山々の展望が素晴らしかった。雪をかぶった南アルプス連峰がパノラマとして連なって見えた。一番右側の三角形に尖った山は甲斐駒ケ岳。駒ケ岳の左は千丈岳。そして雪の積もっているのは北岳と間ノ岳だろう。全て標高3000m級の峰々だ。

 

素晴らしい富士山の眺望

 

甲斐御嶽神社から再び林道の歩きとなり、富士見台に向かって進んでいくと、右上にピンクのテープ目印が見えた。おやっと思って林道を戻ると、甲州高尾山・富士見台への分岐指標を見落として通過していたのだ。危ない危ない。ちょっとした気の緩みで道迷いが発生することを肝に銘じなければならない。甲斐御嶽神社から登りだして30分で稜線に出た。ススキのいっぱい生い茂る明るい登山道だった。正面に素晴らしい富士山が眺められた。今日は最高の登山日和である。左右シンメトリーの均整の取れた富士山の姿は素晴らしいの一言だ。雪をかぶった稜線が光を受けてクッキリ見え、周りの山々の稜線も素晴らしい広がりを見せていた。少し登ると富士見台に着いた。

 

カヤトのなかの登山道

 

山頂と山頂を結ぶ稜線上に登山道がついており、南面は1997年に発生した山火事のために木が成長しておらず、素晴らしい富士山が見えた。左手には富士山の大展望、右手には甲府盆地の市街を見ながら、カヤトの登山道を歩くのは、とても清々しく気持ちよかった。太陽に照らされて富士山頂の雪が光っている。西側には南アルプス連山が見える。相変わらずどっしりとした甲斐駒ヶ岳。その左の千丈岳。更に北岳、間ノ岳と続き、左にずっと伸びたところに二つの雪山が見える。あれは赤石岳と聖岳だろう。山好きにはこたえられない素晴らしい景色だ。南アルプスの山々は北アルプスの山々と比べて、一つひとつの山が大きい。過去にそれらの峰々の山頂に全て登ったが、長く苦しい縦走の日々のことが昨日のように思い出された。

 

甲州高尾山中央峰1106mに着いた

 

甲州高尾山には3つの山頂がある。最初に東峰に着いた。この山頂は3つのうちで一番高いが山名表示も標高表示もない。見晴らしは抜群だったが、富士見台に比べて富士山の裾野が前山によって徐々に隠されてきていた。次に甲州高尾山の山名標柱が立つ中央峰に着いた。山頂からの富士山の展望は植林された檜に邪魔されてよくなかった。さらに進むと三角点が置かれている剣ヶ峰に着いた。ここで富士山の眺めも最後となり、柏尾登山口に向かって降りていくのに伴い、富士山は段々と見えなくなっていった。今回のコースで富士山の展望として一番良かったのは、名前の通り富士見台だった。

 

落ち葉が積もった登山道は滑落に注意だ

 

剣ヶ峰からの下りは結構急だった。秋山は木々の葉が落ちて見晴らしは良いのだが、登山道に落ち葉が積もっているので登山道が見えづらく、落ち葉を踏んでの滑落に注意しなければならない。滑らないように脚を踏ん張るため、無駄なところに力が入るようだ。今回の登山道で行き会った人は誰もいなかった。正午を過ぎていたので、このまま誰とも出会わずに下山口まで降りてしまうだろうと思った。

 

カラマツ林のなかの登山道は明るくて気持ちがいい

 

カラマツが植林された登山道を歩いた。葉が全て落ちたカラマツ林は明るくて歩きやすい。このようななだらかな登山道が続いてくれればいいのだが、希望通りには中々いかない。柏尾山からも急な登山道を下っていくと、私よりも年配と思われる登山者に初めて出会った。落ち葉がうずたかく積まれた登山道はただただ歩きにくく、ゆっくりゆっくりのペースでご夫妻は降っていた。

 

鳥居平・甲州シャトー勝沼に広がるブドウ畑

 

大善寺登山口に降りてくると、ここでも出入り口に有害鳥獣対策用柵が設置されていた。人々が生活する市街地に野生動物たちが山から下りてこないための柵だが、このような対策が全国各地で行われている。果たしてその効果はどの程度あるのだろうか。熊出没注意の看板をあとに勝沼ぶどう郷駅に向かってブドウ畑の中を歩いた。「鳥居平・甲州シャトー勝沼」という看板があり、ブドウ畑が一面に広がっていた。この景色を見ていると、甲府盆地というのは本当に周りを山々に囲まれた所だと改めて思った。勝沼ぶどう郷駅に到着し、6時間かかったが天候に恵まれて大成功の登山だった。第1ラウンドは終了し、これから駅前から見える“ぶどうの丘“に歩いて行き、温泉とワインを楽しむ第2ラウンドが始まるのだ。

 

ぶどうの丘にある天空の湯

 

 ぶどうの丘は勝沼ぶどう郷駅からブドウ畑の中を歩いて20分ほどだった。ぶどうの丘はホテル、温泉、ワインカーヴ、レストラン、土産物販売、希望の鐘、恋人の聖地展望台などの複合施設である。私はまず天空の湯に向かった。受付でコロナ対策用に手指の消毒を終えたあと、コロナ患者が確認された時の追跡用として、住所・名前・連絡先・体温の各項目を記入し、入浴料670円を払って2階の展望風呂に向かった。風呂は無色無臭でちょっと温めだった。入浴者は平日のこともあり3名だけだった。ジャグジーバスの泡で全身を包まれ、泡でもまれながらまったり気分となり、登山の汗を流したあとは、ビールをグイグイではなく一気にワインカーヴに向かった。

 

ワインカーヴの入り口で1520円を払って地下の試飲室へ

 

 ワインカーヴの入り口で1520円を払い、試飲容器のタートヴァンを受取り、地下の試飲室に入った。タートヴァンというものを私は知らなかった。ワインの試飲もワイングラスで飲むものだと思っていたが違ったのである。フランスでワインの利き酒をするときは、内側に円形の凸凹がある金属製の杯で行い、その名前がタートヴァンというものだった。盃の凸凹が光を反射させることによりワインの色彩が確認できるというものだ。タートヴァンはお土産として持ち帰ることができた。階段を下りた最初の部屋に皇太子時代の浩宮と雅子さんが試飲室を訪れた時の写真と使ったタートヴァンが飾られていた。それを横目に見て、いよいよワインの試飲である。ワインの樽テーブルが2列に並べられ、それぞれの樽テーブルの上に試飲用ワインが6〜7本並べられていた。飲みたいワインを自分で注いで飲み放題なのだ。試飲できるワインは約200種類あるとのことで、気に入ったワインは受付で購入できるのだった。

 

 

2020年・甲州市産新酒の試飲コーナー

 

 私は最初に一番奥の新酒コーナーに向かった。ボジョレーヌーボーならぬ甲州ヌーボーだった。ワインの新酒は深い味わいはないが、スッキリした飲み口が良いのだ。新酒コーナーでは次の10種類のワインを飲んでみた。

 

イケダワイナリー ロゼ 甘い /クラムボンボン ロゼ 甘い /ビンテージ シロ 辛い /アジロン 赤 甘い /クラムボンボン 赤 薄甘い /甲州 シロ 辛い /イケダワイナリー 赤 渋い /シャトー勝沼 赤 甘渋い /白百合 マスカット 赤 甘渋い /シャトー勝沼 ロゼ 甘い /という感じで、土産に買って帰ろうと思うワインは無かった。次は昨年以前のワインコーナーへ向かった。

 

 

2019年以前のワインコーナー

 

 2019年以前のワインコーナーへ向かって最初に飲んだのは、葡蘭酎でアルコール度数が25%のワイン焼酎だった。思わずむせてしまった。このコーナーでは次々に20種類のワインを試飲してみた。

 

葡蘭酎25 焼酎 効いた /勝沼の華 ロゼ 甘い /成田ワイナリー 勝沼遅摘み完熟 ロゼ 甘い 美味い /グラン蒼龍 ロゼ 甘い /フジッコワイナリー ロゼ 重たい /シャトー勝沼 プレミアム ロゼ 不味い /クラムボンボン 赤 甘い /ケアフィット 赤 むせた /錦城ワイン 赤 普通 /大和葡萄 樽 赤 微妙 /

 

妻へのお土産に「成田ワイナリーの勝沼遅摘み完熟ロゼ」を買った

 

ここで美味いと思った「成田ワイナリーの勝沼遅摘み完熟ロゼ」を妻へのお土産として買うことにした。1本1430円だった。試飲を始めてから20種類飲んだあたりで少し酔いが回って来たようだったが、試飲を更に続けた。私が試飲室に入った時は誰もいなかったが、徐々に人が増えて4、5人になっていた。

 

塩山アジロン 赤 深み /シャトー勝沼 まぼろしの葡萄 原茂アジロン 赤 微妙 /シャトー勝沼 アジロン 赤 薄い /まるき葡萄 ベリーA 赤 渋い深み /東夢 勝沼貴婦人 赤 薄い /大和十ニ原 赤 口に残る /駒園 タオ 赤 美味い /メルシャン山梨マスカットベリー 赤 /成田ワイン チヤンモリス 赤 美味い /ラホレットワインを飲もうとしたら空だった。ワインボトルがスタイリッシュのため試飲者の手が伸びるようだった。

 

試飲したワインは30種類だった

 

受付をした時にお姉さんから「今日の終了時刻の夜9時までは試飲室へは何度でも出入り自由です。酔ってきたなぁと思いましたら、外の空気を吸ってから試飲室に戻ってお楽しみください」と言われていたのだが、帰りの電車のこともあるので30種類飲んだところで止めることにした。幕張までの帰りは4時間近くの旅となったが、ワインの酔いでほんわか夢の中だった。今回の山旅は、第1ラウンドとしての登山が6時間、第2ラウンドとしての温泉・ワインが3時間、合わせて9時間の長丁場だったが、その時間を有意義に楽しむことができ、最高の山旅だった。新型コロナウイルス感染の予防については、よく食べて栄養をつけ、よく眠り、よく動いて体力と免疫力をつけ、密を避けるために平日に行動し、手洗い・うがい・マスク着用を心がけ、確実に実行していくことが大切だと思う。

 

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