ドンデン山から金北山への紅葉縦走登山

 

山の斜面に立っている男性

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金北山1172mの山頂に着いた

 

 10月29日 晴れ

 佐渡島の玄関口である両津港に到着すると、正面に聳えている山が最高峰である金北山1172mである。昔は両津から見て北に位置する山なので単純に「北山」と呼ばれていたが、佐渡から金が産出することが分かり、江戸幕府の天領となったあと、山の名前も「金北山」に変わっていったという。今回は大佐渡の中央に位置するドンデン山〜金北山までの約11、5kmを縦走する登山であった。

 

雲がかかった山

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ドンデン高原ロッジから遙か彼方に金北山山頂が見えた

 

7時30分に宿泊したドンデン高原ロッジをスタートする。遙か向こうに橙色の金北山が見えた。長い縦走が始まったのだった。スタートして1から5分ほどアスファルト道路を下っていくと、金北山縦走路入口に到着した。そこから紅葉の真っ最中の縦走路に入り、8時10分にアオネバ登山口からの登山道に合流する分岐に着いた。アオネバとはおかしな名前だが、このあたりは緑色泥岩に覆われており、緑色泥岩は脆くて柔らかく、雨が降るとねっとり滑るので、アオネバという呼び名が付いているとのことだった。分岐を直進しマトネ峰に向かうと、いよいよ本格的な登りになっていった。

 

草の上に立っている男性

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マトネ936mに着いた

 

9時6分にマトネ峰に着いた。別名を孫次郎山と呼ばれている。マトネという標柱はカタカナで書かれており、語源は分からないが、アイヌ語らしいとのことだった。標高は936mだった。明るい芝生の山頂からは右側に外海府の日本海が見え、海は静かで全くの凪のように見えた。今まで見晴らしのない広葉樹のなかを登ってきたので、山頂での解放感は最高だった。正面にはこれから向かう金北山が遥か遠くに見えた。一緒に歩いている仲間からも、ずいぶん遠いね、という声が漏れた。これからあそこまで縦走するのだ。

 

山の上にある数種類の木

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色づく縦走路の遙か奥に金北山の山頂が見えた

 

見晴らしのいいツンブリ峠に着いた。縦走路から見た金北山は、ずいぶん近くなってきたことを実感した。ススキが日に照らされて美しかった。10時のお茶休憩とした。一緒に今回のトレッキングに参加している幼なじみの栄子ちゃんが、栗きんとんを作ってきてくれて参加者に配った。栄子ちゃんは料理上手で、お店で売られている栗きんとんと違っており、参加者みんながビックリしたサプライズ・プレゼントだった。とっても美味しい栗きんとんだった。同時に差し入れてくれた熊谷名物のコショウ煎餅をかじりながら、ツアー添乗員が作ってきたシナモンの香りのする温かい紅茶を飲んだ。

 

山の間を流れる川

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風の通り道だったザレ場

 

縦走路からは左右に海が眺められ、背の低い明るい広葉樹から草の生い茂る場所やザレ場もたびたび出てくるようになり、谷底への滑落を注意しながら進んだ。木の生えていない場所は西側の外海府からの風の通り道になっているように感じられ、時折り強い風を感じるようになった。休憩のたびにポットに入れてきたコンソメスープを口に含んで水分補給をした。温かいものが身体に入ると、エネルギーが湧くのを感じた。

 

草, 屋外, 木, 立つ が含まれている画像

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2体の役行者の石像

 

天狗の休場と呼ばれている草地で、宿泊したドンデン高原ロッジで作ってもらったおにぎり弁当をひろげた。鮭を混ぜ込んだものと昆布を混ぜ込んだものに鶏の唐揚げとお新香が付いていた。私は日帰り登山やバードウオッチングで度々野外での食事をするが、周りの景色を眺め、風や気温や香りを感じるなかでの食事は、身体の5感に訴えるものがあり、室内での食事とは全く違うことを実感している。お腹がすいていたので、おにぎりはとても美味かった。金北山が更に近くになったのを感じた。30分ほど休憩したあと縦走を再開すると、役行者の石像に出会った。役行者は日本独自の山岳信仰である修験道の開祖である。修験道は明治維新後の神仏分離と修験道の禁止によって急速に廃れていったが、金北山も修行の場として登られていたのであろう。

 

川と山の景色

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色づくアヤメ池

 

鏡池、アヤメ池を通過したあとに、今回の金北山縦走路で一番の急登が待っていた。登山道脇に垂れ下がっていた熟したヤマブドウを口に含み、甘酸っぱい味が口いっぱいに広がるのを感じながら一歩一歩登っていくと、13時50分に金北山1172mの山頂に着いた。ドンデン高原ロッジをスタートしてから6時間20分後だった。山頂には金北山神社が祀られており、山頂からの景色は遮るものもなく素晴らしいものだった。右側に真野湾が静かな表情で広がり、海面に射す太陽で黄金色に輝いていた。左側には真っ青な両津湾と加茂湖が見えた。小佐渡全体が見渡たせ、大佐渡との間には国中平野と呼ばれている田園風景が広がっていた。国中平野には佐渡島を代表するトキが棲んでおり、明日は国中平野でトキを探すのである。

 

雲がかかった山

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真野湾と航空自衛隊佐渡分屯基地のガメラレーダー

 

佐渡島は国境の島として航空自衛隊佐渡分屯基地のレーダーが置かれている。以前のレーダーは金北山山頂に設置されていたのだが、現在はひとつ南側の山頂に新しく建設されていた。使用済みの昔の基地は金北山神社の風よけのために撤去されずに残されていた。冬に吹く佐渡島の烈風は凄まじいもので、山頂の石の鳥居は左右の柱が残っているだけで、横桁が吹き飛ばされていたし、記念石碑も後ろに傾いていた。新しく設置された自衛隊の白く巨大なガメラレーダーが大きく見えていた。

 

山の景色

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白雲台下山口から振り返った金北山山頂

 

山頂で休憩したあと集合記念写真を撮って下山口の白雲台に向かって下りだした。ここからの道は防衛省管理道路を歩くことになったが、道幅の広い林道を歩く感覚だった。この道路を歩く場合、以前は佐渡分屯基地への通行申請の提出が必要だったが、現在は佐渡トレッキング協議会への登山届けの提出ですむように簡略化されている。下山途中で後ろを振り返ると、金北山神社と三角形の紅葉した山頂が見えた。山頂は日光に照らされ、黄色橙色が鮮やかな色彩を見せていた。道路の周りのブナの木々の黄葉が素晴らしかった。15時30分に白雲台に到着し、約8時間のドンデン山〜金北山の縦走登山は終わったのだった。今回は絶好の登山日和に恵まれ、紅葉の縦走路を歩くことができ、実に充実した山旅だった。

 

マップ

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ドンデン山〜金北山の縦走登山データ

 

 今回の佐渡島の山旅について一番気にしていたのは天候だった。週間天気予報では雨だったが、日程が近づくにつれて良い方に変わっていった。実際、縦走登山がスタートした時には小雨がパラついていたのでザックカバーをして歩き出したが、その後すぐに青空が広がりだし、白雲台に下山するまで雨具の心配はいらなかった。今回は10月だったために、花の百名山に挙げられている金北山の可憐な花々を見ることができなかったが、ユキワリソウやイワカガミの葉が縦走路脇にビッシリと生えており、5月から6月の花の季節には見事な花園が広がっているだろうことが容易に想像できた。再度、佐渡島を訪れるときは秋の紅葉だけでなく、春の花の季節にも歩きたい縦走路だった。

 

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