汗びっしょりの川苔山登山

 

川苔山1364m山頂に着いた

 

奥多摩の山のなかで人気の高い川苔山に出かけた。当初の予定は谷川岳を3泊4日で縦走することだったが、出発前夜に谷川岳の週間天気予報を確認すると、登山初日は快晴だが、翌日から3日連続で雨の予報が出ていた。雨中の登山はしたくないので、予定を変更して奥多摩にある川山登山にした。川苔山は以前から日帰り登山の候補に挙げており、下調べが済んでいた。登山コースはJR奥多摩駅からバスで川乗橋に向かい、下車したあとは暫く林道を歩き、細倉橋登山口から山道に入っていく。川苔渓谷を遡って百尋の滝を見たあと、急登を川苔山山頂まで登り、山頂から折り重なる奥多摩や奥秩父の山々を眺め、出来れば富士山も見たい。山頂からの展望を十分堪能したあと、JR鳩ノ巣駅へ下山するもので、予定時間は6時間だった。

 

川乗橋登山口で登山準備をする人たち

 

JR奥多摩駅には8時3分に着いた。駅前から日原鍾乳洞行きのバスに乗った。バスは8時10分に出発したが、バス内は満席で立っている人も多かった。川苔山登山口がある川乗橋バス停で21人の登山者が降りた。私は久しぶりに大勢の登山者に出会った。トレッキングポールとクマ鈴を準備し、GPS機能を確認出来るヤマップの登山地図をセットし、8時30分に歩きだした。川苔山という名前は、渓流で川海苔が採れるので、付いた名前だという。

 

星形のイワタバコの薄紫色の花が咲いていた

 

川苔林道のゲート脇から歩き出した21人の最後が私ということになった。人気の山だけあって、いつもと違って大勢の人が登っているが、他の登山者との距離を取りながら、静かな山旅をしたいと思った。登山道脇に気温測定用の温度計が下がっていた。そのデジタル表示をみると24.1℃を示していた。岩の割れ間から滲み出てくる水によって濡れている岩陰に星形をしたイワタバコの薄紫色の花が咲いていた

 

太く立派な毒蛇のヤマガカシがいた

 

登山道脇に咲くヤマユリを撮影しようと近づくと、今まで見たこともないような太くて長く、立派な毒蛇のヤマカガシがいた。長さはゆうに1mを超えており 、とにかく胴体が太くがっしりしたヤマガカシだった。草むらに入り込むのをストックの先で引きずり出して写真を撮った。子どものころからヤマガカシは何度も見ているが、今まで見たなかで最大だった。大きい毒蛇にびっくらぽん。

 

川苔谷に伸びる登山道

 

9時15分に細倉橋登山口に着き、林道から離れて山道に入っていった。川苔川に沿った登山道は、何回か木橋で川を渡り返しながら、谷の奥深くまで伸びていた。登山道は流れよりも高く離れている場所もあり、滑落に注意しながら歩を進めていった。

 

涼しかった百尋の滝

 

登山道から100mほど離れているが「百尋の滝」に寄ってみた。一尋は約1.5mだから百尋は150mだが、下から見上げた滝は30mぐらいだろう。昔の人は大きく立派な滝ということで、「百尋の滝」と名付けたのだろう。滝壷近くによると、飛沫がかかり涼しかった。この滝でバス停から歩き初めて最初の休憩を取った。先客が2名いた。5分ほど休憩して再出発をすると、川苔山へ向けて急登が待っていた。

 

登山道には「滑落注意」の看板が多数あった

 

歩いた登山道には滑落注意の看板が至る所に設置されていた。確かに登山道の片側は急速に落ちている崖の連続である。気を抜いて落ちたら助からないだろう。自分の不注意によって、山岳救助隊の手を煩わせてはならない。たとえ低山であっても的確に登るということである。滑落しないように慎重に一歩一歩を進めていった。汗は被っている帽子の鍔からしたたり落ちているが、気持ちのいい爽やかな風が吹いていた。

 

苔むした石積みの砂防ダム

 

 峠の茶屋跡に向かって登っていくと、4差路になっている茶屋跡に着いた。太陽の光が降り注ぐ広場には休憩用のベンチが置かれていた。ここまで登ってくる途中で幅が1.5mもある立派な石積みの砂防ダムが何箇所も築かれていた。苔むした石垣もあった。私が歩いた道は、今は登山者だけが歩く忘れられた道となっているが、昔は沢山の方が歩いた道なのだろう。その旅人たちが峠まで登り、一休みしたのが今は消えてしまった茶屋と思われた。

 

川苔山1363m山頂に着いた

 

茶屋跡から10分歩くと川苔山山頂に着いた。川乗橋バス停から歩き出して3時間の道のりだった。出発した時は最後の21番目として歩き出したが、途中で休憩している人たちを抜いてきたので、山頂に着いたのは最初だった。山頂にはJR古里駅から登ってきたという75歳の単独男性登山者が一人いただけだった。挨拶をして、山頂からぐるりと周りを見渡したが富士山の姿がなかった。度々川苔山に登っているという先客の登山者に富士山の方向を確かめると、あちらだけど今日は雲の中だね、と言って座っているベンチの後ろ側を指した。

 

大菩薩嶺や雲取山など奥秩父の山が望めた

 

教えられた富士山の方角を確認すると、木の上に大きく雲が張り出しており、富士山の姿は見えなかった。残念だったが、夏のシーズンは早朝でないと雲が湧きだし、富士山には会えないな。私の次に登ってきた男性にお願いして、川苔山山頂到着の記念写真のシャッターを押してもらった。西側は開けており、奥多摩、大菩薩嶺、雲取山などの山々が重なり合って眺められた。

 

明るい広葉樹のなかを下山した

 

山頂で男性2人と話をしながら、持ってきた大福餅を食べた。30分たったので鳩ノ巣駅に向けて下山を開始した。明るい広葉樹の中を暫く下っていくと、植林されたスギ林の中に入っていった。スギ林を歩いていると、ヒグラシの物悲しいカナカナカナ、カナカナカナの大合唱が聞こえた。

 

大根ノ山ノ神の祠があった

 

13時55分に大根ノ山ノ神の分岐まで降りた。山頂からは長い下りだった。その分岐に2人の若い女性登山者が和やかに休憩していた。挨拶を交わして、再び杉林の中の岩がゴロゴロする登山道を下っていった。残り30分で鳩ノ巣駅に到着だった。

 

鳩の巣釜めし

 

JR鳩ノ巣駅に無事下山し、釜めしが有名な「鳩の巣」食堂に向かった。釜めし定食と冷たいビールが飲みたかった。ところが入り口に、「東京都の緊急事態宣言発令により、酒類の提供は停止しています」、という張り紙があった。ガックリ。今年最高の気温に達した暑い中を、汗びっしょりで下山してきて、静かにビールも飲めないのか!バカヤロウー!という感情が湧きあがってきた。新型コロナウイルス対策での飲食店や居酒屋での飲酒禁止は、そろそろ考え直したほうがいいと思う。飲食店や居酒屋の経営も厳しいし、ひとりで静かに飲む酒も禁止されてはたまらないよ。

 

登山終了の乾杯は缶ビールと柿ピー

 

この暑さの中で、ビールを飲まずしてすませるか! 駅前の雑貨屋に入って缶ビール2本、サワー、柿ピーを買った。鄙びた小さな雑貨屋のおばさんは愛想が良かった。10円サービスしてくれたおばさんにお礼を言って駅前に戻り、木陰で1時間に1本の電車が来るまでビールで乾杯だった。ビールを飲んでいると、突然頭上の電線に留まったガビチョウが、乾杯の歌を美しい鳴き声で歌いだした。私は外来種が野生化したガビチョウを見たのは初めてだったが、思っていたよりは大型の鳥だった。食堂でビールは飲めなかったが、ま、こういう日もあるさ。(^o^)

 

川苔山登山活動データ

 

 今回の川苔山登山は前夜の天気予報の最終確認によって、谷川岳登山から川苔山登山へと変更したものだった。谷川岳登山の準備を済ませてあったので、そのザックの中から日帰り登山用のザックに必要品を移して、始発の電車に乗って出かけたのだった。いつもは山中では2人〜3人しか登山者に出会わないのだが、今回は久しぶりに多くの人と出会った。登山の日は今年の最高気温が日本各地で計測された日で、山に登っていても汗びっしょりになった。下山後に冷えたビールを楽しみながら、地元の料理に舌鼓を打てなかったのは残念なことだった。

 

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