鍾馗蘭に初めて出会った上高地
麗しき 幻の花 鍾馗蘭
6月15日、梅雨時季の上高地を訪れると観光客も少なく静かな時を過ごすことができました。今回の目的は、明神池畔の嘉門次小屋を訪れ、蕗味噌と岩魚の塩焼きを肴に一献傾けることでした。
幕張の自宅を出たときは小雨が降っており、傘を差しながら駅に向かったのですが、集合場所の新宿の高層ビル街に着いたときは歩道も濡れておらず曇り空でした。日帰り旅行のバスは満席で、隣席に座った男性は出かけてくる前にネットで上高地の天気を確認すると晴れていたと教えてくれました。期待が持てるハイキングとなる予感がしました。
バスの中で隣席の方が自分で撮影した上高地の風景や花の写真ファイルを2冊持っていたので見せてもらいました。その中に桃色に咲く幻の花と言われている鍾馗蘭がありました。どこで撮影したものなのか尋ねましたが、言葉を濁していました。
上高地バスターミナルに到着したのは11時45分でした。帰りのバスの出発は14時40分ですから、3時間弱の自由散策です。早速、明神に向かって歩き出しました。河童橋周辺は相変わらず中国語が飛び交っています。
小梨平のキャンプ場には大きな緑色のテントを設営し、「上高地は世界の交差点」「穂高を描いて57年」の看板を出し、主のような顔をした画家がテーブル越しに来客者と話し込んでいる脇を歩いていくと、間もなく足元に咲く桃色の花が眼に飛び込んできました。一瞬、エッ!?と思いましたが、その花がバスの中で見た幻の花である鍾馗蘭であることを直感しました。すぐにカメラを取り出し撮影しました。こんなにも早く鍾馗蘭に出会えるとは、なんとラッキーなことなのか、心の中で微笑んでいる自分を感じました。
バスターミナルから明神までは60分とされていますが、私の場合は写真を撮りながらも45分で歩きます。途中の2か所で鍾馗蘭に出会い写真を撮りました。鍾馗蘭の花期が1週間と短いために、出会うのが難しい幻の花と言われているようですが、私は登山道に脇に咲く花に普通に出会うことができました。
爆ぜる音に 香棚引く 囲炉裏端
梓川に架かる明神橋を渡って嘉門次小屋に到着し、目的の岩魚の塩焼きと2合の燗酒を頼みました。お客は3人連れの女性客が1組、単独の女性客、それに夫婦連れが1組とお客は5人とすいていました。囲炉裏端では従業員が岩魚を焼くいつもの光景が見られました。注文して間もなく突き出しの蕗味噌と熱燗が届きました。猪口を傾けている間に塩焼きの岩魚も届き、至福の胃時間が過ぎていきました。酒を味わいながら余興で句をひねってみました。
・麗しき 幻の花 鍾馗蘭
・猛々し 巌峰険し 青き明神
・爆ぜる音に 香棚引く 囲炉裏端
・緑射し 蕗味噌肴に 運ぶ猪口
・新緑に 啼く不如帰 特許許可局
今回の上高地日帰りバス旅行では、明神への行き帰りで幻の花と言われている鍾馗蘭に初めて出会い、レンゲツツジの朱色の花が咲き清流を集めて流れる岳沢湿原を歩いていると、南からやってきた不如帰の啼き声が青葉の中から聞こえてきました。萌えるような若葉の季節とは違い、青さが増す青葉の季節に訪れる上高地も中々いいものです。
緑射し 蕗味噌肴に 運ぶ猪口
猛々し 巌峰険し 青き明神
新緑に 啼く不如帰 特許許可局