上高地へ去りゆく秋を訪ねて
赤く色づく真弓 黄色に色づく落葉松
去りゆく秋を訪ねて今年3度目の上高地へ紅葉狩り散策に出かけた。今回もクラブツーリズムの日帰りバス旅行の中から私のスケジュールと照らし合わせて空いている日から上野発を選んだ。上野駅隣のバス駐車場の出発が7時なので幕張の自宅は5時20分に出た。自宅を出る時に明るくなり始めていた空は曇りだった。首都高速道路から中央高速道路に入っても空は曇り空であったが、バスの運転手が上高地現地と連絡をとった結果は快晴との車内放送に乗客から拍手が沸き起こった。その話の通り諏訪パーキングを過ぎるころからようやく青空が拡がりだした。
私は当初、今回のバス旅行は終点の上高地バスターミナルで下車し、明神池畔の嘉門次小屋まで足を延ばし、岩魚の塩焼きを肴に熱燗を一杯やり、お土産に徳利を買ってこようと考えていたが、車内案内で上高地辺りでも既に紅葉の時期は過ぎていると聞いたので計画を変更し、大正池で下車して自然研究路を散策したあと上高地温泉ホテルの露天風呂に入ってビールで喉を潤すことにしたのであった。
大正池ホテル前で下車し、池まで降りて見上げた穂高連峰上空は快晴だったが、すっきりと澄んだ青空ではなく、薄く霞みがかかったように感じられた。池にはふたつがいのマガモの夫婦がゆったりと泳いでいた。池畔は平日だったがたくさんの観光客で賑わっていた。自然研究路をゆっくり歩んで行くと白樺の黄葉は既に落ち白い肌が剥きだしになっていた。時おり黄色い落葉松の葉がパラパラと落ちてくる。足元に所々ある水たまりには散った葉が沢山浮かんでいた。紅葉時期は既に過ぎたが、去りゆく秋の最後を彩る落葉松の黄葉が六百山を後景に見事だった。
上高地温泉ホテルの露天風呂に浸かり、見上げた空に黄色に輝くはずの桂の葉も既に散っていたが、湯上がりに梓川を渡ってくる風を受けながら飲むビールは最高だった。上高地温泉ホテルのパンフレットには自家源泉かけ流しの露天風呂として、焼岳側に「焼の湯」、穂高連峰側に「梓の湯」があり、男女入れ替えで利用できると書かれているが、私が入るのは「焼の湯」側が多い。入浴時刻の関係と思われるが、ま・それでも3種類ある源泉は全て体験できるので満足しているが、「梓の湯」側にも入ってみたいと思っている。
上高地温泉ホテルの露天風呂「焼の湯」
入浴後、ホテルロビーのギャラリーで槍・穂高・上高地を描く『千葉
潔 展』が9月29日〜10月26日間で行われていたのでホテルの係員にことわって鑑賞した。約40点ほどの作品が展示されていたが、作品にはそれぞれ値段が付いており、ホテルの係員に連絡すれば買い取ることができる展示即売会の形をとっており、既に売約済みの絵には赤丸シールが貼ってあった。一番安いのが葉書大の水彩画スケッチで5千円だった。逆に一番高いのは80万円の油彩画で未だ売れていなかった。私が良いなぁと思った絵は「槍ヶ岳を望む(奥穂高岳より)」というもので、水彩画で描かれた大きさはF4サイズで5万円だった。既に売却済みの赤丸シールが貼られていた。
湯上りに六百山と紅葉を眺めながらホテルのベンチでビールを飲んでいると、70歳位の御夫婦がまっすぐ私に向かって来て、「トイレはどこですか?」と訊ねてきた。私は一瞬、ホテル内のトイレを案内しようと思ったが、すぐに直進150mほどのところにあるウェストンレリーフ隣の公衆トイレを案内した。更に「トイレは有料ですか?」と訊ねてきたので、「ただです」と答えると、御夫婦は礼を言って立ち去った。沢山いる観光客の中で、なぜ私に質問してきたのかは不明だが、のんびりビールなどを余裕で味わっていたからかな、とも思った。河童橋は騒々しい中国人観光客で鈴なりだったが、川畔で静かに微笑む真弓の赤い実が印象的で、地酒を飲みながらのとろろ玉子蕎麦も美味しかった。