春まだ浅い上高地

 

河童橋から残雪の穂高連峰を望む

 

今年も、落葉松、白樺、化粧柳の芽吹く早春の上高地に出かけました。今回の目的は、蕗の薹の採取、露天風呂への入浴、残雪の穂高連峰を望む、の3つでした。台風6号が前日に太平洋側を通過した関係で上野駅駐車場を出発する時は雲ひとつない快晴でした。中央高速道路の双葉SAでトイレ休憩した時も正面に八ヶ岳連峰の編笠岳、赤岳が新緑の中で残雪が美しく映え、左側には南アルプス連峰が、後ろには富士山が聳えていました。平日のためバス内は中高年齢者が多く30人の乗客でした。上高地の手前の沢渡の気温は15℃。この辺りから雲が空を覆うようになり、上高地の入り口である釜トンネルでは気温は更にさがって11℃。大正池ホテルで下車する頃には穂高連峰は雲に隠れてしまいました。しかし、天候は回復していくはずなので山頂部を覆っている雲は徐々に飛び去るのではないかと予想しました。

 

大正池ホテル前で下車し自然探究路を歩きだしましたが、例年だと残雪の上を歩くのですが今年は全く雪がありませんでした。昨年冬からの降雪量が少なかったのか、あるいは4月に雨が度々降ったので雪が消えたのかは不明ですが歩きやすい探究路でした。例年、1回目の上高地散策時には蕗の薹を採取し帰宅後に蕗味噌を作り晩酌のツマミに楽しんでいますが、今回は探究路わきの林に踏み込んでも全く蕗の薹は見当たらず既にその季節は終わっており、足元には可憐なエンレイソウやニリンソウが咲いていました。

 

雪が消えて間もない茶色の湿原を前に周りから聞こえてくる野鳥の囀りに耳を傾け、田代池では霞沢岳の稜線を見上げながらの探究路探索です。約1時間の歩道歩きで上高地温泉ホテルに到着です。ホテルのロビーで山岳画家の作品展を無料で開催していたので、ホテルマンに挨拶しロビーに展示されていた40点ほどの作品を見せてもらいました。展示されていた作品の中で私が最も注目したのは、夜明けの槍ヶ岳を描いた1枚でした。雪を纏い天空に屹立する気高さと厳しさが表れている作品でした。私は昨年から水墨画を勉強していますが、彩色画は絵の具で岩の質を表現できるのに比べ、水墨画は墨の濃淡で岩の質を表現しなければならず、その難しさを感じています。

 

静かに微笑むエンレイソウ

 

山岳画家作品展を鑑賞したあとはホテルの露天風呂「焼の湯」に入りました。1時間近くのんびりと温泉を楽しみましたが、私の他に入浴してくるお客さんはいませんでした。5月の連休が過ぎた今の季節が観光客の喧騒から逃れて静かな上高地に戻る時なので快適なひと時が過ごせます。露天風呂に入ることは今回の目的のひとつでした。湯上りのあとはホテル前のベンチに座り川面を渡る風を受けながら飲むビールは最高です。雲に覆われていた空も徐々に雲が切れ太陽が顔を出し、急速に気温も上がり青空が拡がって行きました。新緑の中で明神岳、前穂高岳、奥穂高岳、西穂高岳と連なる穂高連峰の稜線。梓川を挟んで対峙する六百山、霞沢岳の稜線が青空のもとで屹立していました。かつて歩いた稜線ですがほろ酔い加減で見上げるのもいいものです。

 

 バス停の集合時刻に合わせて早めにホテルを出発し梓川の河原に降りました。例年だと砂地の場所に蕗の薹があるので、今年はどうかな、と思ったのですが次期は少し過ぎていたものの沢山の蕗の薹が化粧柳の根元にありました。ナイフで一つひとつ切り取りスーパーの袋に入れました。これで今回の上高地散策の目的の2つ目が達成できました。

 

河童橋を渡る頃には雲に覆われていた穂高連峰の雄姿も姿を現し、残雪の穂高連峰を仰ぎ見ることができ、今回目的とした3つ目も達成できました。これで目的の全てが達成でき満足できました。おまけに帰りの高速道路も空いており30分近く早めに上野に戻ってきました。バスの中では2人分の座席を1人で占有でき、飲んだ日本酒も美味く、満足満足の上高地散策でした。妻へのお土産には、「社の鈴」という餡入りお菓子を買いました。来月、再度上高地を訪れて明神池方面を散策しようと予定しています。