春の香りいっぱいの蕗の薹

 

004-

若草色に芽吹いた蕗の薹

 

中央高速道の松本インターを降りて間もなくバス運転手の交替があった。私は長年上高地行きバスに乗車しているが初めての体験であった。添乗員の説明によると、長距離バス運転手の長時間・長距離運転に伴う過労運転が重大事故を引き起こしているため法令改正がなされた対応とのことだった。利用者にとってもバス運転手にとっても歓迎する法改正だと思う。

 

インターを降りたバスは158号線を上高地に向かって走る。松本平に広がるリンゴ畑、桃畑、梨畑にはピンクや白の花が満開となっている。やがてバスは島々の町を通過し風穴の里ドライブインでトイレ休憩となった。ここまで標高が上がってくるとソメイヨシノは散ってしまったがヤマザクラは満開の時季を迎えていた。山桜は標高が上がるに従って多くなり電光掲示板は14℃の気温を表示していた。

 

沢渡温泉を過ぎたあたりで周りの山の緑はすっかり消え丸坊主の木々の景色と変わったが、木の根元に拡がる山吹の黄色の花が見事だ。イノシシやシカの獣害を避けるための金網フェンスが延々と延びているのが見える。高齢化で山に入る人の減少と狩猟をする人の減少がイノシシやシカの増加となり獣害が増加しているのが度々マスコミで報道されているが特効薬はないだろう。

 私は大正池でバスを降りた。大正池も随分小さくなったのを実感する。二人の子どもがまだ小学生の頃に家族で上高地にやってきたことがあり、大正池で穂高連峰をバックに写した記念写真が自宅リビングに貼ってあるが、その頃と比べると池の面積は半分くらいになってしまったのではないかと思う。池になかに立っていた立ち枯れの木々も殆ど姿を消した。原因は上流からの土砂の流入のための自然現象なので仕方のないことだ。

 

自然探究路は昨年よりも残雪が少なかった。私は蕗の薹を捜すために右手に肥後の守を、左手にポリ袋を持ち自然探究路を外れて川沿いに雑木林の中に踏み入った。枯れ葉の積もった所々から若草色の蕗の薹が頭を出していた。10分も雑木林の中を歩くと二つのポリ袋は若草色の蕗の薹で一杯になった。これで今回の上高地バス旅行の最初の目的は達成された。私は毎年、上高地に開山祭の直後にやってきているが蕗の薹を探す雑木林は同じ所であり短時間で採取することが出来る。蕗の薹は自宅に持ち帰り花の部分を除いて湯に通してアクを抜き、細かく叩いた後に味噌と砂糖を混ぜて蕗味噌を作った。出来あがったものを味見すると口の中に蕗独特の香りと味覚が拡がった。適当の分量に分け、すぐに食べるものを残して冷凍保存した。これで1年中春の香りを楽しむことが出来るのだ。

 穂高橋まで自然探究路を歩き、いつもだと上高地温泉ホテルの日帰り入浴に行くのだが、今回は村営上高地アルペンホテルの日帰り入浴に行ってみた。フロントで入浴料金の500円を支払って2階の浴室に行くと既に5人ほどが入っていた。湯船は半円形をしており露天風呂はなかった。正面のガラス越しに六百山が見えた。湯温は42℃ほどで私にとっては温めに感じた。露天風呂があると入浴時間も長くなるのだが大風呂一つでは時間が持たない。

 

011-

もさもさした動きのニホンアナグマ

 

梓川と清水川の合流点にあるベンチに座り、五千尺ホテルの売店で買ってきた缶ビールをのんびりと飲んでいると何やらタヌキに似た動物が歩いていた。もさもさした動きで敏捷性というものがまるでない。コンパクトカメラで写真を4枚撮った。笹藪の中に姿を消したがビールを飲んだ後、すぐそばに建つ上高地ビジターセンターに入り、展示物を見学した後に受付の方に先ほど写した動物の写真を見せたところ、写真の動物は「ニホンアナグマ」で今年になって3件目の目撃情報とのことだった。目撃場所の日にちと私の名前を記入した丸形シールを上高地全体が表示された地図上に貼り、「上高地野生動物目撃証明書」なるカードをもらった。それによると、「あなたは上高地で、にほんあなぐまと出会えました! この出会いを忘れずに上高地の自然を大切にしましょう 2014429日 上高地ビジターセンター」というもので通し番号のNO.3 が印字されていた。ラッキー!!  (*^O^*)

 

戻る