紅葉にはちょっと早かった上高地
明神岳
10月中旬、紅葉を愛で温泉に入るために上高地に出かけた。
上野駅前を朝の7時発のバスで出発する。中央高速道路から長野道を通り、お昼の12時には大正池に到着した。そこから梓川沿いの自然研究路を河童橋まで歩き、上高地バスセンターを16時発のバスに乗ると21時には新装なった東京駅前に戻ってくる。上高地の散策時間は4時間である。大正池から河童橋までの散策路はゆっくり歩いても1時間あれば十分である。従って、4時間あれば川沿いをゆっくり散策し、温泉に入り食事をすることができるのである。体力はいらない。だから沢山のお年寄りが歩いている。
私は毎年、春の残雪時期と秋の紅葉時期に上高地を訪れている。春はザクザク雪の上を歩き、芽吹いたばかりのフキノトウやカワヤナギの芽や白く舞う花を愛でる。秋は黄色く輝く落葉松や白樺の葉を愛でる。その下で風に吹かれながら湯上りのビールを味わうのである。自然の中で心が満たされるのである。
今回は金曜日に出かけた。千葉では朝方まで雨が降っていたが、上高地は幸いにも快晴であった。大正池ではたくさんの観光客が池の向こうに聳え立つ焼岳を見ながらお弁当を広げていた。私が最初に大正池を訪れてから随分日にちが経つが、池の面積も随分小さくなったように感じる。梓川が運んでくる土砂によって大正池は年々小さくなっているという。池の中で立ち枯れになっている木の本数もずいぶん少なくなってきているが、焼岳だけは健在である。山頂部から白く一筋の噴煙が立ちのぼっているのが遠望できる。それはあたかも漫画「サザエさん」のお父さんである磯野波平の頭に残された1本の髪の毛のようにも見える。
今年の夏は本当に暑く、残暑は9月中旬まで長引いた。その影響だろう山の紅葉は軒並み遅れている。標高1500mの上高地も例外ではない。散策路から眺めることのできる霞沢岳や六百山の山頂付近は綺麗な紅葉を見せているが、散策路の周りはまだ緑に少し黄色が付いた程度だ。その中でも田代池周辺では黄色みが増していた。ビューポイントではカメラのシャッター音がひときわ多く感じられた。
上高地温泉ホテル
私は日帰り入浴にいつものように上高地温泉ホテルを選んだ。入り口で800円の入湯券を購入し2階の風呂に直行する。内風呂に入るのよりも開放感がある露天風呂のほうが好きだ。露天風呂は早春に訪れた時よりもお湯の温度が熱かった。ゆっくり身を沈める。空を眺めると真っ青な大空にハート型をした黄色の桂の葉が鮮やかに目に飛び込んできた。白樺の黄色の葉も空の青さに輝いている。いいなぁと心から感じる。
湯上りには当然ビールである。売店で缶ビールを買い、川沿いのベンチで眼前に聳える六百山から霞沢岳の岩山の繋がりを見ながら乾杯である。ススキがなびく向こうに3本槍の鋭い岩峰が見事に聳え立っているのも見える。昨日は雨だったので空気が澄んでいる証拠だ。梓川対岸の落葉松はまだ緑のままだ。落葉松の葉が鮮やかに黄色に彩られるにはまだ1週間から10日は早いのだろう。
河童橋の脇にあるお土産屋に入って妻にお土産を買った。同時に角瓶デザインが気に入り純米酒「酔園」を2本買った。勿論、帰りのバスの中で1日のハイキングを振り返りながら飲んだのはいうまでもない。旨い酒だった。