秋深まる上高地
清流・梓の流れと穂高連峰
10月26日、天然温泉に浸り紅葉を見る目的で上高地に出かけた。途中、中央高速道路を走って松本インターから一般道路に入るが、車窓から見えた甲斐駒ケ岳や八ヶ岳も気持ち良さそうに青空のもとに聳えたち広く裾野を広げていた。スッキリ聳えている南アルプスの山々を目にすると、いやがうえでも上高地から望める青空に聳え立つ穂高連峰の勇姿が浮かび上がってくる。天候は雲ひとつない快晴なのだ。
釜トンネルを抜け左手に焼岳が登場すると大正池は近い。立ち枯れした落葉松ごしに水面に映る穂高連峰は絶好のビューポイントである。ここから遊歩道をそぞろ歩きでバスターミナルとホテルが密集している河童橋周辺までは徒歩1時間である。バス乗客の9割が大正池で下車したが、私は次の帝国ホテル前のバス停まで乗って下車した。そのほうが目的とする上高地温泉ホテルに近いからであった。
上高地の紅葉は終盤に差しかかっていた。それでも枯れ草色に変色した草木や黄色に変わった葉は秋の日に照らされて最後の輝きを発しているように感じられた。来週は11月である。標高1500mの高地の木々は葉を散らし完全に冬に突入していくのだ。
輝く落葉松の黄葉と六百山
上高地温泉は槍ヶ岳や穂高連峰登山後に上高地に下ったおりに登山後の汗を流すために入ってきた温泉だ。上高地温泉ホテルは明治以来有名な墨客が訪れ、その時々の詩歌が湯殿に掲げられている。起源は文政年間(1830年)というから今から280年前となるらしく、ずいぶん昔の話だがそれ以来湧き続けている源泉かけ流し温泉である。
今回も上高地温泉ホテルの「焼の湯」の露天風呂に浸かった。岩風呂や樽風呂に入り心身ともにリラックスしていると、ゆっくりした時間が流れているように感じられるのだ。湯船に30分ほど浸かってゆったりしたあとは当然ビールである。自動販売機から500mlの缶ビールを買い、梓川沿いのベンチに座って眼前の逞しく聳える六百山や明神岳、前穂高岳から奥穂高岳へと連なる岩の稜線に映える紅葉を眺めながらのひとときは何ものにも代え難いものである。