爺ヶ岳へ
爺ヶ岳山頂
2016年の夏山登山計画は、8月25日〜29日の夜行バス1泊、山小屋3泊で北アルプスの爺ヶ岳〜鹿島槍ヶ岳〜五竜岳縦走というもので、参加したメンバーは6名でした。縦走の鍵を握る天気状況は、迷走した台風10号が沖縄の東海上からブーメランのように折り返し、日本列島の東側を北上するのではないかと予報されていました。
23時に新宿都庁大型バス駐車場を出発した登山バスは、翌朝4時10分には登山口の扇沢に到着しました。まだ夜は明けていないため真っ暗です。トローリーバス駅の明かりの下で朝食を済ませ、明るくなるのを待ち、足元がしっかり確認できる明るさとなった5時に給水を十分にて出発しました。柏原新道を30分に1回の休みを取りながら登り続け、4時間後には稜線上に建つ種池山荘に到着しました。整備が整った歩きやすい登山道の途中からは、針ノ木岳・スバリ岳・赤沢岳の花崗岩の白い岩山とハイマツの緑が映え、青空のスカイラインが見事に浮かび上がっています。美しい夏山の景色です。
種池山荘からはピラミダルの爺ヶ岳南峰が大きく前方に見えます。爺ヶ岳には南峰・中峰・北峰の3つの頂きがあり、南峰・中峰の2つに登ることができます。ハイマツの中の岩屑の登山道を折り返しながら登っていくと約1時間で山頂に到着しました。晴れあがっていた青空に雲が湧きあがり、既に立山山頂や剣岳山頂は雲の中に隠れていました。針ノ木岳山頂も雲の中です。遠くに見えていた槍ヶ岳も同様でした。明らかに天候は台風10号の余波で下り坂を示していました。
天候ばかりは自然任せなので、広々とした山頂で昼食にしました。太陽も時折り顔を出していました。昼食後に昼寝をしていると、「雷鳥の親子だ」という声に目を覚まし足元を見ると、母親に連れられた子どもたち3羽がハイマツの中に確認できました。こちらに全く警戒感を持たず必死に餌を探し求めています。母親は小さな鳴き声で子どもたちに警戒を呼びかけているようでした。
ひょっこりと姿を現した雷鳥の母鳥
全員が昼食を済ませたので宿泊地の冷池山荘に向かいました。山荘に到着し宿泊手続きを終え、外のベンチで生ビールを飲んでいると急に雨が落ちてきました。嫌な予感がしました。その予感は翌日に現実のものとなりました。翌日、目覚めると雨は降り続いていました。
5時の朝食後にメンバーを集めて、天候が悪化している状況の下で今後の日程について話し合いを持ちました。当初の計画では爺ケ岳〜鹿島槍ヶ岳〜五竜岳へと縦走するものでしたが、台風10号の影響で天候が崩れてしまい、これからのルートは鎖場と梯子が連続し岩稜帯の縦走はリスクが大きすぎるためでした。
メンバーの一人ひとりが自分の意見を出しました。
・このまま当初の計画通りに縦走を行うが1名。
・計画を変更するが4名。
というもので、縦走計画は中止されました。
次に、中止後の行動について意見を求めると、
・鹿島槍ヶ岳まで登頂し、戻って種池山荘に宿泊するが2名。
・雨のため展望が望めないので、このまま下山するが3名。
鹿島槍ヶ岳まで登頂し戻ってくると4時間かかるので、このまま扇沢に下山することになりました。
下山後は大町温泉郷の「薬師の湯」で汗を流した後はビールで乾杯。その後、大町観光協会で「立山プリンスホテル」を紹介してもらい1泊して温泉三昧でした。登山を中止した判断は当日翌日の雨模様の天候からも正しかったことが証明されました。今年の夏山は縦走こそ出来ませんでしたが、ハイマツと花崗岩が作り出す綺麗なスカイラインを眺め、親子の雷鳥に出会うなど、それなりに楽しむことができました。