タッチューに登る
フェリー「いえしま」から見たタッチュー
沖縄県の本部半島に『沖縄美ら海水族館』がある。その沖合9kmに伊江島という離島がある。本部港からフェリーに乗れば30分で上陸できる島である。その平らな島の中央やや東側に聳えている山がある。地元ではタッチューと呼ばれている標高172mの城山である。沖縄本島や東シナ海の洋上からよく眺められるので、古くから航海の目印とされてきた山でもある。
タッチューを初めて見たのは息子の大の小学校卒業記念旅行にお袋と大と私の3人で沖縄を訪れ、『沖縄美ら海水族館』に立ち寄った際に沖合に聳える山を見た時である。その山がタッチューであった。その時は登れるかどうかは分からなかったが形の美しい岩山だと思った。
今回、息子の沖縄合宿に同行して今年2度目の沖縄訪問となった。大がトレーニングに参加している時間帯に私は来年の日本列島縦断徒歩の旅の下調べとして中部地区や北部地区をバスで回ろうと計画していた。その中に伊江島も入っていた。
宿泊ホテルは息子のトレーニング場所の関係で恩納村にあるリザンシーパークホテル谷茶ベイだった。朝食をすませると谷茶の丘バス停まで歩き、そこから7時48分のバスに乗車し名護市バスターミナルでバスを乗り換え本部港に行き、11時発のフェリーに乗り換え伊江島に渡るというスケジュールで、伊江島到着は11時30分、という片道3時間40分の行程だった。
伊江島に上陸し島内の移動にはレンタルサイクルを利用した。1日の利用料金は1000円だった。伊江島は太平洋戦争の沖縄戦において最も激しい地上戦が行われたところで、軍人2000人、島民1500人、合わせて3500人が犠牲になったところで、島の中央に『芳魂之塔』という鎮魂碑が建てられており、亡くなられた島民一人ひとりの名前が刻まれた碑も建立されている。1月に訪れた『ひめゆりの塔』に続いて、今回は『芳魂之塔』を訪れ黙禱を捧げた。
『芳魂之塔』
港にあった島の観光協会にタッチューは山頂まで登れるのかどうか聞いてみると、「登れます。登山口は東登山口と南登山口があり、車の場合は東登山口から、徒歩か自転車の場合は南登山口から階段を登って行ってください」との返事をもらった。島は平らな島なのでどこからでもタッチューを眺めることができた。
自転車で走っていると、島らっきょうの栽培や黒マルチで茄子のような葉っぱの野菜畑を各所で見かけ農業が盛んとの印象を受けたが、『団結道場』に見られるように「銃剣とブルドーザー」によって占領軍に奪われてしまった農民の土地を奪い返すという大きな立て看板と建物の存在も伊江島の現在の姿でもある。実際に島の北西部は米軍の演習地として島民の立ち入りは禁止されている。
港の観光協会の方に教えられたようにタッチューの南登山口近くの駐輪場に自転車を停め石の階段を登り始めた。登山口には沖縄桜の濃い桃色の花が咲きだしていた。同じ桜でもソメイヨシノの薄い感じではなく、ぼってりしているように感じられた。花を見ながら沖縄の桜まつりが2月20日から始まる、とのポスターを思い出した。登山口からの急な石段を247段登ると、東登山口から車で来られるお土産屋がある広場に着いた。広場の脇に城御嶽の拝所が鳥居とともに建てられており、左側から山頂へ向かう登山道が確認できた。駐車場には5台の車が止められており、お土産屋前のベンチには若い女性のグループと年配の方が2人座っていた。
タッチュー山頂は360度の見晴らし
空はすっかり天気予報が外れて青空が拡がっていた。お土産屋の脇の登山口から291段の急な石段を登って山頂へ達した。下の247段を加えると538段の登りは結構きついと感じた。山頂には大きな石が転がっており、5人の若者がスマホで写真を撮りあっていた。山頂からの360度の眺めは素晴らしい。南側には市街地が広がり、海を挟んで沖縄本島の本部半島が望め、東側、北側、西側には平らな農地が広がっていた。私もセルフタイマーで山頂部での写真を撮った。私の後に30代と思われる2人の男性が山頂へ到着した。彼らの仲間が乗っている赤い車が山頂から確認できるようで、大きな声とともに両腕を大きく振っていたが、果たして友達には確認できたのだろうか。私が山頂を後にして降っていくと5人、3人、3人と若者が登って来た。
団結道場の建物と「米軍に告ぐ」の大看板