光り輝くブナの森へ
美しきブナの森
10月16日 晴れ
朝4時に起床し幕張発5時過ぎの電車に乗り東京駅で信越新幹線に乗り換え長野で信越本線に乗り換え妙高高原駅で下車。更に頚南バスに乗り換え登山口の笹ヶ峰に下車したのは10時25分でした。そこでザックを整え半袖シャツになり10時30分に駐車場脇にある「火打山妙高山登山口」からブナの森へと入っていきました。
天候は雲は多めですが晴れています。10月中旬のためブナの森は黄色に輝きを増しています。ブナの森の若々しい春の新緑も綺麗で心がトキメキますが黄金色一色に染まる秋も素晴らしいものです。ブナの森を保護するためか登山道の多くは木道で整備されています。火打山も妙高山もともに新潟県南部にある山で深田久弥の『日本百名山』に挙げられている山で登山者の増加によって木道が整備されたと思われます。その木道にも赤や黄色の枯れ葉が舞い落ちます。
登山者が多い土曜日登山を避けて前日金曜日に会社の休暇をとり、まず火打山を目指して歩を進めます。黒川の流れまで1時間の行程です。周りは黄色一色のブナの森です。ここのブナの木々は真っ直ぐに伸びたものが多く、一抱えもある太い幹から直径2cm程の細い幹まで全ての木々が黄色に染まっています。写真を撮りながら登って行く私自身の身体が黄色に染まっていくのではないかという錯覚におそわれます。言葉では言い表せないほど本当に見事な黄葉です。黒川を過ぎると登山道は木の根や岩角を掴みながら這い上がるような急坂の連続となりましたが足元に注意しながら休みながら登って行きます。急坂は「12曲がりの坂」と名づけられていました。12曲がりを過ぎ富士見平の分岐までが素晴らしい紅葉黄葉の世界でした。
黄金色に輝くブナの森
富士見平分岐から右側に折れ宿泊予約を済ませてある高谷池ヒュッテを目指します。1週間前に初雪が降った関係で登山道はぬかるんでおり足元に注意しながら進んでいきます。三角形の屋根型をした高谷池ヒュッテが思いがけない形で視界に現れました。登山口から3時間で高谷池ヒュッテに到着し宿泊手続きを済ませザックをヒュッテ預けて火打山に向かいました。
冬枯れが進む高谷池畔を回り込んで天狗の庭に進んでいきます。高層湿原である天狗の庭も冬枯れが進み静かな池塘の水面に逆さ火打が写っていました。火打山はとても穏やかな容姿をしています。高谷池ヒュッテから1時間ほどで山頂に達しました。途中で雷鳥の生態調査を行っている専門学校生7名のグループに会い、話をすると一度に12羽の雷鳥を現認したとのことですから相当数の雷鳥が山頂近辺に生息しているようです。専門学生たちは高谷池畔にテントを張って調査を続けていました。
雷鳥たちはこれから食べるものを探すのにも困難な厳しい白一色の冬の世界に臨んでいかねばなりません。特に今年生まれた雷鳥にとっては初めて体験する冬です。この厳しい冬を乗り越えられない場合は死が待っています。何とか冬を乗り越え暖かい春の雪解けまで生き延びて欲しいと思いました。
秋枯れの高谷池
私一人だけの火打山山頂はとても静かでした。「火打山」の標柱の脇に風雪に耐えた石仏が置かれていました。静かに風だけが通り過ぎていきました。北アルプス方面は雲の中に隠れ展望は望めませんでしたが反対側の妙高山は時折そのお椀を伏せたような特徴的な山容を現していました。
10月17日 晴れのち曇り
天気予報は夕方の崩れを伝えていました。朝食を6時前に済ませ準備をして茶臼山経由で黒沢池ヒュッテに向かいました。東の空が日の出の桃色に輝いていました。早朝の一人旅は熊に出会う機会も多いと判断し携帯ラジオでNHK番組を流しながら歩いていきましたが、思ったより簡単に青色ドームの黒沢池ヒュッテが望める場所まで到達しました。下った場所から20分ほど登り返したところが大越の乗り越しです。その位置を確かめながら降る足元も軽快です。
黒沢池ヒュッテ前のテーブルにザックを置き、ウインドブレーカーと500mlの飲み水にカメラだけを持って過激な昇り降りが待っている妙高山に向かいました。黒沢池ヒュッテから乗り越しまでの登山道はまだ凍っているので比較的楽に歩くことが出来ましたが、乗り越しを越えての登山道は細く左側が切れ落ちているので結構神経を使います。問題は妙高山の上り下りでした。登山地図にも1kmの距離を1時間30分の登りと1時間の降りと表記されています。結局登りに1時間、降りに40分ほどかかりましたが上に行くほどに1週間前に降った雪が固まり氷となって登山道を覆っていたので滑落を注意しより慎重にならざるを得ませんでした。
妙高山山頂
登山道は横に長い妙高山山頂の真ん中あたりに飛び出し、北から南へ延びており北峰山頂には5人の登山者がいましたので私はそのまま南峰山頂に向かいました。右側遠くに雪を被った北アルプス連邦が綺麗に望めました。昨晩、高谷池ヒュッテで観たビデオ番組が映し出していた北アルプスのパノラマでした。暫く眺めたあと来た道を戻り北峰山頂の「日本百名山:妙高山山頂」の標柱前で写真を撮りました。自分で言うのもなんですが白いスラックスに赤いジャンバーのスッキリした姿です。まるでオリンピック選手の入場式のようです。
今回は山行の宿泊所として高谷池フュッテを利用しましたが利用者として以下3点について改めて考えさせられました。
第1点は山小屋の食事についてです。高谷池ヒュッテの食事は温めるだけで食事が出来るレトルト食品を基本にしていました。朝食は中華丼にインスタント味噌汁でした。夕食のカレーライスやハヤシライス、売っていた「おでん」や昼食の「赤飯」もレトルト食品でした。山の食事は効率的に準備し残飯が出ない食事を考えるべきだし、食事のあり方として考えさせられる点だと思います。食事がレトルト食品だけに1泊3食の宿泊代も安く7000円でした。
輝くブナの森
第2点はトイレ使用後の紙を使用者に持ち帰ってもらうことについてです。トイレの使用済み紙については直接便器内に落とさず用意されている空き箱に入れて後で山小屋のほうで焼却処理する方法が一般的な山での処分方法ですが高谷池ヒュッテのように使用者が持ち帰るというのは初めての体験でしたが、バイオトイレの説明や高谷池周辺が山焼き禁止になったことなどの説明を受けたので納得しました。
第3点は缶ビールや日本酒の空缶を飲んだ人に持ち帰ってもらうことについてです。空缶の持ち帰りは石川県の白山登山時に体験しましたが2度目であったことにより比較的スムーズに納得しました。利用者が麓まで運び降ろすことにより山小屋の負担が軽減され運営がスムーズに行くならばお互いに協力し合って行くべきことだろうと思いました。結果は山小屋を利用する登山者へ跳ね返ってくることになるので山小屋と利用する登山者の問題として考えていくべきことだと思います。
ブナの輝き
火打山と妙高山登山の場合、通常は登山口で1泊し山中1泊の2泊3日の行程を、今回は4時起きで新幹線とバスに乗り継ぎ新潟県の登山口を10時30分に登りだし火打山山頂を折り返し16時にはヒュッテでビールを飲み、翌日は妙高山を往復し下山後バスと新幹線に乗り継ぎ20時半には自宅の風呂に入りビールを飲んでいました。2日経って会社に出勤しても強行スケジュールのおかげで両足の筋肉がパンパンに張っており階段の昇り降りも一苦労でしたが振り返ってみれば楽しい思い出が残った山行でした。
2009年10月20日