東北の名峰・早池峰山へ
早池峰山山頂の早池峰神社奥社前で記念撮影
9月7日 土曜日 曇りのち晴れ
MCC(ミーハー・クライマーズ・クラブ)の2024年夏山登山は、岩手県の早池峰山(1914m)と岩手山(2041m)の連続登山だった。ふたつの山は深田久弥の『日本百名山』に選定された東北の名峰である。今回の参加者は8名。ポパイ吉原、ちびっこ小沢、せっかち山本、エンジニア小林、でぶっちょ碓井、マドンナ紀美江、それにエイトマン岩井,更に初参加のまるまるアッコだった。昨年9月の八ヶ岳臨時登山から女性が参加するようになり、今回は2名が参加することになった。
早朝、元気に盛岡駅に到着した
新宿バスターミナル22時55分発の八戸駅行き夜行バスは、翌朝の6時10分にJR盛岡駅西口に着いた。待合室で日帰り登山の準備を終えると、余分なものはコインロッカーに預け、朝食を食べに牛丼の松屋に入った。私は牛皿朝定食を頼んだが、一杯の温かい味噌汁が、夜行バスで眠りの浅かった身体を、目覚めさせるようだった。
花巻駅から直通登山バスに乗った
盛岡駅8時31分発の東北本線北上行きの2両編成のディーゼル・ワンマンカーに乗り花巻駅で降りた。花巻駅東口9時20分発の岩手ファミリー観光の直通登山バスに乗った。バスは綺麗な新車だった。登山バスは6月〜9月の間で1カ月に2日〜3日しか運行しない完全予約制のため、私が1カ月前に予約を入れた時は、8人のうち6人の席は確保できたが、2人の席がキャンセル待ちとなった。1週間後にキャンセルが出ました!という連絡がバス会社から届いたのでホットした。当日は花巻駅から20人、新花巻駅から12人、合わせて32人の満席だったが、1人が連絡もなくキャンセルだった。
小田越登山口で出発前の記念撮影
私は早池峰山登山は2度目であったが、他の7名のメンバーは全て初めてだった。登山バスは1時間30分で早池峰山登山口の小田越に着いた。登山口には夏山登山期間だけ臨時のトイレが設置されていた。また、ボランティアスタッフによる登山中のトイレ用に携帯トイレの宣伝と販売が行われていた。
「クマ出没注意」の看板を横目に歩き出す
私たちは出発前に各自トイレを済ませて、「クマ出没注意」の看板が立っている登山口標識の前で元気な姿を写真に収め、アオモリトドマツのなかに伸びている木道へと歩を進めた。30分ほど歩くと森林限界を突破し、見晴らしの良い登山道となったが、あいにく西側からガスが湧き出しており、おまけにそのガスは強風を巻き起こし、山頂までの登山は強風に悩まされ続けたのだった。後ろに見えるはずの三角形の山容が美しい薬師岳は残念ながらガスのなかだった。
ハヤチネウスユキソウが咲いていた
早池峰山は蛇紋岩の岩山なので、高い木が育たない環境である。足元には花の時期が終わったハヤチネウスユキソウやナンブトラノオ、ウメバチソウなどが見られた。早池峰山が賑わうのは6月〜7月の花の時期である。私が前回登ったのは、17年前の2007年6月のことで、たくさんの高山植物の花が咲いていた。
2段の鉄梯子を慎重に登った
早池峰山は蛇紋岩で構成されており、表面がツルツルしていてよく滑る。もしも雨の日に登ったならばスリップによる滑落、転倒、捻挫に注意を払わなくてはならない。実際に帰りのバスでは転倒により、左目を大きくはらした痛々しい女性がいた。登山途中の8合目あたりで斜度60度くらいの1枚岩に10mほどの梯子が連続して付いているところがあった。マドンナ紀美江は事前学習のビデオを見て、2段の梯子に緊張し胸が高鳴ったという。慎重に登れば何ともない梯子だけれど、登山者が多いときは渋滞になるし、結構時間がかかるのだろうと感じた。
大小の岩がゴロゴロしている登山道を登っていった
私たちは登るスピードを2割り増しにして、比較的ゆっくり登っていった。ガイド役の私が先頭を歩くが、2番手はまんまるアッコだった。岩の登山道のどこに足を置いていいのか分からないので必死についていったという。アッコは自宅裏の70段ある神社の階段を、南参道から入り、階段を登って東参道を経て南参道に戻る周回コースを1週間に2回か3回歩き、最初は3周から初めて最終的には10周歩く訓練をしていたので、今回の早池峰山登山は、膝のトラブルもなく比較的スムーズに登れたという。強風にめげずに13時30分に早池峰山の山頂に着いた。たくさんの大きな剣が突き刺されて奉納されていた。私たちに天が味方したのだろうか、それまでガスっていた山頂が我々の到着と同時に霧が晴れて青空が見えだし、太陽が燦々と輝き出してくれたのである。ラッキー!頂上には20〜30人の登山者が三々五々休憩していた。
早池峰山(1914m)山頂標柱の前でピース
私たちは真っ直ぐに早池峰神社奥宮の赤い建物に向かった。赤い建物の扉には太陽を示す丸い穴と、三日月の穴が空けられており、その丸い穴から中を覗き込むと、中は真っ暗だが微かに射し込む光によって薄っすらと神様が見えた。スマホで写真を撮って確認してみると、右側に早池峰神楽の獅子舞の真っ黒な獅子頭が置かれており、左側の社は扉が閉まっていたので、社のなかに何が入っているのか分からなかった。全員が揃ったところで休憩していた男性にスマホのシャッターを押してもらった。
山頂の早池峰神社奥宮の内部
早池峰山の麓の大迫町と岳集落に古くから伝わる早池峰神楽は、国の重要無形文化財に指定されており、ユネスコの無形文化遺産にも登録されている。早池峰神楽は大迫町の大償神楽(阿)と岳集落の岳神楽(吽)のふたつの総称である。神楽は11の舞いが演じられた後に、最後に獅子頭による「権現舞」が舞われるが、それに使われるのが奉納されている黒い獅子頭である。私たちが普通に見るのは赤い獅子頭だが、早池峰神楽の獅子頭は黒である。最初見た時は、その異様さにびっくりしたのだった。
山頂東側は山並みが見えていた
山頂ではお昼ご飯を食べながら30分間の休憩だった。山頂標示板の横で握り飯を食べていると、ヘルメットをかぶった小学校低学年と思われる兄弟が写真を撮りにやってきた。大人でも登るのにはキツイ岩山である早池峰山に、頑張って登ってきた子どもに心のなかで拍手を送り、ふたりにハイタッチをして無事登頂の祝福をした。山頂からは「河原の坊」に降りるコースがあったが、通行禁止のトラロープが張られていた。前回私が登った時は河原の坊コースを降りて行ったのだが、現在は土砂崩れで登山道が封鎖されているために、登ってきた小田越口へ降りるのだった。
5合目の「お金蔵」で休む4歳と6歳とお父さんの家族
14時に下山を開始すると、山頂で写真を撮っていた小さな子どもに会ったので年齢を尋ねると、4歳と6歳とのことだった。保育園の年少と小学校1年生だった。びっくり。1年生はフットワークよく1人で先に降りて行き、4歳児はお父さんに手を引かれて降りていった。いやはや逞しいものだ。
今回の登山データ
バス停がある小田越登山口に降りたのはバス発車の1時間前だった。帰りのバスの車窓から早池峰山の山頂が見えたが、雲ひとつなく晴れ渡っていた。晴れるのが3時間早かったならば、山頂から素晴らしい景色が見えたことだろう。やがて夕焼け空となり、翌日の晴天を約束しているようだった。
晴れてきた山頂から見下す岩場
今回登った早池峰山はNHK−BS放送で日本百名山の番組として、度々放映されていたので、参加者はその映像を見てイメージを豊かにし、下調べを含めて予備知識を持っていたために、夜行バスで寝不足気味だったがスムーズな登山となった。深田久弥が早池峰に登った時は、河原の坊からのコースだったが、終始ガスのなかだったので見晴らしはなかった、と著書で述べている。
盛岡市内に戻って居酒屋で満足顔の乾杯
翌日の岩手山登山に向けて盛岡市内に戻ってきた。ホテルにチェックインしたあとは、居酒屋に場所を移して1日目の反省会という名目の飲み会であった。翌日も6時30分にフロントに集合というタイトなスケジュールのため、飲み会は21時までの限定であったが、7人の参加者は満足の笑顔で美酒を飲んだのだった。勿論、私も生ビール、焼酎、地酒とボルテージを上げたのだった。これだから仲間との登山は面白い。