緑が拡がる岩手八幡平
強風の茶臼岳山頂で登頂記念写真
8月30日 土曜日 晴れのちくもり
今年のMCC(ミーハー・クライマーズ・クラブ)の夏山登山は、8月29日〜9月2日で、夜行バス1泊、避難小屋2泊、温泉旅館1泊の4泊5日の日程で、岩手県八幡平、秋田県焼山、秋田駒ヶ岳を計画した。参加メンバーはポパイ吉原、ちびっこ小沢、でぶっちょ碓井、エンジニア小林、マドンナ紀美江、まんまるアッコ、それにエイトマン岩井の7人だった。出発の1週間前に秋田県地方を襲った大雨により、河川の氾濫や土砂崩れが発生して乗車予定のバスが運休となり登山の実施が危ぶまれたが、復旧作業が進み道路が開通し、バスの運行が再開されたので私たちの夏山登山も実行に移された。
JR盛岡駅東口で元気なうちの1枚
夜行バスが6時15分にJR盛岡駅西口に着いた時は小雨が落ちていた。天気予報では7時過ぎに雨はあがると出ていた。昨年休憩した駅構内の待合室に向かうと、なんと待合室はコーヒー店に衣替えしていた。駅員に確認すると「改札内ホームには待合室はあるが、改札を出ると待合室はない」とのことだった。歩行者の邪魔にならないように隅にザックをまとめ、小雨のなかを朝食のために松屋に向かった。
松屋で朝定食を食べた
私が頼んだのは「炙り焼鮭と半牛皿付き朝定食」で値段は700円だった。頼んでから待つこと3分で朝定食が出来上がってきた。このくらいの量が朝食には丁度いい。朝食を済ませて店を出ると青空が拡がり太陽が顔を見せていた。天候は確実に回復傾向だった。
さくら公園で昨年登った岩手山を背景に
盛岡駅東口を9時10分発で1日1本運行している「さくら公園経由の八幡平頂上行き・八幡平自然散策バス」に乗った客は9人だった。岩手県北バスの運転手は「いつもは土曜日だと20人近くが乗るのだが、今日は大曲の花火大会なので乗客が少ない」と言った。バスは高速道路を走った。左側の車窓から岩手山が大きく見えた。岩手山は今年も火山活動が活発なので登山禁止が続いている。さくら公園で15分の休憩があった。バスに八幡平自然散策3時間無料コースのボランティア活動の男性が乗ってきて、「参加希望者はいますか?」と呼びかけたが誰も手を挙げなかった。公園には明日の午前中に、この場所からスタートし、岩手県側アスピーテラインを使っての自転車ロードレースが行われるために、大会の幟旗が道路の両側に立てられていた。運転手が岩手山をバックにした集合写真のシャッターを押してくれた。
茶臼口バス停に降りて登山を開始した
盛岡駅を出発してから1時間40分後に茶臼岳登山口そばのバス停に着いた。降りたのは私たち7人だけで、他の2人は八幡平山頂方面に乗っていった。盛岡駅では風もなく穏やかだったが、登山口では強烈な風が吹いていた。木やネマガリタケが大きく揺れてざわざわしていた。登山口から情け容赦のない急登の連続だった。急登は30分ほど続いたあとで、ようやく傾斜が緩くなり木の段々も続いていくようになった。
登山口から1時間で小さいながらも立派な茶臼岳避難小屋に着いた。ザックを小屋に置き、歩いて5分ほどの山頂に向かった。アオモリトドマツの森のなかを歩いていくと、急に前が開けて岩の重なる茶臼岳(標高1578m)山頂に着いた。茶臼岳山頂は八幡平高原台地での3大展望地であり、期待を裏切らない素晴らしい眺めだった。前方には岩手山が姿を現し、眼下には緑の森が広がり、そのなかに2つの沼が見えた。右手奥にこれから歩いて行く八幡平頂上のレストハウスの建物も見えた。風が強すぎるので帽子を飛ばされないように注意しながら集合写真を撮った。
茶臼岳避難小屋で昼食を摂った
避難小屋に戻って昼食を摂った。風が強くなければ外で食事をするのだが、風があまりにも強すぎるので小屋のなかでの食事だった。小屋は平屋だが20人は泊まれる広さだった。40分休憩して先に進んだ。
黒谷地湿原は草紅葉には早かった
小屋から30分ほど泥濘に散らばっている石を避けながら降っていくと、黒谷地湿原に着いた。ベンチの周りの湿原は、まだ草紅葉にはなっていなかった。近くに「熊の泉」と呼ばれている水場があるのだが、誰も水を汲みには降りていかなかった。各自飲み水は十分に確保しているのだった。
ダイモンジソウが咲いていた
アオモリトドマツが密集する源太森で休憩したが、あとから確認すると源太森周辺には度々クマが目撃されている場所とのことだった。私たちは7人もいるし、各自がクマ鈴を鳴らし、見通しの悪い場所ではホイッスルを吹きながら歩いているので、クマも姿を見せなかったようだ。最近、頻繁にクマの出没情報がニュースで流れているが、クマの事故を避けるためにはクマと出会わないことが重要だ。
2階建ての八幡沼避難小屋・陵雲荘に着いた
茶臼岳登山口から歩き出した最初の30分ほどは急登だったが、それ以外は比較的になだらかな登山道を歩き、4時間後に宿泊する八幡沼避難小屋・陵雲荘に着いた。周りにはガスが湧き出したため視界は悪くなっていたが、八幡平(標高1613m)山頂に向かった。八幡平は深田久弥が選定した『日本百名山』に選ばれている山である。八幡平山頂付近は観光地となっているために頂上までバスが通っており、自家用車用の有料駐車場もあり、石畳の歩道が整備されている。
八幡平頂上には櫓が建っている
避難小屋から40分ほど歩くと櫓が建っている八幡平頂上に着いた。櫓に上ってみても周囲は真っ白で何も見えなかった。観光客が次々にやってくるのだが、全く見晴らしがないと気落ちしながら帰っていくのだった。私たちは明日晴れることを願って、頂上レストハウスでビールを買ってから避難小屋に戻ることにした。
人気者のオコジョが出てきた
レストハウスで地ビールを買って避難小屋に戻る途中で、遊歩道を素早く横切り草むらに飛び込んだ生きものが目にとまった。何だろうと想い、隠れたと想われる場所を見ていると、ひょっこり姿を出したのは人気者のオコジョだった。オコジョはこのあたりでは頻繁に現れるようで、レストハウス横の岩手県と秋田県の県境を示す標柱の脇にもオコジョのモニュメントが置かれていた。オコジョは好奇心旺盛な動物で、見ている間にも遊歩道を何度も横切り、可愛らしい姿を見せてくれたのである。オコジョは心を癒される小動物だが、肉食の獰猛な一面を持っている。
地ビールのドラゴンアイシリーズ
地ビールのドラゴンアイで乾杯だった
避難小屋は2階建ての立派な建物で、断熱マットと毛布が置かれており、薪ストーブが設置されていた。小屋は40人〜50人は余裕で宿泊できる広さだった。この日に小屋に泊まったのは、私たち7人だけだったので小屋は貸切り状態だった。各自が寝床を準備すると山小屋での夕食が始まった。まずは頂上レストハウスで買ってきた6種類の地ビールで乾杯だった。最近の八幡平は5月中旬〜6月中旬の雪解け時に、火口湖である鏡沼に出現する「ドラゴンアイ」が観光の目玉になっており、地ビールもドラゴンアイシリーズが5種類もあった。いずれのビールも口当たりの爽やかな軽めの味がした。
夕食時に薪ストーブを使わせてもらった
室内には薪ストーブが置かれ、焚き付け用のマツボックリや薪も用意されてあったので、夕食時に薪ストーブを使わせてもらったが、室内温度は24℃にも上がり、快適な睡眠を約束してくれた。ありがたいことである。酒を酌み交わしながら仲間との会話も盛り上がり、ハイキング1日目の夜は更けていった。