江月水仙ロードを歩く
水仙畑に陽光が降りそそぐ
2021年の年明け早々、新型コロナウイルス感染拡大が止まらないため、東京都と隣接3県に緊急事態宣言が再発令され、更に大阪府をはじめとした1府6県が追加された。宣言の中に県間を跨ぐ移動の自粛が含まれているため、ハイキングなどの外出は当分の間は千葉県内にしている。1月中旬の平日に水仙の花を見ようと思い千葉県の内房に出かけた。内房の保田地区は日本における水仙の三大生産地として昔から知れ渡っている。水仙の三大生産地とは福井県の越前水仙、兵庫県の淡路水仙、それと千葉県の保田水仙である。
一昨年の甚大な台風被害以降は封鎖された天寧寺
東京湾側の安房勝山駅から江月水仙ロードに向けて10kmのウォーキングを開始する。黄色の菜の花畑が広がり、桜が咲きだした佐久間川沿いを30分ほど歩くと天寧寺があった。境内に樹齢600年の千葉県指定天然記念物のビャクシンという槙の巨木があるというので、その樹を見てみようと思っていたが、山門には入門禁止の三角コーンと横バーが2重3重に設置されていると同時に、トラロープも張られており、境内に入ることができなかった。なぜだろうと考えた。山門を含めて屋根瓦が落ちており、一昨年の千葉を襲った台風被害の修理が終わっておらず、参拝を断っているようだった。一昨年の台風被害は甚大で、特に房総半島の内房側が広範囲にわたった。今でもブルーシートを被せた屋根があちこちに見られ、修理が滞っているのだった。
見返り峠からの眺め
牛舎から牛糞の独特の臭いが流れてくる山裾の田舎道を歩き、坂を上り詰めて見返り峠に着いた。峠から振り返ると南西方向が開けており、山を削った採石場のむこうに東京湾が霞んで見えた。以前は河川で採石することができたが、洪水などの関係で河川での採石は禁止された。それ以降は山を削っての採石に変えられたため、千葉県でもあちこちで山が削られているのだ。足元には水仙の花畑が広がり、のんびりした風景を眺めながら、ザックに入れてきたバナナと干し柿を食べた。美味かった。
あちこちにハッサクが実っていた
田舎道の脇の竹やぶに夏みかんより小さい実がなっていた。木の根元には黄色い実が落ちており、収穫されないまま見捨てられた実のように思われた。歩いてきた途中にも同じように収穫されないままの実があったので、どのような味がするの味わってみることにした。枝から1個もいで皮をむいてみると、皮は厚くてなかなかむけなかったが、柑橘類独特の芳しい香りがした。房をむいて口に含んだ。思ったよりも酸っぱくはなく、みずみずしく爽やかな味が口の中に拡がった。ラッキー!と感じた。
地蔵堂前から富士山が望めた
見返り峠を越えて江月の集落に入ると、あちらこちらに水仙が咲き誇っていた。水仙を栽培して出荷した畑には水仙の花が残っておらず、取り残したところや日陰で成長が遅かった場所で花が咲いているのが見えた。地蔵堂まで降って来ると、「絶景富士山」という看板があり、水仙の花越しに富士山が霞んで見えた。気温が上がったために霞のような薄靄がかかっており、富士山の姿は薄かった。私は富士山が見られて満足だった。
水仙ロードには水仙が満開だった
道端には無人の水仙を売っているところもあったが、せっかくなので水仙を栽培している農家の方と話をしながら水仙を買おうと思った。60代と思われるおじさんが水仙を売っていたので話しかけた。水仙は今月いっぱいですか?と尋ねると、もう終わりだよ、と素っ気ない。2月ころまでは見られるのでしょう?と質問を続けると、もう出荷は終わったし、終わりだよ。と相変わらず素っ気ない。周りには水仙が沢山咲いているのだ。私は農家の仕事としては終わった、という意味なのだろうと判断した。おじさんから水仙の一束を100円、ハッサクは3個で100円を買った。
保田漁港の番屋食堂で一杯
道路から見える畑には水仙が咲いていたし、路肩にも土手にも水仙があちこちに咲いていた。水仙ロードを歩き、保田温泉に入るために漁港に向かった。保田漁港に到着し高濃度炭酸温泉に向かったが、新型コロナウイルスの感染拡大の関係で営業時間が変わっており、平日は15時から営業開始となっていた。仕方ないので温泉に入るには止めて、漁業協同組合直営の番屋食堂に入った。注文したのは、ばんや寿司とミックスフライとビール大瓶と地酒・寿萬亀の冷酒300mlだった。至福の時が流れた。
清楚な水仙が満開だった
私が江月水仙ロードを歩くのは26年ぶりだった。前回も5歳だった息子と一緒だった。今回とは逆のコースで保田駅から水仙ロードを歩いて安房鴨川駅までの10kmを歩いたのだった。5歳児にとって10kmを歩くというのは大変だったようで、途中で何度も駄々をこねられ、だましだまし歩いたことを思い出した。
今回歩いた江月水仙ロード
今回のハイキングには山と渓谷社発行の分県登山ガイドの『千葉県の山』でコースの確認をし、その内容を頭に入れながら、スマホでYAMAPの地図をダウンロードしたものを参考にしながら歩いた。田舎道なので結構細かい分岐点があった。通行人にはあまり会わず、地図読みをしながら歩いていくのだが、1ヶ所だけお年寄りが道を教えてくれた。海岸線から歩き出し見返り峠が最高点で標高130mほどだった。年末から次々に襲ってきた寒波の中休みに、穏やかな陽を浴びながら、のんびり歩けたハイキングだった。今回は新型コロナウイルス感染拡大の影響で温泉には入れなかったが良しとしよう。