霧に包まれた伯耆大山登山
大山山頂1710m
6月9日、日曜日
『日本縦断てくてく一人旅』の第3ステージの途中で伯耆富士と呼ばれている大山に登ろうと思い、旅のスケジュールのなかに大山登山を組み込んだ。登山の前日は北麓にあるスキー場内のホワイトパレスというホテルに宿泊した。スキー場はシーズンオフのため営業しておらず、ホテルも素泊りのみだった。ホテルには15時30分に到着した。「旅する蝶」と呼ばれているアサギマダラがゆらゆらと優雅に舞っているのを目にした。蝶は1頭だけだった。スキー場から見上げる頂上稜線がはっきり見えたが、フロントボーイの案内によって通されたホテル2階の部屋の窓からは既に山頂部は厚い雲に覆われていた。ここ2、3日天候がぐずつき気味で翌日の天候が心配だった。
大山スキー場から望む大山の頂上稜線、右端が弥山
6月10日、月曜日
大山登山の朝、目覚めるとすぐに窓から山頂を眺めると横に長いスカイラインがはっきり見えた。握り飯を1つ食べて5時にホテルを出発した。30分ほど歩き夏山登山口に到着したので登山届を記入して箱に入れ登山を開始した。登山コースは長い山頂部の右端に聳える弥山に真っ直ぐに延びる夏山コースを選択した。ブナ林の中の階段状の登山道を30分に1回の小休止をとることを目安に登って行った。
コースは弥山山頂に向かってほぼ直線に取られていた。ツツドリの鳴き声がしきりに聞こえてきていた。このコースも何合目表示がされており、3合目を6時15分、5合目を6時45分に通過したのだが、5合目の直前にプレハブの携帯トイレブースが建ててあった。大山も深田久弥の『日本百名山』に挙げられている人気の山だが、御多分に漏れず登山口から山頂間にトイレは1ヶ所もなく、山頂に1ヵ所トイレが設置されていた。登山客の増加とともに屎尿問題はどの山でも深刻化しており、大山でも実験として今シーズンに限って途中の5合目付近に携帯トイレブースを設置したと表示されていた。
6合目避難小屋
7時に到着した6合目には避難小屋が建っていたので中に入ってみると、小屋の中には板床が敷かれており、奥は2段の蚕棚形式になっていて収容人数は5〜6人くらいだろうと思った。8合目には、国立公園大山の自然環境を守るためのマナーアップキャンペーンとして「トイレマナー5ヶ条」の立て看板が立っていた。その5項目は、1、登山に備えて前日の体調を整えましょう。 2、登山前には用便を済ませましょう。 3、登山時は携帯トイレを持参しましょう。 4、頂上トイレは大切に使用しましょう。(トイレの使用は最小限にしましょう) 5、ゴミは持ち帰りましょう。というものであり、大山だけではなくどの山にも適用できる内容のものだと思った。
コイワカガミの群落
8合目を過ぎると山頂までの間は植生保護のために木道が敷かれていた。木道脇にコイワカガミの群落が現れ、朱色のレンゲツツジも花を咲かせ始めていた。8時に山頂に到着した。登山口から2時間30分の登山だった。頂上には大きくて立派な鉄筋の非難小屋が建っていたが、経年劣化のために補修工事が入るとのことだった。その工事が入る前の姿を残しておこうと登山者がスケッチブックに避難小屋を描いていたのが印象的だった。辺りは霧に包まれており、残念ながら山頂からの360度の大展望を見ることは出来なかった。
山頂で『てくてく一人旅』への応援メッセージを書いてくれた横山さん
山頂で霧の晴れるのを暫く待っている間に隣の登山者と雑談をしていると、私の旅のことを聞かれたので日本縦断の話していると、応援メッセージを書いてくれることになり、てくてく一人旅の旗を拡げて書いていただいた。横山さんは、こんな体験は初めてのことで、今晩一緒に酒を飲むことになっている友達に是非話したいと言ったあと、元気な足取りで下山していった。
天候の回復の見込みは無いので8時25分に下山を開始した。4合目まで下ってくると雨が降り出し、林の中からキツツキのドラミングの音が聞こえてきていた。