千蛇谷雪渓も快調に(鳥海山)

 

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千蛇谷雪渓上部

 

海の日の3連休と夏休みを2日取得して山形県の鳥海山と出羽三山に登りに行かけた。鳥海山は天候にも恵まれ千蛇谷雪渓の登りも快調だった。高山植物の花々も可憐に咲いており心を和ませてくれた。

 鉾立登山口から2時間ほど登ったところに御浜小屋があるが、その下に火山湖である鳥海湖が静かに佇んでいた。時間が余っていたので高山植物を踏まないように注意しながら鳥海湖まで降りてみた。ヒナザクラの可憐な純白の花が沢山咲き、ピンクのイワカガミも柔らかい花を咲かせている。湖面は静かだ。雪渓から溶け出す水が絶え間なく流れ込んでいる。大きく割れ、湖面に落ち込む雪渓もある。やがて秋を迎える頃、全ての雪渓が融け湖の中に流れ込むのだろう。

 風が強いので岩陰に身を隠し握り飯の昼食を食べながら残り半分の登山コースを頭の中でなぞってみる。御浜小屋から1時間ほど登った七五三掛上部で外輪山コースと千蛇谷コースに分岐した。晴れていたら見晴らしのよい外輪山コースを歩こうと事前に準備していたが、生憎、風が強く時折りガスが発生し見通しが極端に悪くなっていたことを考慮し、私は迷うことなく千蛇谷コースを選択した。

 千蛇谷コースには雪渓がずいぶん残っていた。登山前に秋田県にかほ市観光課に今年の残雪量とコース上の注意点を確認したところ、今年の積雪量は平年並みであったが春先のドカ雪とその後の低温の関係で雪渓は多めです。また1ヶ所、道に迷う場所があり表示を出してあるので見落とさないで下さい、との情報を頂いた。

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千蛇谷雪渓上の落石


 雪渓登りは午前中の太陽に照らされて雪面が溶け出し登山靴にフィットし快適だった。雪渓上には大小さまざまな落石が見受けられた。とりわけ大きな落石の場所でセルフタイマーをセットし写真を撮った。目指す鳥海山山頂も青空をバックにくっきりと聳えている。白い雪渓、緑の木々、黒い岩山、青い大空、それらが一幅の絵となって鮮やかに目に飛び込んでくる。美しい光景だと思う。

 鳥海山山頂御室小屋で1泊2食7000円の宿泊料金を払い宿泊手続きを済ませ山頂に向った。山頂コースは山小屋の裏側を回り込むように大岩が折り重なっているところを白いペンキの矢印を見つけながら登っていく。道なんてない。比較的登りやすいと思われるところにペンキの矢印が岩に書かれているだけだ。イヤハヤナントモというコースである。ガスに巻かれたら道を見失うだろうと思っていたが、果たして私もガスのため途中でルートを見失ってしまいバックする場面があった。頂上は時折りガスに包まれ強風が吹いていた。このような状況は天候が崩れる前兆なのだ。岩が被い重なった頂上はいくつもあり、どれが最高峰なのか分からない。ルートを示す白いペンキの矢印を途中で見失ってしまったのだ。足場が悪いので転落には十分注意しながら一番高いらしいと思った山頂で写真を撮ったが山小屋に戻って同宿者と話していると実は山頂はもっと手前の岩山とのことだった。ま・しかたない。新山は火山ドームになっていたので一塊と考えればいいと自分を納得させた。ガスが飛ぶと麓の緑や日本海の海岸線が望めた。朝晩の霧が濡らした岩から滴る僅かな水を頼りにこんな岩山にもピンクの鈴の形をした小さな花が健気に咲いている。愛おしいという感情が湧き出てき思わず頑張れよと声をかけたくなる瞬間である。

 

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チョウカイフスマ


 今回の鳥海山登山で7月中旬に咲く多くの高山植物に出会った中で私が初めて出会った花は「チョウカイ」という名を冠した「チョウカイフスマ」と「チョウカイアザミ」の2種類だった。「チョウカイフスマ」は頂上小屋手前から左手に折れ、山頂に向うルートの岩に取り付く直前に沢山見受けられた。純白の花の形がすっきりした清清しい感じを受ける花だった。カメラをマクロ接写に切り替えて2枚写した。これに反して「チョウカイアザミ」の黒い蕾を初めて見た時はギョッとした。何だ?この花は?というのが初対面の感想だった。清楚な高山植物が多い中で清楚というイメージからは程遠い印象を受ける花である。この花は登山道に沿っていたるところに咲いていた。蕾から花が開くと赤紫の花芯が見えるが、地獄の入り口というものがあるならばこのような不気味な入り口ではなかろうかと思わせる花である。花にもいろいろな花があるということを改めて感じさせてくれる花である。

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チョウカイアザミ


 今回の登山の2番目の目的である出羽三山は前夜の天気予報で90%の降水確率だったため月山と湯殿山登山は中止し羽黒山のみに切替えた。羽黒センターでバスを下車し隋神門から、一の坂、二の坂、三の坂と続く長〜い石段を登った。始発のバスに乗った登山者で私以外は全て月山に向って行った。

 朝方は曇り空の中に時折り青空が望めたが私が羽黒山を登り終えた9時半頃は大雨状態だった。月山に向った人たちは自分の判断の甘さを実感したことだろう。また、私が羽黒山を下山する10時半頃に新たに10人ほどのパーティが大雨のなかで登山準備をしていた。なんかおかしい、と私は思った。下山し「やまぶし温泉」に浸っていた午後になっても雨は降り続いていた。教訓は翌日の天気予報は信用し柔軟な登山計画を立てなければならないことだ。山は雨の日に登ってもつまらない。再び晴れた日にやってきて登ればいいのだと思う。

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鳥海山山頂ドーム


 20日に家に帰ると北海道の大雪山系と美瑛山のツアー登山遭難事故が報じられていた。死者10人は悲惨だ。私には原因はすぐに判断がついた。原因は自分で縦走登山計画が立てられずツアー会社に全てを依頼する登山姿勢が大量遭難を生んだのです。登山に限らず重要なことは問題が発生した時に自分で的確な判断が出来るか否かだと思う。そのために日々の生活の中から自分を見つめなおしていくことを通しての判断力の訓練が重要になっているのだと思う。今回の大量遭難は中高年の「日本百名山登山ツアー」に安易に乗っていくことへの警鐘だろう。同じ登山を趣味とする一人として今回の大量遭難で亡くなられた方に合掌。

 

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