芦安温泉慰安の山旅
芦安温泉・岩園館の大岩露天風呂
8月31日
12時30分に甲府駅前バス停に集まったメンバーは、ポパイ吉原、エンジニア小林、ちびっこ小沢、ワークホリッカー山本、デブトラ碓井、それにエイトマン岩井の6名だった。今回の夏山縦走登山は8月31日〜9月3日の3泊4日の予定で南アルプス北岳登頂と白峰三山を縦走し奈良田に下山、奈良田温泉で山旅の疲れを癒すという計画だった。しかし、台風15号の接近によって3000m縦走はリスクが大きいと判断し、2日前の8月29日に以下の2通のメール文によって計画変更周知を行った。
「台風15号接近につき予定を変更します」
夏山縦走も明後日からに迫ってきました。幕張では雲ひとつない快晴ですが台風15号が台湾の東側を北上中です。天気予報では9/1〜9/2にかけ、九州に上陸し日本列島を串刺しに通過し、秋雨前線を刺激し大雨を降らせるかもしれないとのことです。
日本海側、太平洋側のいずれを通過するにせよ3000mの稜線は暴風雨に見舞われるでしょう。従って今回の北岳・白峰三山縦走登山は天候不順のため中止したいと思います。
しかしながら、年1回の夏山登山イベントですから8/31の広河原山荘の宿泊と翌日(9/1)は芦安温泉・桃の木温泉入浴、南アルプス温泉ロッジが宿泊可能なら宿泊するというコースに変更したいと思います。
「白峰三山縦走は来年に延期しますから山道具は必要ありません」
1、白峰三山縦走は来年に延期しますから山道具は必要ありません。
2、2泊3日の着替え程度ですから簡単なザックで、登山靴は必要ありません。
3、酒やツマミは必携です。(*゜▽゜*)
その結果、3泊4日の縦走計画は2泊3日の温泉慰安山旅に変更になったのであった。
甲府からの広河原行きバスは満員だったが、山の神バス停で6人の女性登山者グループが下車した。更に夜叉神峠バス停で6人の男性登山者グループが下車した。終点の広河原バス停では私たち6人のグループと盛岡から来た夫婦連れが下車した。私たちは野呂川に架かる吊り橋を渡り広河原山荘にザックを下ろした。吊り橋から仰ぎ見る北岳は八本歯のコル下の雪渓が望めたが上部は厚い雲にすっぽりと覆われていた。
山荘の受付を済ませ2階の大部屋にザックを下ろすと当然のように酒とツマミを持って野呂川の河原へと降っていった。手頃な平らな岩をテーブルに見立てて宴会が始まる。みんな当然の顔をしている。15時開始の宴会は17時の夕食時まで続くこととなった。ワインも日本酒も美味かった。
広河原山荘は、現在南アルプス市の市営となっているが1984年に芦安町の町営として営業を開始した山小屋だった。私たちは今回と同様な北岳登頂・白峰三山縦走を山荘10周年記念の1994年に行い奈良田温泉に下山していた。その折に山荘から記念品として頂いたハーケンをかたちどったミニナス環を碓井が持参していた。それを夕食時に山荘の従業員に見せると、世代交代をしていた従業員の誰ひとりとして初めて見るものだという。なかには携帯電話で写真を撮る者もいた。来年は山荘30周年となるので、なにか記念イベントを企画しているのかを問うたが、今のところ予定はないとのことだった。山荘は来年で一区切りをつけて小屋を解体し新築する予定だという。10周年記念時の管理人は芦安温泉の山岳館館長として勤務しているとのことだったので翌日訪ねることにした。
広河原山荘前の登山メンバー6名
9月1日
天気予報では午後から雨が降り出すとのことだったが朝から小雨が間断なく降り続いていた。山も裾野まで雲にすっぽり覆われている。昨日は北岳頂上直下の肩の小屋から上は強風で危険なので登山中止になっており、稜線は強風に吹き飛ばされないように這って歩くのが精一杯だった、という登山者の声を小屋の従業員から聞いたが、このような気象条件にもかかわらず山頂を目指して登山者は登っていく。前後に日本人ガイドを置く16人の外国人パーティも登っていった。今日も荒れるのは分かっているのに登って行くなど正気の沙汰とは思われない。折角計画しここまで来たのだからとか、折角会社を休んで来たのだからとか、お金もかかっているからとかという理由で天候不順時に登山を強行するのは事故のもとである。
山梨の森林100選「広河原のカツラ林」
芦安温泉まで戻るバスの待ち時間を利用して小雨の中、遊歩道を歩き大樺沢吊り橋を渡って野呂川河川敷公園を歩いてみた。樹齢何年になるのか分からないが大きな桂の林の中に遊歩道が続いていた。実に立派な桂の林だ。その林は「広河原のカツラ林」として山梨の森林100選に選ばれている旨の表示版が立っていた。改めて林を見上げ、なるほど、なるほどと納得した。秋になったらハート型の丸い葉が黄色く色付き見事だろうなぁと想像した。公園内には所々に休憩所の東屋が建ち、周りの岩や石はびっしり苔がむしていた。
広河原山荘の元管理人が館長をしているという南アルプス芦安山岳館に向かった。向かう途中で乗合タクシーの運転手が話していたことだが、昨日は甲府から広河原まで乗ってきた登山者がタクシーから降りることなく天候不順を察し、そのままUターンして甲府に戻ったグループあったとか、稜線では風速30mほどの強風が吹き抜け、立って歩けなかったという女性登山者の声などを話していたので、私たちも天候不順のため登山を中止した旨を伝えると、正解、正解、全く正解、と納得していた。
入館料200円を払い芦安山岳館に入って受付嬢に、広河原山荘の元管理人で館長をされている方はいるかどうかを尋ねると、今日は一日中出張で出かけているとのことで残念ながら会うことは出来なかった。南アルプス芦安山岳館は10年前の2003年に開館し、山岳文化の発掘と研究・継承、自然保護や安全登山の普及、山を仲立ちとした様々な交流を目的としており、氷河時代から生き続ける高山のキタダケソウ、ライチョウや里山としての芦安地域の自然や文化の一端を知ってもらうための施設だという。
施設内部を回ってみると、山岳図書コーナーに並べられた登山関係の本は圧巻だ。情報スペースコーナーではNHKテレビで放映された「北岳に咲く花」のビデオを見せてもらった。企画展では写真展が開かれていた。一枚一枚の写真タイトルに撮影者の気持ちが現れており、素晴らしい写真もあった。また、常設展示室には、北岳を中心に生活する動植物、登山道具や登山地図の変遷、山案内人、かつて使った山仕事道具、ヒマラヤ登山中に雪崩で死亡した芦安出身登山者の略歴と遺品と遺稿集、河川の氾濫・土砂崩れの復旧状況、などが詳しく標示されていた。また、日本全国を徒歩測量した伊能忠敬の歩幅が床に貼られていたので、その上を歩いてみたが忠敬という人は結構大股の人だったと感じた。
三段の滝
大岩露天風呂に入るために宿泊予定の岩園館に向かった。タクシーの運転手は芦安山岳館から徒歩10分と言っていたが30分ほどかかった。フロントで宿泊手続きを済ませると休憩室に荷物を置き目的の露天風呂へ突撃である。屋上にも露天風呂があるが鍵がかかっていて入れないという。広くてのんびりできる岩風呂である。ひと風呂浴びたあとはビールの乾杯とともに宴会のスタートである。20年ほど前は岩園館でも昼食を出していたのだが、利用者の減少のためか昼食は止めてしまった。そのため広河原山荘で作ってもらった弁当での昼食である。2時間ほどの宴会を終えると旅館から山道を徒歩10分と標示されていた「千段の滝」を見に行った。
「三段の滝」「覗き見の滝」「千段の滝」と見所は3ヶ所に表示されていた。山道は楓をはじめとした落葉樹の林の中を登っていくので紅葉の季節は素晴らしい景色になるだろうと思った。滝から落ちる水は今年の夏は雨が降らなかったので細く頼りない渇水状態だったので少し物足りなかった。
滝見を終えるといよいよ「温泉旅館卓球大会」である。エンジニア小林が仕事の関係で昼食後に帰宅したので卓球大会の出場選手は、ポパイ吉原、ちびっこ小沢、ワークホリッカー山本、デブトラ碓井、エイトマン岩井の5名となった。碓井が球を持参したのでフロントからラケットを借りて7ポイント先取の総当たり戦がスタートした。結構熱くなる。額から汗が落ち、着ている浴衣が汗にまみれる。熱戦?の結果は、優勝(4勝0敗)はポパイ吉原、準優勝(3勝1敗)はデブトラ碓井、第3位(2勝2敗)はちびっこ小沢、第4位(1勝3敗)はエイトマン岩井、そして最下位(0勝4敗)はワークホリッカー山本という結果になった。優勝したポパイ吉原は職場の昼食時休憩で毎日30分程卓球の練習をしているというのでは優勝して当然の結果であった。
温泉旅館卓球大会
今回は台風15号の接近という事態に3000m縦走を温泉慰安山旅に変更したが、参加したメンバーは一人ひとりがそれなりに楽しんだ山旅だったと思う。