アサギマダラに出会えた

 

木の枝に止まっている鳥

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アサギマダラに出会った

 

8月4日 金曜日 晴れ

幕張では気象庁が関東甲信越の梅雨明け宣言を出す前から連日35℃を超える極暑の日々が続いていた。外に出ると危険を感じる暑さなので、家の中でクーラーを効かせて過ごすのもいいのだが、山のなかを歩いて涼もうと考え、今回の奥多摩ワンデーハイキングを計画した。今回は奥多摩三山に挙げられている三頭山から南東方向に派生し、生藤山まで伸びる笹尾根を歩くことにした。笹尾根は長い尾根なので、区間を区切って過去2回歩いている。

 

山に囲まれた家

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檜原村に多い兜造りの屋根を持つ住居

 

1回目は東京都奥多摩側の檜原都民の森から三頭山に登り、槇寄山まで歩いて西原峠から数馬に降りた。2016年5月のことだった。2回目は神奈川県上野原側の井戸から生藤山に登り、浅間峠まで歩いて上川乗へ降りた。2022年12月だった。今回の3回目は上川乗から浅間峠に登り、槇寄山まで歩いて西原峠から数馬に降りる計画だった。今回の距離は約14km、標高差は778m、徒歩予定は7時間だった。今回のルート歩くことで三頭山から生藤山まで伸びる長い笹尾根を全て歩くことになった。

 

木の枝に止まっている鳥

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アサギマダラに出会えた

 

今回の7時間近く山のなかを歩いて特徴的なことが2点あった。

第1点はアサギマダラという蝶に出会えたことである。アサギマダラの大きさは翅を広げると5〜6cmの比較的に大きな蝶で、アゲハチョウのようにふわふわ頼りなさそうに翔ぶ。日本で孵化成長するものや、台湾などの南の国に渡って孵化成長するものがおり、海を渡る蝶として有名である。そのアサギマダラに5頭出会ったのである。蝶を数えるときは1匹2匹ではなく1頭2頭と数える。蝶が枝などに止まって動かずにいれば通り過ごしてしまうが、いずれの蝶も私の足元から舞い上がったので目にとまったのである。従って奥多摩の山々には多数のアサギマダラが生息しているものと考えられる。

 

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戦闘態勢のマムシに出会った

 

 第2点は戦闘態勢をとり、やるき満々のマムシに出会ったことである。ハイキングも終盤に差し掛かり、西原峠から槙寄山への上り坂を歩いている時に、前からのジッジッ、ジッジッという聞きなれない短い音に気がついて歩みを止めた。何だろうと前を確認すると私の1mほど先にマムシが鎌首を上げ、尾を小刻みに左右に動かし、戦闘態勢をとって威嚇の声を上げていたのだった。マムシを確認した時に思わず1、2歩後ずさりした。しばらく注視していると、鎌首が下がり振っていた尾も静まり、威嚇音も聞こえなくなった。マムシは動き出して登山道を横切ろうと中ほどまで出てきた。棒を拾ってマムシに投げつけると、ピタッと動きを止めこちらを睨みつけ、再び威嚇の戦闘態勢に入った。いやはやなんとも。鎌首を上げ、尾を小刻みに震わせている。ガラガラヘビが戦闘態勢に入ると尾を小刻みに震わせて鎌首を立て威嚇音を発するのをテレビの映像で見たことがあるが、マムシも同じようになると初めて知ったのである。これまで山中でアオダイショウ、ヤマガカシ、ジムグリ、マムシなどに出会っているが、だいたいは静かに藪のなかに去っていくのだが、今回のマムシは違っていた。しばらく経つと右の方に回り込み、それでも私の方を見ながら去って行ったのである。あのまま威嚇音に気がつかず、1、2歩進んでいたら必ず飛びかかられて噛まれただろう。いち大事になるところだった。こういう突発的なことも山旅では起こるのだ。

 

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武蔵五日市駅前のバス停

 

幕張駅5時45分発の電車に乗るため自宅マンションを出ると、裏の三代王神社の森からミンミンゼミやアブラゼミの声が盛んに聞こえ誠に騒々しかった。武蔵五日市駅に着いたのは7時39分だった。バス停で都民の森行き急行バスを待っていると、メジロの巣立ったばかりの雛がバス停脇の道路に降りており、親鳥が心配そうに気づかっていた。このままだと車に轢かれる可能性があるので、私の手のひらに乗せて歩道の草の中に移してやった。親は近くの木の枝から私の行動を心配しながら見ているようだった。

 

屋外に立っている鳥

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車道で鳴くメジロの雛

 

 草の上に移したメジロの雛は歩道に歩き出してしまい、それを見たバス停の乗客が手のひらに囲い込んで駅前交番に届けようと歩き出した。私は「そのままにしておいてください。親鳥が雛を見守って餌も運んできますから大丈夫です」と声をかけると70代と思われる男性は歩道脇の草の上に雛をそっと置いた。日本野鳥の会では野鳥の子育ての時期に「野鳥の雛を拾わないでください」というキャンペーンを行っており、雛を拾って家に持ち帰っても結局育てられずに死なせてしまうので、雛は親鳥に任せるのが一番であることを話した。男性は納得してくれた。

 

草の上に置かれた野菜

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ウラシマソウの朱色の実

 

上川乗バス停で降りた。バスには20人ほどの乗客がいたが、バス停で降りたのは私ひとりだった。檜原村には兜造りの屋根の立派な家が散在する。バス停の近くにもあった。GPSを設定して歩き出した。10分ほどで上川乗登山口に着いた。登山口にはウラシマソウの実が赤く熟すところだった。ウラシマソウの実は見た目がヘビのウロコを思わせるようなので私の育った群馬ではヘビの腰掛けと呼んでいた。ヒノキが植林され陽の当たらない湿った登山道を歩き始めた。念のためにザックにクマ鈴をつけ、金銀の鈴の付いたトレッキングポールを右手に持って歩き出した。浅間峠までは結構な九十九折りの急登が続くのである。昨年12月に浅間峠から上川乗バス停に下山したので、一度歩いたことのある山道である。登っている山道は「関東ふれあいの道」に指定されており、所々に石の表示板が見受けられた。遠くからアオバトのクワーォクワーォという間延びするような鳴き声が聞こえてきていた。

 

森の中の家

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浅間峠に着いた

 

静寂に包まれた林のなかは無風だった。時折りジャアジャアというカケスのダミ声が聞こえてきた。それ以外はザックにつけた小さなリンリンというクマ鈴の音とポールにつけた鈴の音だけが聞こえていた。ひと汗かいて浅間峠に着いた。初めて給水休憩となった。浅間峠には「関東ふれあいの道」の石碑と説明板が立っていた。現在地点が赤文字で表示されていた。峠には渡ってくる風もなく実に静かだった。

 

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檜原峠に置かれたお地蔵さん

 

エゾハルゼミが泣き、クヌギやコナラが育つ明るい尾根道を歩いて行くのは、とても気持ちがいいものだ。太陽の光をたくさんの葉っぱが遮断し、微かな木漏れ日が山道に射しこんでいる。行き交う人のない山道は、それだけでも都会の喧騒から逃れ、清々しい気分にしてくれる。檜原峠に着くと日本山岳耐久レース24、7kmの標柱が立っていた。交差する道の中央に赤い前掛けをしたお地蔵さんが置かれていた。お地蔵さんの前に1円玉、5円玉、10円玉のお賽銭があげられていた。

 

森の中にいる

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日本山岳耐久レースのコース案内テープ

 

山道に沿ってピンクのテープが風になびいていた。その数もおびただしい数なので何だろうと不思議に思っていたのだが、日本山岳耐久レース71,5km(通称ハセツネカップ)のための道しるべのピンクテープだろうと想像した。ハセツネカップはヨーロッパアルプス3大北壁を冬季に世界で初めて登った登山家であった長谷川恒夫がパキスタンのウルタルU峰の登山中に雪崩で亡くなり、その2年後から東京都山岳連盟主催で長谷川恒夫の偉業を顕彰する意味を込めて毎年行われている24時間山岳耐久レースであり、真夜中でも山道を歩き、あるいは走ってゴールを目指す非常に厳しい山岳レースである。今年(2023年)の第31回は10月8日13時にスタートする24時間時間制限レースとして開催される。

 

森の中に立っている男性

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土俵岳1005mに着いた

 

今回のコースでは初めての山頂である土俵岳1005mに着いた。北側が切り開かれており、左側に三角形をした御前山が見えた。右にしばらくいくと大岳山の特徴ある山頂が見え、その先に馬頭刈尾根が長く延びていた。これらの山々や尾根もハセツネカップのコースとなっている。スマホのBluetooth機能を使って写真を撮った。微かな風が吹いており、さわさわ木の葉が擦れる音が耳に心地よい。今の季節に広葉樹の森を歩くと、見晴らしは悪いが太陽の強烈な日差しが遮られるので心地よい歩きとなる。上川乗バス停から歩き出して3時間たつが、今までに出会った登山者はひとりもいなかった。

 

森の中の道

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丸山1098m山頂に着いた

 

小ゆずり峠を越えて丸山1098m山頂に登る途中で1頭目のアサギマダラに出会った。美しい蝶だが、ゆらゆら寂しくも思える舞う姿は儚さを連想させる蝶だと感じる。右手にボールを持ち、左手に大きめのクマ鈴をガランガラン鳴らして60代と思われる男性登山者がやってきた。今日すれ違う初めての登山者であった。短い挨拶をしてすれ違ったが、あんなに大きな音をさせずに静かな山旅をした方がいいのではないか、と思うが人それぞれである。

 

木の枝に止まっている鳥

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5頭の海を渡るアサギマダラに出会った

 

笛吹峠を越えたところで2頭目のアサギマダラに出会い、その後に数馬峠に着いた。雲が湧きだして空の大半を覆ってしまった。残念ながら富士山は雲の中だ。数馬峠を越えたところで3頭目のアサギマダラに出会った。足元から飛び立ち、ひらひらと木の枝をくぐり抜けて去ってしまった。アサギマダラに出会って100mほど進むと日本山岳耐久レース30km地点の標柱が立っていた。4頭目、5頭目のアサギマダラに出会ったのは、田和峠から西原峠に向かう広葉樹の林のなかだった。枯れ枝に止ったところをそっと近づいてスマホで写真を撮った。

 

草の上にいる動物

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藪のなかへと消えていくマムシ

 

西原峠に着いたのは14時だった。ここから下れば数馬の仲の平バス停に向かうことができる。浅間峠から歩いて9、1kmの地点が西原峠だった。尾根道と峠道が交差する四つ角で、この尾根道の先にある槙寄山に寄っていこうと思い、そのまま直進した。その上り坂で戦闘態勢のマムシに出会ったのである。いやはやなんとも。

 

森の中に立っている男性

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槙寄山1188mに着いた

 

槙寄山1188mに登り、ベンチで休憩しながら行動食のカロリーメイト、柿ピー、生キャラメルなどを食べたあと西原峠まで戻り、植林されたスギ林のなかを仲の平バス停まで降りた。バス停の手前300mのところに数馬の湯の源泉を汲みだしている設備があった。国道を右に折れて檜原温泉センター数馬の湯に向かった。

 

駐車場に駐車している数々の家

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檜原温泉センター・数馬の湯

 

数馬の湯は以前から入ってみたい温泉だった。入浴料980円を払って温めの湯につかった。浴室内に内風呂は3つあったが、湯舟は思ったより小さく、打たせ湯は壊れていた。露天風呂に出てみると、こちらの湯船も小さく3人はいればいっぱいという感じだった。他には陶器の釜風呂がひとつあった。なんだか期待外れの感じがしたが、それでもハイキングでかいた汗を流せるのはありがたいことだった。

 

テーブルの上の食事

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地元の食材をツマミに乾杯

 

ハイキングの汗を流したあとは、レストラン「心和む森のホール」に入り、無事に下山できたことを祝してビールで乾杯だった。つまみは舞茸の油炒めと田楽おでんだった。喉が渇いていたのでビールは胃に滲み、地元産の舞茸もこんにゃくおでんも久しぶりに食べたので美味かった。歩いた歩数は35485歩だった。

 

アプリケーション, マップ

自動的に生成された説明 グラフ

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ヤマップの登山活動データ

 

 今回の山旅は8月下旬に出かける前穂高岳・奥穂高岳・涸沢岳・北穂高岳縦走登山のための準備で7時間の山歩きをするものだった。結果的には出発からゴールまでで6時間40分という経過時間だった。山のなかの凸凹道を歩いて身体のバランスを山旅に慣らすことが目的であり、岩稜歩きと低山歩きの違いはあるものの、尾根の標高の低いほうから高い方へと登っていくコースを選び、標高差1259mの登り、1016mの下りは身体への負担を感じさせるものであり、準備としてはまあまあだったと感じている。

 

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