紅葉と温泉の雨飾高原へ
紅葉の鎌池から望む雨飾山
10月22日 土曜日 曇り
10月下旬、紅葉と温泉を楽しむために2泊3日の日程で長野県大町温泉郷に出かけた。10年前にアフリカのキリマンジャロ登山に出かけたときの仲間が大町温泉郷に別荘を持っているので、春・夏・秋の季節にスケジュールを調整しながら集まっているのである。今回は長野新潟の県境にある深田百名山に選定されている雨飾山登山口にある雨飾高原へ出かけた。別荘から車で1時間ほど走ると雨飾山登山口がある小谷温泉の雨飾山荘へ到着した。さらに奥にある鎌池駐車場まで車で入った。当日は紅葉狩りの観光客で駐車場は満杯であった。駐車場から鎌池を一周する遊歩道に入ると、ブナやクヌギが黄色に、ナナカマドは赤く色づき、紅葉は真っ盛りだった。鏡のような静かな水面には東山魁夷の写し絵のように紅葉の木々が映し出されていた。
鉈池にはイワナが泳いでいた
今年の紅葉は茶色が多く今ひとつパッとしないようであるが、それでも紅葉は真っ盛りである。多くのカメラマンが三脚を立て、日が差し紅葉が映える一瞬を待ち構えていた。鎌池を一周すると約1時間で、高低差がほとんどないため、ゆったりとした気分で紅葉を楽しむことができた。鎌池一周の途中で鉈池に向かった。鉈池は規模が小さいが、静かな水面下にイワナが泳いでいるのがよく見えた。雨飾高原は中部山岳国立公園内に位置するために禁漁となっている。魚たちものんびり泳いでいるように感じられた。
ブナ林の中の雨飾高原露天風呂
紅葉を楽しんだあとはブナ林の中にある源泉かけ流しの無料露天風呂が待っていた。男女別になっている露天風呂は、数年前に整備されたとのことで実に静かな雰囲気の中で少し温めの湯を味わうことができた。近くで鳴くゴジュウカラ、シジュウカラ、コガラ、コゲラの姿が目に止まった。
秘境の蕎麦屋として有名な『蛍』
温泉を楽しんだあとは秘境の蕎麦屋として有名な『蛍』に向かった。蛍は11時から開店したところで、私たち5人が着いた時は最初の人たちが食事中で、受付簿には5組が待機している状態だった。以前、夏に訪れた時は待たずに入れたが、今回は紅葉の時期も相まって、山の中の一軒家の蕎麦屋にも関わらず、外で待っている人たちでいっぱいで、まさに行列ができる蕎麦屋である。受付から1時間ほどで前回と同じ座敷に通された。私たちは蕎麦と季節の天ぷら、クルミとゴマのつけ汁を頼んだ。蕎麦が出来上がってくるまでにクルミとゴマをすりながら四方山話が弾む。私だけは雨飾の名前がつく日本酒を飲んだ。うまい日本酒だった。
霊松寺の鳴き龍
酒を飲み、蕎麦を食べ、茹で汁で割ったつけ汁を飲むと、お腹はパンパンになった。食後は霊松寺に向かった。霊松寺は本堂の天井に描かれた鳴き龍や隠し部屋で有名とのことだった。境内の紅葉はまだ早いようで、ドウダンツツジやカエデの色付きもまだ始まったばかりだったが、丁度23日から本堂内や庫裡内の内覧が始まっていた。実際に鳴き龍の真下で手を打ってみると、体に力強く反響が伝わってくるのが実感できた。庫裡の2階に隠し部屋があるので上っていった。壁がクルリと反転する仕組みだった。なるほどこういうものを作ったのかと思わせる面白さだった。以前、金沢市で忍者寺に入った時のことを思い出した。お寺に黄色のステンドグラスが使われているのにも驚いた。
鷹狩山山頂の恋人の聖地モニュメント
霊松寺の次に訪ねたのは鷹狩山だった。山頂までの道はくねくねと曲がり、対向車が来ればすれ違うのが大変な状況だったが、ドライバーは腕がしっかりしており、安心して任せることができた。山頂に到着すると目の前には後ろ立山連峰が一望のもとに見渡せた。特に正面には蓮華岳が大きく登場し、爺ヶ岳、鹿島槍ヶ岳、白馬三山は山頂部が雲に隠されていた。また鷹狩山の山頂に「恋人の聖地」と名付けられたハート型のモニュメントが作られていた。せっかくなので妻と共に写真に収まった。最近では、この場所で恋人たちがプロポーズするのが流行っているらしい。しかし駐車場には「クマ出没注意」の大きな看板が立っていた。熊と出会ったならばアツアツ気分も急速に冷え込んでいくに違いないと思った。
七色の楓
鷹狩山から大町温泉郷の別荘に戻る途中で「七色の楓」という大きなカエデを見に行った。広場では地元の地域おこしのイベントが行われているようで、たくさんのテントが立ち、模擬店では五平餅、カレー、コーヒーなどが売られ、更にカエデの幼木も売られており、観光協会もパンフレットを配っていた。別荘に帰宅したあとは準備を整えて再び温泉に出かけた。
霊松寺本堂の守り神・夫婦雷神
今日1日の行動を振り返ってみると、別荘を出発したあと雨飾高原の鎌池・鉈池の紅葉を楽しみ、ブナ林の中にある野趣たっぷりの露天風呂に入り、秘境の中のポツリと一軒家の人気の蕎麦屋で酒を飲みながら昼食を摂り、霊松寺の鳴き龍と隠し部屋を体験し、さらに鷹狩山の山頂から後立山連峰を一望し、恋人の聖地で紅葉を楽しみ、七色の楓に出会い、下山して別荘に戻ったあとは再び大町温泉郷の温泉に入る、という実に贅沢な満足満足の1日を過ごしたのであった。