ゾッキョ・ドライバー

 

IMG_7757バブラムとマダン

バブラム君(兄)とマダン君(弟)

 

 ネパールやチベットなどの標高の高いところで飼われている家畜で雄をヤクと呼び、雌をナクと呼ぶウシ科の動物がいます。日本で飼われている乳牛:ホルスタイン牛よりもひとまわり小さい体をしています。体毛が太く長く垂れ下がっており、尾の毛も長くふさふさしています。このヤクと牛とを交雑させて生まれた子牛の雄はゾッキョと呼ばれおり、荷物運搬用に使うため4歳から5歳で去勢されてしまいます。雌はズムと呼ばれ生まれても体が弱く成長することなく亡くなってしまいます。ともに悲しい運命です。

 

 アンナプルナ方面やダウラギリ方面へのトレッキング時には荷物はポーターが運びますが、エベレスト街道における荷物運搬にはヤクやゾッキョが多く見受けられます。そのヤクやゾッキョの背に荷物を括り付け、宿泊地から次の宿泊地まで運ばせる役を担うのがヤク・ドライバーやゾッキョ・ドライバーと呼ばれている人たちです。

 

 今回、私たちのパーティに参加したゾッキョ・ドライバーはチェットリ族:士族階級で27歳のバブラム君でした。10人の兄弟姉妹(男6人、女4人)とのことで、弟の17歳のマダン君はポーターとしてゾッキョでは運べないガスバーナーや液体燃料などを運んでいました。ヤクやゾッキョは1頭で約80kgまでの荷物を運ぶことができ、約20年ほどの寿命と言われています。食事は朝晩の2回、主に干し草を与えられ、糞は台所での炊事燃料や糞ストーブの燃料として有効に利用されています。

 

 荷物運搬の場合の賃金は距離に関係なく5km運んでも50km運んでも1kg当たり500ルピー(日本円換算で500円)とのことで、今回のバブラム君はゾッキョ1頭に60kg70kgを積んでいたので3000035000ルピーで、3頭のゾッキョが働いていましたから90000105000ルピーの収入があったことになります。バブラム君は5頭のゾッキョを飼育していると言っていました。日本語は通じませんでしたがアイコンタクトでなんとなく心は通じるもので好青年でした。

 

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荷物を運ぶゾッキョ

 

 ある晩、夕食時になってもバブラム君が食堂に来なくスタッフは心配して心当たりのロッジを探しましたが見つからず、朝になって確認したところ宿泊地到着後に荷物を下ろしたゾッキョが勝手にバラバラに移動してしまい、そのゾッキョを探し出して餌を食べさせていたので食事時に食堂に行くことができなかったとのことで、暗闇の中でゾッキョを探し出す苦労は大変だっただろうと思いました。バブラム君のゾッキョには1頭ずつ名前が付いており、顔が白黒でいたずら好きなミッダ、角が丸まっているループ、それとカーレと呼ばれており、首から吊り下げてあるカウベルの音色も違っていました。

 

 私も中学生のころまでは群馬の生家で和牛の世話をしていましたので、ゾッキョの憂いを含んだような大きな瞳を観ていると50年〜60年前のことが思い出されました。牛は本当に従順で優しい目をしています。

 

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