感動の写実細密画だった山本大貴展

 

髪の長い女性

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まるで写真のような細密画だった

 

 購読している東京新聞の千葉県版に、千葉県立美術館で山本大貴展が開催されている記事が載った。一読して観に行くことにした。隣で雑誌を読んでいた妻に、「一緒に行かないか?」と声をかけると、「今日の予定はない」というので一緒に行くことになった。

 

建物の外に立っている男性

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お馴染みの千葉県立美術館の入口で

 

 千葉県立美術館は毎年夏に開催する『千葉市水墨画同好会連合会展』に作品を展示しているので、馴染みの美術館であった。美術館の入口を入ると受付でアルコールによる手指の消毒と検温、居住地、名前、連絡先の記入を済ませて山本大貴個展の受付に進んだ。受付には「65歳以上は無料」と書かれていたので、免許証を提示して会場に入った。平日であったが鑑賞する人は多めだった。

 

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ドレスの襞やレースの質感も素晴らしい

 

 私は東京新聞の記事を目にするまで山本大貴という画家を知らなかった。実際に展示されている作品を観て、その写実の精密さと描写力にビックリした。以前、ホキ美術館で日本を代表する森本草介の写実精密画を観たことがあるが、その作品と同等レベルの作品だと直感した。山本大貴は千葉県習志野市の出身で武蔵野美術大学・大学院を卒業した40歳の画家である。パンフレットには次世代を担うと書かれているが、次世代ではなくて現世代を代表する画家だと思った。

 

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最近はやりのメイドスタイルは生きているようだった

 

 展示されていた42の作品群は全て美術館蔵か個人蔵となっており、既に売却されたものを美術館での個展開催のために借り出して展示されたもので、作品はすぐに売れてしまう人気画家の個展だった。会場には美術大学卒業記念・大学院修業記念作品も展示されていたが、原色を使っているので最近の作品に比べてケバケバシイ感じを受けた。最近の作品は色彩を抑え気味にしており、モノトーンに近くパステルカラーのように感じた。

 

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モデルは全て実在の人

 

 山本大貴の魅力は透明感にあるのだろう。美少女の透き通るような肌、髪の毛の柔らかさ、睫毛の繊細さなどは、まるで写真のよう感じられた。アルミニウム、鉄、木などの光沢、質感、重量感、机の上に置かれている陶器や浮き上がる文様、花や花瓶の質量感もそのもののように見えた。着ているドレスの襞や材質感も表現されているし、羽織っているレースの透き通る薄さも表現され、逆光のなかで足元にいる猫の耳の血管までも油彩で実に正確に描かれているのである。浴衣を着ている少女の顔の輪郭を逆光で白く浮き上がらせた描写も見事なものだった。素晴らしい画家がいるものだと、ただただ感心したのだった。

 

テーブルの上にある数種類のパンフレット

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山本大貴自画像と使用している油絵具や筆など

 

会場の入り口に山本大貴の自画像と油絵具や筆などが置かれていた。その筆先の細さを見て、なるほどと納得したのである。私も趣味として水墨画を描いており、細い線を引く時には面相筆を使うのだが、私の持っている面相筆に比べると筆先が桁違いに細いのである。その細い筆先で睫毛や髪の毛を1本1本神経を集中しながら描いていく作業の大変さを想像した。コンピュータグラフィックスが全盛の現代において、肉筆画の存在は見直されてもいいのではないかと思った。今回の個展を観たことにより、山本大貴という写実細密画を描く素晴らしい画家がいるということを知り、その作品に出会えたことがなりよりの収獲だった。

 

テーブルの上の料理

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絵画のあとは刺身で一杯

 

 素晴らしい絵画を無料で観せてもらい、満足気分で食事を摂るために千葉駅まで20分ほど歩いた。千葉駅前にある「築地日本海」という刺身や寿司が評判の店に入った。私は刺身定食を頼み、妻は日替り定食を頼んだ。飲み物は瓶ビールにハイボール、日本酒は奥多摩の澤乃井だった。いい絵を観たあとの刺身と酒は実に美味かったのである。

 

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