狙い通りにウミアイサに会えた
4羽のウミアイサに会えた
12月3日 快晴
今日のバードウォッチングは船橋三番瀬だった。朝ごはんを食べてから、東北旅行に出かける妻と仕事に出かける息子を見送ってから自宅を出たので、三番瀬に到着した時は8時40分だった。今日の最大干潮時刻は10時となっていた。今日の目的はウミアイサとダイシャクシギに会うことだった。
飛び立つミヤコドリ、マテガイを捕らえたミヤコドリ
三番瀬に着くと西堤防側に2人、東堤防側に1人、中央干潟に3人のバードウォッチャーの姿が見えた。中央の中州に60羽ほどのミヤコドリの群れが見えたので、そこに近づいて撮影を始めた。干潟は砂浜なので大体は平らなのだが、それでも凸凹があり、周りよりも凸の部分が潮の引いていくのに従って中州として残るのである。中州が出来はじめると、まだ周りは海水が残っているので、鳥たちがいちはやく中州に降り立って、休憩や餌探しを始めるのである。
食事中のハマシギ
三番瀬で一番多く出会うのはハマシギである。ハマシギは砂の中に潜っている底生生物が主な餌だが、それだけを食べるのではなく、干潟に出ている小さなコメツキガニなどを見つけると、そのカニも食べている。要するに干潟に棲んでいる生物には毒がないので、口に入りさえすればいい、という感じなのだろう。
ダイシャクシギ(左)とミヤコドリ(右)
ミヤコドリやハマシギを撮影していると、向こうの方に目的のダイシャクシギが2羽いるのが確認できた。今日狙っていたシギ類の早速のお出ましであった。私からの距離は150mほどあったが、被写体のシギが大きいので、どうにか撮影できた。
悠々と泳ぐカンムリカイツブリ
西側堤防に上がって干潟と反対の市川港側に何がいるか確認すると、オオバンやホシハジロに混じってカンムリカイツブリが白い首を伸ばして悠々と泳いでいた。数をかぞえると8羽確認できた。スズガモも悠々と泳いでいた。港へ船が出入りするたびに、中央部で泳いでいた鳥たちが堤防の近くまで寄ってきた。
ミヤコドリとウミネコとハマシギ
干潟に戻ってミヤコドリの食事風景を観察した。ミヤコドリはカモメの群れの中で歩きながら嘴を砂の中に突き刺し、その感触によってエサを探し出す。たまに2枚貝のシオフキやマテガイに当たると小躍りして喜んでいるが、その確率は低い。カモメ類は土の中に潜っている貝などを掘り出しては食べない。死んだ魚や弱っている貝を見つけると、それを海の掃除屋として食べるのである。従ってカモメの中にミヤコドリがいても、獲物の縄張り争いで喧嘩をするようなことはないのである。
中州にいたミヤコドリの群れ
双眼鏡で観察していると、「このカモメの群れの中にズグロカモメはいますか?」と望遠レンズ付きカメラを持った男性から質問が来た。私は、「ズグロカモメは頭が黒くて目は白く、逆パンダみたいな顔をしてるから、いればすぐわかりますよ。今日はいませんね。」と答えると、「ありがとうございました」、と言って2人の仲間が待つ場所に戻っていった。バードウォッチングの場合は写真を撮るだけでなく、双眼鏡で野鳥の生態を観察すること(ウォッチング)が重要なのである。3人の仲間は誰も双眼鏡を持っていなかった。
トウネンはスリムな脚をしたスマートな鳥だ
沖の方の浅瀬に数百羽のミヤコドリが群れていた。近くの波打ち際にトウネンが2羽いた。最初は逆光だったために羽の色合いがはっきりしなかったが、私が回り込んで順光となってみると、白黒茶の綺麗な羽が浮かびあがってきた。トウネンはスリムな脚をしているスマートな鳥だと思う。
シロチドリが小走りに去っていった
10時を過ぎると徐々に潮が満ちてきたのがわかる。ハマシギの群れに混じって10数匹のシロチドリがいた。ハマシギは常に餌を探しながら歩き回っているが、シロチドリはじっとしているのですぐ分かる。歩く時は小走りのように早足である。
ヒドリガモの雄(右)と雌(左)
今日は干潟でウミアイサを見かけることがなかった。前回ウミアイサが泳いでいた東側の船橋港を堤防に上がって見た。私が干潟や西側堤防の上で観察・撮影していた時にも、東側堤防には常に4〜5人が待機しているのが見えた。東側堤防に上がってみると、ヒドリガモが10数羽の群れで海藻を食べていた。カンムリカイツブリも泳いでいたが、遥か遠くだった。ウミアイサは確認できなかった。堤防上で待機している人たちも手持ち無沙汰のようだった。
底生生物を探す女性
再び干潟に戻ると、胸まである胴長靴を履いた若い女性が、右手に透き通った円筒形のプラスチックケースを持ち、左手で干潟の砂を掘り返して底生生物の何かを探していた。船橋三番瀬環境学習館に勤務する研究スタッフのようだった。
干潟にたくさんいるコメツキガニ
干潟にはたくさんの穴が開いており、その一つひとつがゴカイや2枚貝などの底生生物やコメツキガニの穴である。たくさんの穴があることによって土の表面積が多くなり、そこに干潮時に酸素が供給される。やがて潮が満ちてくると、海水が酸素をいっぱい取り込む。ゴカイなどは直接有機物を食べて海水を浄化し、2枚貝は有機物の混じった海水を吸い込み、体内で濾過して海水を浄化するという仕組みになっている。また底生生物は鳥類の餌となっている。干潟には低生生物・魚類・鳥類など、たくさんの生物が棲むと同時に、海水を浄化するという重要な役割を担っているのである。船橋三番瀬が埋め立てられることなく、このままの状態で長く保存されていくことを願っている。
ウミアイサの雄
11時に観察と撮影を終了した。西側堤防の上には誰もおらず、東側堤防の上に5人が確認できた。東側堤防上の人たちは船橋港にやってくるウミアイサを待っているのである。干潟で観察・撮影している人は誰もいなかった。潮は徐々に満ちてきていた。今日も雲ひとつなく晴れ上がった。その暖かい光を浴びながら、草はらでいっぱいやっていたが、いつウミアイサが飛んでくるかもしれないので、双眼鏡で10分ごとに海を眺めるようにしていた。ウミアイサは一度飛んでくると、すぐには飛び去らず、その周辺で小魚などの餌を探していることが多い。その習性を知っていれば、姿を確認したあとはあまり焦ることはないのだ。
ウミアイサの雌
潮は満ちてきていた。飲み始めて2時間後の13時には神輿をあげようと思っていたところ、12時半に双眼鏡で覗いた先に見覚えのある形が映った。それは間違いなくウミアイサの姿だった。すぐに長靴を履き、カメラをつかんでウミアイサめがけて海の中に入って行った。潮はますます満ちてきており、長靴は水没し膝上までの深さとなっていた。最初2羽だったウミアイサが3羽になり4羽になった。雄が1羽で雌が3羽だった。長靴の中は海水で満たされ、ズボンは水浸しだったが、私はシャッターを押し続けた。今日の目的としたウミアイサに会えたのだ。やがて4羽のウミアイサは沖の方へと去っていった。私は心の中でガッツポーズだった。
ウミアイサの雌
ウミアイサの主食は小魚である。小魚は水深の深いところには棲まず、浅瀬に群れていることが多い。ウミアイサは浅瀬で群れている小魚を追いまわし、パニックになったところを捕らえていることが多い。ウミアイサが水深の深いところにいる場合は休憩している時であり、安全を確認して岸から離れている場合が多い。岸から離れている場合は望遠レンズを使っても、その姿を捉えることは難しい。従ってウミアイサを狙う場合は、干潟の浅瀬にやってくるところを狙うのが比較的に撮りやすいのである。私はこのようなウミアイサの習性に基づいて対応している。
干潟に徐々に潮が満ちてきた
結局、私が神輿をあげた13時に東側堤防を確認すると、まだ8人のバードウォッチャーが船橋港側を見ながらウミアイサが来るのを待っていた。ウミアイサはバードウォッチァーに人気の鳥なのである。私はすでにウミアイサを撮影したので、今日も満足の日だった。野鳥を撮影する場合は、対象とする野鳥の習性をよく観察することが重要であり、それに基づいて撮影すればカメラは高性能なので、誰でも満足できる写真が撮れると思う。