遠山正瑛先生が逝去(享年97歳)

 

2001年6月30日(土)

恩格貝・旧賓館内教室

遠山正瑛先生の沙漠講座

 

 中国の沙漠緑化実践の第1人者であった遠山正瑛・鳥取大学名誉教授が2月27日、肺炎のため鳥取市内で亡くなりました。享年97歳。心からご冥福をお祈りいたします。

 

 私が先生にお会いしたのは3年前の「NTT東日本労組・沙漠を緑に!第1次緑の協力隊」のメンバーとしてクブチ沙漠の恩格貝へポプラの植樹ボランティアへ参加したときでした。その時の感想については本ホームページ内に「2001年クブチ沙漠」として書きましたが、当時、先生は95歳の高齢でありながらも話される内容も言葉も実にしっかりとされており、大地が沙漠化されるのを阻止し沙漠を緑化する実践力を強く訴えていました。情熱の塊のような先生の姿が昨日会ったように思い出されます。

 

 先生が1991年に設立された「日本沙漠緑化実践協会」は、中国内蒙古自治区クブチ沙漠の恩格貝において植林活動を開始し、2003年3月現在、304万本を植林。日本からの植林ボランティア参加は延べ約7800名に達し、砂丘の移動を止めるため沙漠において農業をはじめとする持続可能な産業の定着を図ることを目標とし沙漠緑化活動を展開しました。

 

砂漠に木を植えて緑に変えようという誰も考えなかったことを、また考えたとしても不可能の文字の前に誰も実践に移さなかったことを遠山先生は、「全てが実践であり実践の後に道は開ける。何事も始めなければ何も起こらない。」として試行錯誤の後に砂漠緑化の道を切り拓きました。その先生が切り拓いた地平の後に次々と志を抱いた人たちによって様々な組織によって緑化活動が活発に行われるようになり、中国政府としても緑化政策に本腰で取り組む現状が現れているといえます。遠山先生の沙漠を緑化するという意思とその功績は計り知れないものを次の世代に残したと思います。

 

3月1日の人民日報第5面に、遠山先生の生前の活動を紹介する文章が掲載されました。主な内容は次の通りです。 (「人民網日本語版」2004年3月1日 Web版から)

 遠山教授は1972年の退官後まもなく、中国の砂漠緑化の研究に取り組み始めた。その後、中国科学院(科学アカデミー)との協力プランを開始。帰国して日本沙漠緑化実践協会を設立し、中国へ砂漠開発協力チームを派遣した。1991年には、内蒙古自治区の恩格貝砂漠開発モデル地区に、指導責任者として招かれた。このとき遠山教授はすでに84歳という高齢だった。恩格貝では、日除けの帽子に作業服・長靴のいでたちで道具袋を背負う遠山教授の姿がよく見られた。毎年8〜9カ月の滞在期間には、毎日10時間近くにも及ぶ作業を続けた。

 遠山教授は日本へ帰国するたびに、新聞や雑誌のインタビュー、テレビ出演、セミナー出席などに奔走し、砂漠の開発・整備事業のPR活動を行うほか、砂漠緑化のために精力的な募金活動を展開した。遠山教授の呼び掛けにより、10年間で335チーム・6600人余りが日本から恩格貝に赴き、中日友好のシンボルとなる樹木約300万株を植えた。

 砂漠緑化の地として恩格貝を選んだ理由について、遠山教授は「日中の人々の間には、長い友好関係がある」と何度も語っている。遠山教授はこれまで、奈良時代に日本へ渡航した中国の高僧・鑑真和上(688年生〜763年没)により日中関係が親密さを増した歴史に触れたり、「第二次大戦後に中国の一般家庭で日本の残留孤児が育てられたことに恩返しをすべきだ」と話したりしていた。

 遠山教授の精神は人々に感動を与え、人々から尊敬を勝ち取った。遠山教授の貢献を称えるため、内蒙古自治区政府は「栄誉公民」の称号を授与した。国連も遠山教授に「人類に対する思いやり市民賞」を贈っている。江沢民前国家主席は、遠山教授と二度にわたり会見し、中国の砂漠緑化への貢献を高く評価した。恩格貝の砂漠開発規範区には、遠山教授の銅像が立てられている。台座には「遠山先生は砂漠化防止を世界和平に通じる道と考え、90歳の高齢でありながらたゆまず努力し、志を変えなかった。この精神は尊敬すべきであり、志は鑑(かがみ)とすべきであり、功績は称えるべきである」

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 実際、現地に立つと見渡す果てまで砂・砂・砂が連続している荒涼とした風景の中でポプラを植林した所が緑となって広大に広がっており、その先はまた見渡す限り沙漠が連続していました。この文章を書いている時でも沙漠化は着々と進んでいます。日本は幸いなことに春夏秋冬の四季に恵まれ過ごし易い地域ですが、砂漠化で緑が減少していくことは地球環境の温暖化とも密接不可分なことであり、今世紀最大の問題点として注目を集めるようになりつつあります。そのような時に沙漠を緑にという遠山先生の発想力とそれに応えた人間の実践力に素直に感動しました。

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