大空を舞うトキに出会えた
大空を舞うトキ
10月30日
トレッキングツアーの最終日は五重塔のある妙宣寺、藁葺き屋根の能舞台がある大膳神社、真言宗の八祖を祀ってある慶宮寺を訪ねたあと、紅葉を楽しむために男神山展望台に登り、おにぎりのお昼ごはんを味わったあと紅葉山に向かった。昨日の金北山トレッキングは黄色や朱色が鮮やかななかでの縦走だったが、今日はそれにカエデの赤色が混じり、錦織りなす錦繍の紅葉が見られた。丁度、カエデの赤が真っ盛りの時季を迎え、青空に映えて実に素晴らしい景色を見せてくれたのだった。紅葉を楽しんだあと、予定には書かれていなかったトキに出会う時間がセットされていた。
餌を探すトキ
今回の山旅のフィナーレは佐渡の鳥として有名なトキとの出会いであった。トキはかつては日本全土で見られた鳥だが、乱獲と農薬使用、生息地の環境破壊などにより、2003年に日本産トキは絶滅してしまった。中国から1999年に贈られたトキの人工繁殖に成功し、2008年以降、毎年放鳥を続け、放鳥されたトキの自然繁殖も含めて現在、佐渡には約480羽のトキが自然のなかで生活をしており、佐渡の人たちにとってトキは普通に周りにいる当たり前の鳥となっている。
餌を探すトキ
トキは棲んでいる地域はほぼ決まっており、大佐渡と小佐渡の中間平野部と周りの山間部が生活地帯である。平野部にトキの餌となる小魚・昆虫・甲殻類・爬虫類などが田んぼの周りに多く生息しているからである。そのトキに会うためにトキロードと呼ばれている農道を走っていると、餌を探しているトキに次々に出会ったのである。最初の2羽は道路の左側に300mほど離れており、600mmの望遠レンズでも距離が離れすぎており撮影は難しかった。次の3羽もやはり200mほど離れて田んぼで餌を探していた。
餌を探すトキ
近くにはいないのかと思っていると、右側の田んぼに7羽がいた。距離は100mほど離れていたが、望遠レンズで撮影できる距離だった。田んぼで餌を探しているトキが次々に目に留まるようになった。農道に「トキロード」と名付けられた意味が分かった。4羽、2羽、2羽と次つぎに出会えたのである。トキは田んぼで餌を探しているのが多かったが、飛び立つ姿や大空を舞う姿も見られた。トキが空を舞っている時は、翼の内側と尾羽がいわゆるトキ色といわれている朱色になっており、美しい姿を目にすることが出来た。トキ色は春の子育て期には見られないが、晩秋の今の時期に見られる色である。
舞い降りたトキ
自然環境に棲んでいるトキを観察する際に4つのルールが『トキの森公園』から提案されている。@トキを驚かせないように、車から降りずに双眼鏡などで遠くから静かに見守る。Aトキに餌付けをしない。B繁殖期間はトキの巣に近づかない。C地域に迷惑をかけないように、無断で私有地や農道に立ち入らない。駐車する場合は通行の妨げにならないようにする。等の4つのルールを観察者は守り、トキの放鳥を通じて人と自然との関係を作り出している地域の人たち、特に農家の方たちに守られながら共生しているトキを温かく見守っていくことが、部外者としての観察者が守るマナーだと思う。
大空を舞うトキ
今回の山旅は原生林の中に残っていた大杉に出会うこと、佐渡の最高峰である金北山の紅葉時の縦走トレッキング、更には紅葉山の錦繍に色づく景色を求めてのもので、トキに出会うのは付録であったが、バードウオッチングを趣味とする私としては、是非ともトキ色と言われている明るい朱色の翼を広げながら空を舞う姿が見たいと思っていた。そのため重い望遠レンズも持参したのだが、実際に野生で生活するトキの姿を眼にし、トキ色を見せながら舞う姿を見ることができ、実に満足の山旅だったのである。