五体投地
タシュルンポ寺前広場での五体投地
ギャンツェからオールド・ティンリーに向かう途中にラサに次ぐ第2の都市であるシガツェで警察の手続きがありました。手続きが終わるまでタシュルンポ寺前の広場で休憩になりました。手続きに2時間近くかかったのですが、その間に広場を見ていると、たくさんの人たちがタシュルンポ寺に向かって「五体投地」を行っていました。
膝当ては3重、腹当ては2重、両手には雑巾のような布を当て、左指に数珠を絡め、合掌した手を頭上、顔前、顎にあてたあと、お経を唱えながら前方に身体を投げ出す五体投地という行為をひたすら続けていました。膝下を紐で結わえている人も見かけました。
ガイドのドルジさんに五体投地について聞いたところ、死ぬまでに10万回行うことになっており、ラサから聖山であるカイラスを巡礼となって往復すると3年から4年かかるとのことでした。その期間は仕事が出来ませんから無収入になるわけで、相当な覚悟が必要だと感じました。チベットでは現実に心の拠り所として仏教が浸透しているということを思わざるを得ませんでした。ドルジさんは大学を卒業しても仕事がなく、ガイドに就職するまでの5年間で40万回の五体投地を行った、と言ってました。
ラサ旧市街はジョカン寺を中心に広がりバルコル(八廓街)と呼ばれる繁華街を形成していますが、ジョカン寺をぐるりと時計回りに回る人の流れが出来ており、歩きながら祈っているのだと思いました。その人たちの流れの中に五体投地で回っている女性がいました。チベットの人たちは死後の世界の輪廻転生を信じており、再び生まれ変わる時は人間界に生まれるようにと硬い石の上に自らの肉体を放り投げる行為と祈りを繰り返すとのことです。私は無宗教で信心深くはないので、道路は石畳ですから痛いだろうなぁと思いました。
ラサ旧市街で五体投地を続ける女性
また、私たちは2台の専用車で移動していましたが、2号車のドライバーはチベット仏教に信心深い方で、運転中は常にお経を唱えながら左手に絡ませた長い数珠の珠を一つひとつ数えながら、時たま声を高くお経を唱える方でした。常に片手運転でした。