左手のピアニスト

 

   

ピアニスト:舘野泉       ヴァイオリニスト:ヤンネ舘野

 

 9月30日の毎日新聞夕刊の『人生は夕方から楽しくなる』というコラム記事に左手のピアニストが紹介された。その人の名は舘野泉さん(74歳)。音楽家の両親の下に育ち、東京芸大を主席で卒業し、世界各地での演奏活動に入りフィンランドに居を構えて50年。人気も名声も確立していた2002年、フィンランド第2の都市タンペレでのリサイタル中に舞台で倒れ右側半身不随に。再起不能が伝えられたが、その後のリハビリ中にヴァイオリニストで長男のヤンネさんが左手だけでピアノ演奏ができる楽譜を紹介。倒れてから2年後の2004年に復帰リサイタルを実施。今では全国各地で親子デュオ・リサイタルを開いている。

 

 今回の「ヤンネ舘野&舘野泉 デュオ・リサイタル 新たなる大樹 201112」の全国公演日程は12月の東京公演でスタートし、2月の福岡・大阪・札幌と4回。私は普段クラシックコンサートなど無縁なのだが、今回は夕刊のコラムを読んですぐにインターネット検索しコンサートチケットを4枚予約した。

 

 12月11日、快晴の日に上野の東京文化会館小ホールに妻とともに出かけた。一緒にコンサートを聴くのは妻の友達夫婦。650人を超える収容人数は満員の盛況だった。プログラムは前半・後半の2部構成で、それぞれが二つに分かれていた。

 

第1部 石田一郎:ヴァイオリン・ソナタ 第2番

    平野一郎:精霊の海 〜小泉八雲の夢に拠る〜

第2部 谷川賢作:スケッチ・オブ・ジャズ 2

    エーリヒ・ヴォルフガング・コルンゴルト:

2つのヴァイオリン、チェロ、左手ピアノのための組曲 作品23

 

私たちの席は舞台から2列目のB列12〜15だった。客席と舞台は近く、私たちの目前で演奏者の一挙手一挙手が手に取るように分かった。演奏された曲はオリジナルで全く聴いたことのない曲ばかりである。左手のピアノ演奏のため、どうしても低音部の多い曲となり最初は聴き慣れないため戸惑う。気持ちが曲に入り込んで聴けるようになったのは第2部の「スケッチ・オブ・ジャズ 2」に入ってからであった。目をつぶって演奏曲を聴いていると身体が揺れるように曲に入っていくのが自分でもわかった。

 

驚いたのは第1部と第2部の休憩時間が終了間近になった時であった。後ろの方で拍手がするので振り向いたところ、美智子皇后陛下が静静と入場してきたのである。護衛している人もいないような感じでごく普通に入ってきた。違和感は全くなく実に自然の流れだった。演奏終了後の退場時もそうだった。軽く会釈をしてホール出入口に向かった。私は「美智子さん、お元気で」と声をかけて手を振ると、10m先の美智子皇后陛下は一瞬立ち止まり私の方を振り向き、手を振りながら退場された。実に気品のある態度だった。

 

コンサート・プログラム

 

クラッシックコンサートを聴いたのは久しぶりである。たまにはいいものだと思った。東京文化会館の入口で大量のコンサートチラシをもらった。今回の入場料は5千円であったが、チラシに書かれていた入場料も4千円〜5千円というものが大半である。コンサートの演奏時間は大体2時間だが、静かに音楽を聴く時間を持つことも人生のとっては大切なことだと思われる。

 

戻る