おとうさんは時代劇が好きです。
スカイパーフェクトTVで『鬼平犯科帳』を
繰り返し見ています。
『たそがれ清兵衛』は封切日に観に行きました。
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家族愛
映画『たそがれ清兵衛』から
私はテレビや映画で時代劇をよくみます。愛読書は山本周五郎であり池波正太郎であり藤沢周平です。
山田洋次監督が藤沢周平の原作から『たそがれ清兵衛』という映画を製作するというので、どのような映画になるのか楽しみでした。封切になった土曜日に早速映画館に足を運び第1回目の上映を観ました。観客は年配の方が殆どでした。
第1印象は、今までの映画と異なり光りに神経を使った映画だと思いました。
真田広之演じる主人公の妻の葬儀シーンからのスタートにギョとしました。スクリーンに映し出される暗い室内は現代のような明るい照明器具のない当時にあっては当たり前のことですが、このことをリアルに追求する映像はあまり見かけません。黒澤明監督が追求した光りだと思いました。
つぎはぎだらけの穴のあいた足袋。
粗末な服装と内職せざるをえない下級武士としての慎ましい生活。
妻が亡くなったゆえに幼い子どもの世話をするためにすぐに帰宅する主人公。
好きな幼なじみを自らの生活の貧しさから夫婦になってくれと言えない主人公。
剣士として突出した技量を持ちながらも下級武士の出自ゆえに出世できない主人公。
藩の面目を保つために主人公の剣の腕に頼らざるをえず上意というかたちの刺殺命令。
幼い子どもに心を残しながらも死地におもむかざるをえない主人公。
その出立に際して想いを打ち明けた幼なじみは既に祝言が決まったあと。
さまざまな思いを引きずりながら決戦に赴く主人公。
室内で実にリアルに凄まじい斬りあいが展開する。
一瞬たりとも息が抜けない。
私は居合道を昨年から始めたが日本刀は凄まじく斬れる。
恐ろしいほどの斬れ味である。
その日本刀が薄明かりの室内で鈍く光りを放ち、突かれ斬り下ろされ払われる。
荒い息づかいが迫ってくる。
主人公は上意打ちの立場であるが相手を逃がそうとする。
しかし希望を見出せない相手は逃げずに戦いを望み死ぬ。
疲労困憊ながら家に戻ってきた主人公の前に子どもたちと一緒に祝言を反故にした幼なじみが待っていた。
予期せぬ終幕に涙が湧きあがってくるのを押さえ切れなかった。
作家・浅田次郎の作品に『壬生義士伝』がある。
東北地方・南部藩を生活苦から脱藩し新撰組に身を投じた家族思いの下級武士の物語である。
昨年、渡辺謙主演でテレビドラマ化され、今年は中井貴一主演で映画化された。
私は原作を読みテレビも映画も観たが、幕藩体制を支えた身分制度の非人間性とそれに対して葛藤する人間が描かれていた。その中心におかれているのが人間への愛、特に妻や子どもにたいしての家族愛であった。
『たそがれ清兵衛』と『壬生義士伝』は流れているテーマが同じであると思う。
素晴らしい生き方だと思う。