田部井淳子さん
ロンボク寺の丘からチョモランマ峰に向かって黙禱を捧げた
10月22日、私たちがチョモランマベースキャンプ地からロンボクのロッジに帰り、夕食を摂っていた時に大阪から来たかたの携帯電話に田部井淳子さんの訃報が届きました。
田部井さんは女性初のエベレスト登頂者として有名で、世界の7大陸最高峰を制覇した世界初の女性登山家でした。登山関係の著書も多くテレビ出演や講演会も積極的に行っていました。
私は昨年、東京神田の学士会館で西遊旅行社主催による「田部井淳子、エベレスト登頂40周年記念講演会」が開かれましたので参加しました。司会進行は堤さんでした。登頂当時の写真や登山道具が展示されている会場は満席の盛況で、講演内容も面白く時間が足りないほどの盛り上がりでした。そこでは元気いっぱいの田部井さんに会えました。参加者には特別作成のカレンダーがプレゼントされたのが昨日のように思い出されます。
田部井さんは癌治療を続けながらも外国の山や日本の山に登り続けていることが知られていましたが、東日本大震災後からは被災地の人たちを励まそうとして続けているハイキングや富士登山のなかで、今年の夏にテレビ放映された高校生たちとの富士登山では随分体力が落ちていることが分かりましたが、突然の訃報でしたので、みんな一様に“え?!”という感じでした。
翌朝、チョモランマ山頂が微かに黄色味を帯び朝日が差しだした8時10分、私はロッジ横のロンボク寺の丘に登り、一人山頂に向かって黙祷を捧げました。田部井さんは癌患者であることを隠さず、周囲の人たちには常に元気に語りかけ、暖かく接していた人のように感じました。ご冥福をお祈りいたします。