映画『シンデレラマン』を観て
夫婦愛、家族の信頼、家族を守るために戦う父親
ジミーと3人の子どもたち
1930年代の世界恐慌時代に家族のために生き「シンデレラマン」という愛称で全米の希望の星と輝いた稀有のボクシング・ヘビー級チャンピオンの実話の映画化である。
ボクシングのヘビー級チャンピオンを目指していたジミーは右コブシを骨折する。それでも家族の生活のために戦い続けるが生活状況は世界恐慌という経済状況の下でますます悪化する。地方での試合数も少なく日雇い労働者として働くが、時には仕事にあぶれ日銭を稼ぐことが出来ず電気も止められ家族解体の危機に直面する。
食べるものもなく腹をすかせた子どもが肉屋からソーセージを盗んだことに、人間としてやっていいことと悪いことを懇々と話し子どもとともに肉屋に謝りに行くジミー。そしてどのような生活になろうとも家族はバラバラにならないと子どもに約束をする。
生活状態はどん底に落ち込み、「家族はばらばらにならない」という子どもとの約束を守るために生活救済局に僅かな給付金を貰いに行く。足りない部分をかつて栄光に輝いていたボクシング当時の人々が集うサロンに行き、恥を忍んで生活苦への援助を申し込む。そこで得たお金により生活を食いつなぎ、ひょんなことから最後のチャンスとしての試合が訪れる。
これが最後と思ってあがったリングは、それまでの肉体労働で鍛えられた筋肉が功を奏してKO勝ちとなる。試合は次々にプロモートされる。それらの試合を全て勝ち抜き、1930年代不況のアメリカ庶民の星「シンデレラマン」と称えられるようになり、やがてヘビー級タイトルマッチに挑戦する事態になる。
十分にトレーニングを積んでも妻は夫の身体を心配し試合を棄権するよう要求する。しかし、ジミーは妻、子どもたちのことを思い悩みながら生きて帰れないかもしれない試合に臨んでいく。結果15ラウンドを戦い抜き、新ヘビー級チャンピオンに輝く。まるでおとぎ話、夢のような話であるがアメリカであった実話である。
映画を見ていて数々のボクシング場面も思わず両足に力が入ったが、私が感動したのは夫・ジミーと妻・メイとの信頼関係であり、父親・ジミーと3人の子どもたちとの信頼関係であった。5人家族の強い絆が映画の場面のいくつかのエピソードの中に描かれている。父親として家族を守るために戦わなくてはならない、あるいはボクシングを職業として選んだ生き方として戦いの場に出て行かなくてはならない、そのような人生観・生き方に感動したのである。
わが身を振り返った場合はどうだろうか?
映画で描かれた時代背景も生活状況もまるで違い比べるものとてないが、ひとついえることは夫として或いは父親として妻のため、子どものため、家族のために過去何をしてきたのか、現在何をしているのか、これから何をなしえるのか、また自分個人として過去どのような生き方をしてきたのか、現在どう生きているのか、これからどう生きていこうとしているのか、を考えさせる映画だと思った。自省を含めて久しぶりにいい映画を観たという感じだ。