5年ぶりにシメに会えた

 

5年ぶりに出会ったシメのメス

 

12月6日 金曜日 晴れ

夏目漱石の短編小説に『文鳥』という作品がある。漱石の実体験を小説にしたものだと想われるが、ストーリーは弟子に勧められて文鳥を飼いだし、最初は興味があり世話をしていたが、仕事の忙しさから家人に世話を任せているなかで、文鳥を死なせてしまったというものだが、今回5年ぶりに出会った冬鳥のシメは文鳥と同じスズメ目に分類されており、くちばしの形などはそっくりである。私が子どものころにシメを捕まえて飼ったことがあったが、小説と同じ原因で死なせてしまった苦い経験がある。死因は餌にしていた粟の補給が遅れたのである。

 

水を飲みに来たシメのメス

 

飼い鳥は粟を食べる時にくちばしで器用に殻をむき、なかの実だけを食べて殻は吐き出したのが餌箱に溜まり、外見からは餌が十分にあるように見えるが、実は殻だけということが多々あるのだ。そのために毎朝餌の確認が必要なのだが、それを怠ったのが小説内で文鳥を死なせる原因となり、私も同じ失敗をしたのだった。今回のバードウォッチングで久しぶりにシメに出会ったので、その失敗を思い出したのである。

 

亥鼻橋から眺めた花見川

 

久しぶりに花見川沿いを花島公園までバードウォッチングに出かけた。今日出会いたい野鳥はジョウビタキとルリビタキである。ともに北の地域から渡ってくる冬鳥である。バードウォッチングには2つの方法がある。1つ目は移動しながら出会った野鳥を観察・撮影する方法であり、2つ目は池や川などで観察・撮影ポイントを1カ所にしぼり、やってくる野鳥を待ちながら観察・撮影する方法である。今回は1つ目と2つ目を合わせた方法をとった。目的地まで歩きながら出会う野鳥の観察・撮影をし、目的地に着くと腰を据えて、やってくる野鳥の観察と撮影である。よく出かける船橋三番瀬の場合は、電車で目的地まで移動し、1カ所に滞在する2つ目の方法である。

 

モズのオスが縄張り宣言の高鳴きをしていた

 

モズのオスの縄張り宣言である高鳴きが聞こえていた。しばらく声の聞こえる方を見ていると、枝がからまった木のなかに姿が確認できた。木の枝が邪魔してうまくモズの姿にピントを合わせることができなかったが、しばらく観察を続けているとテレビアンテナの上に舞い上がった。あいにく逆光だったが、どうにか写真を撮った。オスのモズは春先まで縄張りを守り、やがて相性のあったメスとつがいとなり子育てをするのである。

 

獲物を探すイソヒヨドリのメス

 

モズがアンテナの上で高鳴きをしていた隣の家のひさしに、イソヒヨドリのメスが顔を出した。これも逆光である。イソヒヨドリはしばらく下を覗いており、餌でも見つけたのだろうか地上に舞い降り、私の前から姿を消した。

 

オオバンの姿も多く見られた

 

16羽のオオバンの群れが地上に上がって草をついばんでいた。オオバンも北の地域から渡ってきた冬鳥である。冬鳥たちは羽を休めながら体力を整え、来春に北に帰って子育てをするのだ。淡水カモ類のオオバンの数が増えたように感じる。

 

カラスウリの実は野鳥に食べられることなく冬を越す

 

コウテイダリアのピンクの花の咲く隣に、朱色に熟したカラスウリが見えた。カラスウリの実は野鳥に食べられることなく冬を越したまま枯れてしまう。野鳥に食べられることにより、硬い実は消化されることなく遠くまで運ばれ、糞とともに放出された実は、やがて芽を出すのである。野鳥に食べられない実は侘しいものである。

 

冬に咲くアサガオ

 

花見川の土手にアサガオの薄紫やピンクの花がたくさん咲いている。アサガオは夏の花なのだが、冬になっても一向に衰えることなく咲いている。季節感を感じさせない花たちである。昔から見てきた夏に咲くアサガオとは違い、輸入された種が野生化して川原の土手などに勢力を伸ばしていると想われる。花見川の土手では1年中アサガオの花が見られるのである。

 

セイタカアワダチソウの綿毛が小雪のように舞っていた

 

セイタカアワダチソウが耕作放棄地に勢力を伸ばしている。花穂から無数の種が風に舞っている。まるで小雪が降っているような感じだ。このように大量な実が風で飛ばされることにより、セイタカアワダチソウは勢力を広げている。さすが特定外来植物である。

 

色づいたカエデ

 

花島公園までの途中にある神場公園に寄ってみることにした。カエデの葉が赤や朱色に色づき、太陽の光を受けてまばゆいほどに輝いていた。葉が散った上を歩くとサクサクという心地よい音が耳に届いた。池にもたくさんの落ち葉が浮いていた。その池の水を飲みに来る野鳥を30分間待つことにした。池は日陰で暗がりになっているのでカメラのISOを4000に上げ、シャッタースピードは800/秒に落とした。待機してから25分が経過し、野鳥がやってきそうもないので花島公園に向かおうと準備を始めた時にヤマガラが現れた。木の枝でちょこまか動いて落ち着きがなかった。

 

シメのメスが現れた

 

2番目に現れたのはシメのメスである。シメは冬鳥として渡って来た鳥である。シメのオスは歌舞伎役者のように目の周りに隈取りをしているが、メスは目の周りの隈取りがない。分厚いくちばしは硬い木の実を砕くことができる。シメに出会えたのは5年ぶりである。あまり会うことがない野鳥なので、シメの数が減っているものと想われる。

 

シロハラも姿を現した

 

3番目に登場したのは黄色のアイリングを持つシロハラである。同じ仲間で胸から脇にかけて朱色をしているのはアカハラである。シロハラも冬になると登場する鳥である。シロハラは落ち葉を跳ねのけて、その下に潜んでいる虫を探しているようだった。ミミズを見つけて得意顔をしたのを見た。

 

キジバトも姿を現した

 

4番目に現れたのはキジバトだった。キジバトも落ち葉をくちばしで跳ねのけながら葉の下に落ちている実や虫を探していた。キジバトは冬の間は家族単位で動いているようで4羽のグループだった。

 

叫び声をあげるヒヨドリ

 

次々に野鳥がやってきたのだが、5番目に現れたのは暴れん坊のヒヨドリだった。2羽でやってきてかわりばんこに水を飲んでいた。飲んでいる時も騒がしい鳴き声を上げながら自己主張をするのがヒヨドリの面白いところである。

 

サザンカが咲いていた

 

結局、待機を始めて25分が過ぎたころから次々に野鳥が現れたために、神場公園には40分滞在して5種類の野鳥に出会うことができた。花島公園に着いたのは14時を過ぎていた。いちばん奥の水場のある野鳥観察場所に行ってみると、バードウォッチャーは誰もいなかった。2カ所のポイントを確認すると、1カ所目はアワとピーナッツが寄せ餌として岩の上に撒かれていた。2カ所目はワーム(虫)が4、5匹岩の上に置かれ、岩陰に半分に切ったミカンが置かれていた。これらは野鳥をおびき寄せるために、午前中にいたバードウォッチャーが置いたものだろう。1時間30分待ったけれども野鳥は1羽も現れなかった。

 

悠然と泳ぐカンムリカイツブリ

 

今日出会った野鳥は、ハシブトガラス、スズメ、ハシボソガラス、カワウ、オオバン、ヒヨドリ、カンムリカイツブリ、ホシハジロ、モズ、イソヒヨドリ、アオサギ、コガモ、キセキレイ、ヤマガラ、シメ、シロハラ、キジバト、コサギ、ドバト、シジュウカラの20種類で冬鳥は6種類だった。目的としたジョウビタキにもルリビタキにも会えなかったが、5年ぶりにシメに出会えたので満足だった。

 

戻る