一所懸命な『翔龍祭』

 

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1年生全員合唱「夢の世界を」

 

 幕張中学校の文化祭である『翔龍祭』が千葉県文化会館で開催されたので群馬から幕張に来ていた私のお袋と一緒に出かけた。以前は中学校の体育館で開催されていたのだが、昨年度から千葉県随一の音響設備が備えられている文化会館大ホールを会場にしての開催となっていた。私の二人の子どもはすでに成人しているので保護者の立場ではないが、幕張中学校の評議委員をしているため合唱コンクールや授業参観のお知らせという連絡が届くので、私のスケジュールを調整して子ども達の活動や校内の生活状況を見に出かけているのである。

 

 『翔龍祭』のプログラムは、文化発表の部として吹奏楽部演奏、英語スピーチ、合唱コンクールとして各学年発表となっており、9時半から15時までの時間帯だった。文化会館大ホールの収容人員は1800人である。1階観客席の前部を生徒達がクラスごとに分かれて約400名が着席し、観客席後部と2階、3階は保護者席に指定され、当日の保護者は約100名が着席していた。授業参観日は土曜日に開催されるが、合唱コンクールは今年も108日水曜日の平日に開催されたため観客が少ないのが残念なところだ。

 

 『翔龍祭』は事前に実行委員会で討議され、クラスごとの合唱のイメージを絵の上手な生徒によって絵画化されてプログラムに挟み込まれていた。運営は司会進行から全て生徒自身が行い先生達はカメラマンに徹していた。開会式の開会宣言、生徒会会長挨拶、諸注意などを話した4人は全て女生徒だった。女子生徒が完全にリーダーシップをとっており優秀さということでは女性はどこでも元気だ。この元気な女性達が、高校・大学を卒業して社会に出ていくと、日本社会の古くからの体質から充分に女性の自己能力を発揮することなく埋もれて行ってしまうことは社会的に見て凄い損失だと思う。

 

翔龍祭201410-

翔龍祭プログラム表紙

 

 文化発表の部での約30名の吹奏楽部の演奏は『ルパン3世』と『恋するフォーチュン』。演奏途中から観客席の生徒達から合いの手の拍手が自然と沸き上がっていく。途中で男子生徒8名が舞台に登場し踊りだした。踊りだすのはいいのだが、照れながら踊っているのが見え見えだったので、若いのだしもっと思いっきり弾けて踊ったほうがすっきりいくだろうと思った。

 

 合唱コンクールの部に移ると各クラス代表がコーラスの前に自分達の練習過程や曲への想いを語る。

・朝の授業前の時間を使って詩の中味を考えながら歌ってきた。今日は最優秀賞を取りに行く。

・最初は音とりが難しかったが各パートのハーモニーを聴いてほしい。

・難しかったけれど、だんだん上手くなってきてみんなが協力できる体制になってきた。

・最初は口を開けていない。指揮者を見ていない。声量が足りない。状態だったけれど、自分の殻を脱ぎ捨てたら全員が全力で歌えるようになった。

・明るく団結があるクラスで全力を上げて最優秀賞を取りに行きます。

・強弱をつけるのが難しかった。オーストラリアにいる先生に届くようクラス一体となって頑張ります。

などなど・・・

 

 生徒達が発表会に合わせて授業が始まる前や昼休み、あるいは放課後の時間を調整しながら一所懸命に練習してきた成果を思いっきり出そうとしている姿勢が強く伝わってきた。生徒達が選んで歌った曲は午前中の1年・2年生の部では、「夢の世界を」「心の瞳」「怪獣のバラード」「大切なもの」「COSMOS」「HEIWAの鐘」「春に」「君とみた海」「手紙〜拝啓十五の君へ〜」「時の旅人」となっており、私が聞いたことのあった曲は「手紙〜拝啓十五の君へ〜」の1曲だけで、他の曲は初めて聞くものばかりだった。生徒達は自分達の歌う曲をよく探してくるものだと思った。午前中の最後に登場したのは発達遅滞児といわれている4人の生徒と先生による「となりのトトロの中のさんぽ」のハンドベル演奏だった。1人の生徒がエレクトーンを弾き、残りの3人の生徒と先生がハンドベルの演奏をした。生徒も先生も保護者も耳を澄ませて演奏に聴き入った。そして演奏が終わるとこの日一番の拍手が沸き上がった。一所懸命さが直に伝わってくる演奏だった。

 

私は学校評議員会等へ出席したおりなどに発達遅滞児の教室を訪れて授業風景を見る機会があるが、ぬり絵やスタンプを押して葉書を作っている真剣な姿に、障害を持っている子どもはそれなりに自分の出来ることを一所懸命にやっている感じを受ける。地域から離れて遠くの養護学校に通うのではなく、近くの地域の学校に健常者といわれている子どもとともに通い、一緒に学校生活を過ごし文化祭などの行事にも当たり前のこととして一緒に参加していくことにより、お互いの理解も深まっていくことが出来ると思う。それがハンドベル演奏終了と同時に沸き上がっていった拍手だったと思う。

 

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吹奏楽部の演奏

 

 私は午後には予定が入っていたので午前中の部のみの鑑賞だったが舞台に登場してくる生徒はみんな一所懸命だった。私は一つの目標に向かって行動を起こしていく過程でクラスがまとまっていく状況を想像しながら聴いていた。観客の保護者達がもうすこし増えると生徒たちのモチベーションももっと上がるのではないかと思った。

 

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