散歩11:迎賓館から絵画館へ
迎賓館の正面門扉
11月に出かけるネパール山旅の最終説明会が15時から神田神保町の西遊旅行社で開かれるので、幕張の自宅を早めに出て四ッ谷から千駄ヶ谷周辺の散歩をしてから説明会に向かう予定を立てた。
JR四ツ谷駅で下車し300mの距離にある迎賓館赤坂離宮に向かった。手元のパンフレットによると迎賓館は、東宮御所として1909年(明治42年)に建てられた日本唯一のネオ・バロック様式の西洋風宮殿建築で、戦後は国会図書館、裁判官弾劾裁判所、あるいはオリンピック東京大会組織委員会などにも使用され、現在は迎賓館として世界各国の国王、大統領、首相などの賓客を迎えるための施設で、2009年(平成21年)に明治以降建てられた建造物として初めて国宝に指定された、と記されている。
正面門扉は固く閉ざされていたが、11月1日〜3日の3日間に限り建物の中には入れないが、中庭は一般市民に開放され自由に入れる、という内容のポスターとチラシが掲げられていた。門から中を覗くと中庭の松や芝生は綺麗に整備され、奥に堂々たる左右対称の2階建の建築物が建っていた。道を挟んで学習院初等科があるため、たえず子どもたちの賑やかな歓声が聞こえて来ていた。
迎賓館から安鎮坂を通り神宮外苑のイチョウ並木に向かうと、急にパトカーや警察官の姿が目につくようになってきたので、なんだろうと考えながら歩いていた。手元の地図を再確認すると、迎賓館が立てられている敷地は、天皇家の親族が生活する東宮御所、秋篠宮邸、寛仁親王邸、三笠宮邸、高円宮邸、などが多数建っていることが判明した。天皇家警備のための警察官配備だったのである。
権田原交差点まで歩いてきて左折すると御観兵榎の看板とともに森が現れた。説明板によると青山練兵所の跡地で明治天皇の観兵式が度々行われた場所で、特に明治23年の憲法発布観兵式や明治39年の日露戦役凱旋観兵式などが盛大に執り行われたという。榎の大木があった近くに御座所が設けられたため「御観兵榎」と呼ばれていたが、榎は1995年9月の台風により倒木したとのこと。現在は樹齢約60年の2代目御観兵榎が葉を拡げている。森の中にはベンチが置かれ桜の大木もあり、春の花が咲くころは花見にもいいのではないかと思われた。
聖徳記念絵画館の上に浮かぶ飛行船
イチョウ並木にやってきて絵画館方面を見ると、丁度絵画館の真上に白い飛行船がゆったり浮かんでいるのが見えた。飛行船は東側から飛んできて西側に飛び去って行ったが、実にのんびりした風景であった。真黄色に染まったイチョウ並木は晩秋の神宮外苑の名物となっているが、地球温暖化の影響だろうと言われているように現在は12月にならないと黄葉に染まらないという。まだ緑濃いイチョウの葉であった。近くの喫茶店でビールを飲んだあと、真黄色に染まった4筋のイチョウ並木を妻と歩いたのを思い出した。
絵画館の前を通って国立競技場跡地に出た。1964年東京オリンピックのメイン会場として建設された旧国立競技場は、次期2020年の東京オリンピックのメイン会場としては建て直しのため早々と解体されてしまったが、採用された設計デザインでは建設費が膨大に膨らんだため、すったもんだの挙句に白紙撤回となったのは周知の事実である。旧国立競技場は隣に秩父宮ラグビー場があるのだが、大学選手権決勝や日本選手権などはラグビー会場として使われたため、毎年足を運んだ思い出の競技場であった。新日鉄釜石や神戸製鉄の熱い戦いと7連覇などを観た場所でもあった。現在は建築用の高塀に囲まれ、クレーンやユンボが動いているのが塀越しに見える程度である。
JR四ツ谷駅から歩き出し、青山1丁目を回ってJR千駄ヶ谷駅までの約3時間の散歩は、のんびり歩くことができた。絵画館前では白、紫、ピンクなどのコスモスの花が風に揺れていたし、ヤクルトスワローズの練習場では当日のナイターで日本選手権出場をかけてジャイアンツと戦うための準備が見受けられたのであった。