散歩8、植村さんが作陶をしていたとは驚きだ

 

 

明治大学記念館に展示してある植村直己さんの自作陶器と色紙

 

 1024日、台風27号の影響により幕張でも小雨の降りしきる日だった。先週、日本列島を舐めるように太平洋岸を北上した台風26号は、伊豆大島で発生した地滑りにより死者31名・行方不明者13名という甚大な被害を及ぼし、今も捜索活動が続く中で今週末にも27号・28号とダブル台風がやってくるのだ。そのような中を、私は来月出かけるネパール山旅の最終説明会が神田神保町の旅行会社で開かれるので早めに家を出て御茶ノ水界隈を散歩してみた。

 

 御茶ノ水はNTT勤務当時に働いていた大手町や竹橋から近かったのでよく出かけた場所だ。JR御茶ノ水駅の聖橋改札口を出てニコライ堂に向かった。緑の丸屋根のニコライ堂は何度も見たものだが教会の門扉が開いていたので初めて中庭に入った。私が門を入って行くとカメラを持った中年の男性と門扉の説明文を読んでいた女性も中庭に入ってきた。ニコライ堂の正式名は『東京復活大聖堂』というらしい。1884(明治17)3月に起工し1891(明治24)2月に完成したという。7年の歳月をもって完成した日本最大のビザンチン式建造物であり文部科学省の重要文化財に指定され、日本ハリストス正教会教団が管理しているという。

 

 門扉に貼られていた「ニコライ堂はロシア正教なんですか?」という質問に対し、ロシア正教と信仰している内容は全く同じで、各国一組織を作るのが原則のため日本正教会が作られ、全国に約60ヶ所の正教会の教会があるといい、日本正教会は母教会であるロシア正教会から自治正教会と認められニコライ堂は日本の中心になる教会だという。また、八端十字架の説明文も貼られていた。私は「八端十字架」というのを初めて見た。普通よく目にする十字架はクロスだから四端だが、八端十字架は横棒が2本追加されて八端になっている。ロシアだけでなくウクライナ、ベラルーシ、ブルガリア、セルビアなどのスラブ系教会でよく使われているという。教会の建物正面入口のキリストが描かれた壁画前に八端十字架が建てられていた。私は無宗教なのでこのような説明文を読むと、ふむふむ、なるほど、と教えられることが多い。

 

東京復活大聖堂(通称ニコライ堂)

 

 ニコライ堂を出て駿河台下に向かった。右側に新しく建て直された明治大学の建物が見えてくる。明治大学は以前、無線従事者免許の二技、一技の国家試験の会場に指定されたため訪れたことがあり、考古学の様々な遺物(旧石器、新石器、縄文式土器、弥生式土器、古墳出土品、等々)の展示を見るために大学博物館を訪れたこともあった。もう25年も前のことである。駿河台キャンパスにはたくさんの建物が建っているが一番手前のアカデミーコモン棟の地下1階2階が大学博物館になっていた。

 

 地下1階にフランス留学で法律を学んだ岸本辰雄、宮城浩蔵、矢代操の3人の若き法曹人によって「明治法律学校」が設立され、私学が故の苦闘時代と関東大震災における被害と再建、第2次世界大戦の敗戦からの復興、などを主として現在までの大学沿革、女子教育の変遷、有名な卒業生として作曲家の古賀政男の使用したギター、作詞家の阿久悠の詩、人間国宝となった陶芸家の松井康成、藤原雄の作品、そして冒険家の植村直己の色紙と作陶作品などが展示され、大学設立100周年記念映画や記念講堂の建設・解体の映画が放映されていた。私が特に興味を持ったのは植村直己の作陶作品である。徳利とぐい呑が展示されていたが、ぐい呑は誰でもできる作品だが轆轤を使った徳利は難しい。それが見事な作品となっていたのでびっくりしたのである。私は陶芸教室に通いだして2年半になるが、その過程で徳利を10本ほど作陶したが徳利の首を立ち上げるところと注ぎ口の形成が難しいのだ。植村さんの忙しい時間の中で如何にして轆轤による作陶技術を学んだのか、展示されている徳利とぐい呑の作陶技術があまりにも違っているのでなおさら不思議な感覚だった。

 

地下2階に「商品博物館」「刑事博物館」「考古学博物館」を一堂に会した博物館がある。私は考古学部門を主として見たが、日本で唯一の刑事刑罰部門は初めて見た。かつて使われた様々な刑罰道具が展示されていた。絞首刑台、明治初期の磔の写真や実物の刑台、首切りの鋸、西洋のギロチン台、鎧兜の中に罪人を閉じ込めての串刺し刑、等々、いやはやなんともである。

 

旅行会社の説明会開始の時間が近づいたので博物館を出て小雨の中を神保町交差点まで歩き、旅行会社の説明会場に入った。私が今回参加する『アンナプルナ内院トレッキング 二大ベースキャンプを訪ねて』の16日間のネパールトレッキングには12人の募集人員が満杯で、キャンセル待ちの人がいるという。参加者は東京7人、大阪2人、福岡3人がタイのバンコクで合流し、ネパールの首都カトマンズで飛行機を乗り換えポカラに着陸しトレッキングがスタートする。ネパールは10月から3月までが乾季なので素晴らしい青空の下でのマチャプチャレ6993mやアンナプルナT峰8091mを仰ぎ見ることができることを願っている。私の60歳から始まった海外の山旅は、ペルー、タンザニア、韓国、パキスタン、パキスタンと続き、今回のネパールが6回目となる。

 

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