雨の中、楽に走れた安中侍マラソン21km

 

雨の中のスタート地点

 

群馬県安中市で開催される『第34回 安政遠足侍マラソン』に今年も参加した。安政遠足は安政2年(1855年)、当時の安中藩主であった板倉勝明侯が5月から6月にかけ50歳以下の藩士96名を16回に分けて安中城門から中山道碓氷峠頂上に建つ熊野権現社までの七里余(29、17km)の徒歩競争をさせたのが始まりであり日本のマラソンの発祥といわれている。その記録が1955年(昭和30年)に峠の茶屋で発見され、領主の偉業を世に知らせようと「安政遠足保存会」が発足し復元したものである。コースは2つに分かれており、今年の峠コースへのエントリーは497名。関所・坂本宿コースは1329名。私は関所コースが新設された第17回大会から毎年参加しているので今回で18回目の参加となる。

 

天気予報によると、レース前日・5月10日(土曜日)は3月下旬並みの気温に下がり、朝から雨が降りだし翌日午前中までは雨とのことである。安中遠足マラソンを走り始めてから18回目になるが雨の予報は久しぶりである。 レース前日、幕張を午前8時に出発する頃からポツリポツリと落ち始めた雨は埼玉ではフロントガラスを叩く本降りとなり前橋に着く頃にも降り続いていた。

 

関越高速道の前橋インターで途中下車し、「全国都市緑化ぐんまフェア(群馬花博)」に立ち寄る。花博は47都道府県が毎年持ち回りで開催されている緑化フェアで今年は群馬県の番である。4月から6月にかけて群馬県下3会場で開催されており、前橋会場で昼食を食べながら休憩し食後に会場内をひとまわりした。咲いている花は外国産の花が多く感じられた。気温が下がり小雨も降り続いていたので小野上温泉の湯をトラックで運び込んだ足湯が冷え切った身体をポカポカさせてくれ、とても気持ちよかった。妻も娘も私も満足満足であった。

 妹の家で明朝の天候の回復と怪我もせずに走りきる健闘を願って夕食を兼ねた前夜祭を行う。夜の10時頃に解散し生家に戻り明朝小雨になってくれることを期待して床に就くが、強い雨音に目覚めたのは4時頃だった。床の中で耳に届く雨脚が早く持ち直してくれることを願いウトウトしながら6時に目覚めると心なしか雨の降り具合も弱くなっている。

坂本宿を走る


 マラソンがスタートする8時には持ち直して欲しいという希望的観測で鬘を被り袴姿の素浪人となりスタート地点の安中市民センターへ向かう。侍マラソンでの仮装姿は鬘を被ることにより1年に一度フサフサ髪の姿になる日でもある。しかし安中市民センターへ到着しても雨は降り止まず参加受付も外のテントではなく体育館の中で行われていた。体育館の中は受付と仮装姿への着替えでごったがえしていた。

 スタート10分前になり、差していた傘を応援者に渡しスタートラインに並ぶ頃、雨はだいぶ小雨になり始める。どうやら走れる見込みとなり、とりあえず10km先の松井田警察署まで走ることにする。その段階で雨が激しかった場合は以後の10kmは中止することを話し合ってスタートを切った。

 気温は3月下旬頃であり小雨も降っている状況なので体温が上がらずマラソンには適している環境である。10km=1時間を目安に淡々と走る。周りは相変わらず仮装ランナーで一杯である。参加者が知恵を絞ってコスチュームを考え、作り、着て走るのである。侍マラソンと銘を打っているので侍姿がメインではあるが何を仮装しても自由である。こういうユニークなマラソンがあってもいい。参加者は小雨の中のレースであるが冷たい雨をもろともせずに嬉々として走っていく。

 旧中仙道の安中原市杉並木は応援ギャラリーが毎年多数繰り出す場所であり、新聞各社やTV局各社が絵になる写真を撮ろうと待ち構えている場所でもある。そういう場所を走るときは満面の笑みを湛えながら顔を上げて走りぬく。応援してくれる人の声が快い。今年も一番応援者がいた場所である。

 10km=1時間で松井田警察署まで走っていったが天候は晴れないものの雨は上がる方向に移っているのでゴールまでの残り半分をそのまま走ることにする。足の痛みもなく快調である。このレースに向けて今回は10kmの練習を5回行った。その練習の成果が出ているのだろうと考えながら走った。

ゴールの「峠の湯」


 碓氷の関所を超え坂本宿を通過し「峠の湯」のゴールに到着したのはスタートを切ってから2時間9分35秒経っていた。順位は1329人のエントリー中の300番だった。昨年は苦しいレースだったが今年は息切れもせず足の痛みもなかった。途中15km辺りで左足の太もも後ろ側に引っ張るような感覚があったがトラブルもなく走りきることが出来た。まずはメデタシメデタシ。完走後の大きなボールいっぱいに盛られたキュウリの味噌つけ(モロキュウ)が美味い。

 走り終わったあとは、すぐに天然温泉「峠の湯」の露天風呂に飛び込む。晴れてはいないが周りの新緑を眺めながらゆったりと湯につかりレースを振り返る。今年は小雨模様の天候が幸いして体温が上がらなかったので楽なレースが出来た。1年ぶりの21kmだったが楽だったなぁ、というのが感想であった。

 湯上りは枝豆をツマミに生ビールである。一緒に走った甥の一騎も満足そうに喉を鳴らしている。来年も走ろうと話し合い家に帰って昼食を兼ねた飲み会が始まった。満足満足。

 

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